「たまに幻聴が聞こえます、うふふ」――。
うっすら目の下にクマを作りながら笑ったのは、山本葉子さん。保健所や動物保護センターといった行政から猫を引き取り、厳しい面談をクリアした飼育希望者に譲渡する活動を続けるNPO法人「東京キャットガーディアン(TCG)」の代表です。
「猫の殺処分ゼロ」を目指し、2002年に自宅にて約30頭の猫の保護を開始。その後任意の保護団体を経て2010年にNPO法人となった同団体。月に50~90匹ほどの猫が里親に引き取られており、現在までの総譲渡数は3000頭を超えます。
ある日山本さんより“子猫を保護した”との報を受け、同団体の拠点である豊島区大塚へ。
「急遽子猫の兄弟が持ち込まれたんです。ミルクやりなどで昨日はここに泊まりました」と言って山本さんが指さす先には、なにやら超音波のようなキィキィ音を出す段ボール。中には生後数週間ほどの子猫が、ひぃ、ふぅ、みぃ……4匹! なるほど、「キィ~キィ~」の4重奏を一晩聴き続けた山本さんが発した冒頭の「幻聴」発言にも合点がいきます。
「民間を経由しているため、捨てられていたのか野良かは分かりませんが、とにかくここまで小さい子は久しぶり!」と山本さん。ともすれば突然死の可能性もあり「もっとも気が抜けない」時期だという彼らの育児シーンをのぞいてみました!
◆2時間ごとのミルクは必須!◆
さて、わずか300グラムほどと成猫の10分の1以下の子猫たち。その小さな身体からは想像できませんが、彼らが1日に必要とするミルクの量は相当なもの。しかも2~3時間ごとに、ときたものだから、哺乳期の子猫を育てる人はとにかく睡眠不足との戦い!(筆者も子猫を哺乳瓶から育てたことがありますが、毎日睡眠不足だった記憶があります)
まだまだ小さな口の子猫。哺乳には細い注射器を使い、なかば強制的に飲ませます。ぐずる子猫、手を休めない山本さん、そして双方を見守る筆者……! がんばれ、にゃんズ! 今が大事な時期なんだ!
◆母猫の代わりにオシモの世話も◆
さぁお腹がいっぱいになったら次はオシモです。通常、哺乳期の子猫に対しては母猫が肛門周りを舐めてやることで排尿を促しますが、母猫がいない彼らの場合、山本さんがティッシュで肛門周りをチョンチョンと刺激して排尿させてやります。
もうね、このときの子猫の表情といったら「あかん! あかんて! アッー!」とでも言ってるかのよう。チョロチョロッと出すもん出したら、さぁ睡眠だ!
◆シェルターにデビューするその日まで◆
さて、同団体で譲渡するのは生後2ヶ月以上の猫と決まっており、去勢・避妊手術/ワクチン接種/寄生虫駆除を終えた猫から、都内3か所にある猫カフェ型施設「シェルター」で里親を待ちます。
今回ご紹介した子猫4兄弟も、あと2カ月もすればシェルターにデビューできることでしょう。4匹とも良い里親さんに出会えるよう願うばかりです。
取材協力:NPO法人 東京キャットガーディアン
取材・撮影・執筆=井上こん(c)Pouch
▼この中に
▼子猫4兄弟が!
▼うわーリスみたい!
▼はいはいミルクの時間ですよー
▼よく飲む子と嫌がる子と分かれる
▼目がうるうる……
▼さ、次はオシモでっせ!
▼片手でヒョイッと裏返しにされる
▼暴れる!
▼逃げる!
▼捕まる!
▼そしてこの表情である。「アッー」
▼はいはい、もう寝る時間ですよ
▼東京キャットガーディアン大塚シェルター
▼先輩方の写真も撮っておきましたよ
▼先輩たちも早く卒業しようね☆
▼チラッと撮影した動画もあるよ〜