Pouch[ポーチ]

父娘の姿を描く映画『四十九日のレシピ』タナダユキ監督に直撃インタビュー!【最新シネマ批評】

2013年11月8日

_MG_1555
[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からオススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは永作博美主演の感動作『四十九日のレシピ』(11月9日公開)。亡くなった母親が残した「四十九日のレシピ」を通して人生を見つめ直す父娘の姿を描いた感動作です。この映画を演出したタナダユキ監督にお会いするチャンスを得まして、インタビューしてきましたよ。

夫との離婚を決意して家を出た百合子(永作博美)は父の良平(石橋蓮司)が一人で住む熱田家の実家に帰ります。妻が突然亡くなり、日々、ぼんやり暮らしていた良平ですが、ある日、見知らぬ若い女性イモ(二階堂ふみ)が押しかけてきます。彼女は亡くなった百合子の母が面倒を見ていた女性で「四十九日の大宴会をするために来た」と言います。とまどう百合子と良平ですが、あとからやってきた日系ブラジル人のハル(岡田将生)とイモとともに、百合子と良平は「四十九日の大宴会」に向かって動き出しますが……。

タナダ監督がこの原作を映画化するにあたって大切にしたことは、
「この映画は家族の物語ですが、辛いときに助けてくれるのは必ずしも家族じゃなくてもいいということ。その考えがあったから映画化できたのだと思います」

「長い人生のうち、一瞬しか関わらなかった人だけれど、お互いに影響を与え合うという映画にしたいと思いました。すれ違った人の何気ない一言に気持ちが楽になる……ということを経験したことがある人もいると思います、この映画で描いていることはそれに近い感じがします」とのこと。

確かにイモとハルは、百合子や良平と一生の友になるわけではありません。でも、妻を亡くして孤独に落ちていた良平、結婚生活がうまくいかずに傷ついた百合子は、イモとハルが率先して準備してくれる「四十九日の大宴会」をきっかけに、生きることに前向きになっていきます。

「あのまま父と娘だけでいたら、ずっとジトーっとしたまま、二人暮らししていたと思いますよ(笑)」とタナダ監督。確かに!

原作でイモとハルは「生まれかわりかもしれない」というファンタジーのような存在でしたが、映画では、百合子の母が世話していた人物として登場。それがとても効果的で、百合子や良平が他者との関わりで変化するという、この映画の重要なポイントをよりリアルに伝えているのではないかと思います。

タナダ監督は、2001年に『モル』で監督デビューして以来、テレビドラマの演出も手掛けるなど、幅広く活躍していますが、監督にはときどき「窮屈だな」と感じることがあります。それは「女性監督」という括りで語られることです。

「女性なので否定はしませんが、男性は個人名で語られるのに、なぜ女性だけ ”女性監督“ と括られるのかなと(笑)。不思議なんです。みなさん女性監督になろうとしているのではなく、普通に映画監督になろうと思ってこの世界に入ってきていると思うので」
女性監督ならではの捉え方があるのでは?と思ったりしがちだけど、本当はそんなものはなく、その監督の視点でしかないんですよね。この映画でも
「人を救うのは血のつながった家族だけじゃない」
というタナダ監督の視点がしっかりあるからこそ、周囲の人々の力を借りて、父娘が明るく愛情深くなっていく姿に心温かくなるのでしょう。

映画だけでなく、脚本、テレビドラマ、小説と表現の場を広げているタナダ監督ですが、
「私は、映画のおかげでほかのお仕事もできているので、私にとって映画はホームグラウンドみたいなものかもしれません」
と、映画へのこだわりも強い。

「揺れ動く人の気持ちを撮っていきたい。人間が一番矛盾していて不思議な生き物だと思うので、それを突き詰めていきたいと思います」

タナダ監督のファンの人にはもちろん、タナダ作品は初めてという人にもオススメの映画『四十九日のレシピ』。しんどいと思ったら、一人で何とかしようとしないで、誰かに助けを求めてもいいんです! 見終わったあと、心が楽になれる映画ですよ。
(映画ライター= 斎藤 香)

『四十九日のレシピ』
2013年11月9日公開
監督: タナダユキ
出演: 永作博美、石橋蓮司、岡田将生、二階堂ふみ、原田泰造、淡路恵子ほか
(c)2013 映画「四十九日のレシピ」製作委員会
※衣装:TOGA PULLA(トーガ プルラ/TOGA 原宿店 03-6419-8136)

00
モバイルバージョンを終了