この可憐なピアス、ステキでしょ? 大きな飾りでも軽いし、繊細な作りなのに洗えるし、丈夫なの。しかもつけるとなんだか「前向きに生きねば!」という力がもりもりわいてきちゃう。
これ、オヤと呼ばれる、中東地域の伝統的なレース編みを使ったピアスなんです。オヤを作るのに必要なのは、なんと1本の針と糸だけ。このオヤには色んな想いが詰まっているんだとか。
オヤがどんなものなのか、どんな想いが詰まっているのかを教えてもらいに、このピアスを販売していた認定NPO法人難民支援協会(JAR)の田中さんにお話を伺ってきましたよ!
■オヤとは?
オヤはアナトリア半島(トルコ共和国のアジア部分)で作られている伝統的なレース編み。トルコやクルドなど中東の女性が家庭料理のレシピのように母から娘へと代々受け継いできています。
伝統的にはイスラム教徒の女性たちがかぶるスカーフの縁飾りに使われ、次第にキッチン用品やクロス、枕カバーや花嫁衣装に使われるようになったんだとか。編み図がないので作り手がインスピレーションを働かせ、身近な花や果物をモチーフに、家事の合間に1本の糸と針を作ってじっくり作っているそうです。
■オヤに編み込む秘めた想い
オヤは、女性の自由な発言が許されなかった時代に自分の気持ちを表現するための手段として使われていました。たとえば、恋をしている女性はヒヤシンスをモチーフにオヤを作り、未来のない愛に苦しんでいれば黄色い水仙を、夫婦関係がうまくいっていることを表現するためには赤い唐辛子を、と言った具合に。
すごいのは、姑に墓のモチーフのオヤを贈ったり、「最初から不幸な結婚をしているわ」と伝えるために青い唐辛子のモチーフのオヤを作ったりして、気持ちを表現しちゃうところ。発言は許されなかったけれど、表現には意外とパンチが効いてます。
記者はこのピアスをつけるときに、「いろいろな困難があったとしても、前を向いて頑張らねば!」という気持ちを感じます。なぜなら、このオヤの作り手達がきっとそういう想いを抱えながら、一針一針編んだのではないかと思うから。
■「前を向いて頑張らねば!」をピアスから感じるわけ
このピアスについているオヤは、難民支援協会が支援している、日本に逃れてきたクルド難民の女性たちが作ったもの。
以前に「読んだら涙が止まらなくなるレシピ本『海を渡った故郷の味』の料理を作ってみた」という記事でも紹介しましたが、日本にも近年では年に3,000人以上の難民が母国から迫害を受け、命の安全を求めてやってきています。
「国から迫害を受けるなんて、難民って何か悪いことをしたのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、あのアインシュタインもショパンも難民。たとえば、改宗したことや、民主化を求めてデモ活動に参加したこと、同性を好きになったことなどが理由で、母国の政府から迫害を受ける人がいます。
難民は母国で築いてきたキャリアや家族、財産などを捨て、単に受け入れてくれたからとい理由でまったく知らない外国に移り住むことがほとんど。命の安全はいったん確保できても、仕事も知り合いもなく、明日どうなるかもわからない不安の中で生きています。それは日本に来ている難民も同じこと。
クルド難民の女性は家事の合間に、遠い祖国のことを考えたり、日本での暮らしのことを考えたりしながらオヤを編んでいるのでしょう。それを考えると、記者はこのピアスをつけるときに「いろいろな困難があったとしても、前を向いて頑張らねば!」と思うのです。
■実はこのピアス、2000円だったよ!
難民支援協会は、定期的にオヤのアクセサリーを販売しつつ日本に逃れてきたクルド難民のことを紹介する「オヤ・カフェ」というものを開いています。
記者が買ったピアスもそこで販売しているものですが、なんとビックリ2000円とお手頃価格。作るのには相当な時間がかかるだろうし、前向きな力ももらえる気がするからもっと高くても売れると思うのですが……。でも営利が目的ではなく、多くの方にお気に入りのオヤに出会ってもらい、難民の現状を知ってもらいたいから、この値段にしているんだとか。
次回のオヤ・カフェは7月の予定。オヤのピアスがほしい、お茶を飲みながらもっとクルドのことを知りたいという人はぜひ参加してみてはいかが?
実は今日6月20日は国連総会で定められた「世界難民の日」。この機会に、ちょっと難民について想いをはせてみてください。
【オヤ・カフェ情報】
参加をご希望の方は、件名に「オヤ・カフェ参加希望」、本文に「お名前」を書いて、info@refugee.or.jpまでメールください。日時が決まり次第、ご案内いたします。
参考:オヤ・カフェ〜難民から学ぶ世界の文化〜(認定NPO法人難民支援協会)
写真提供・取材協力=認定NPO法人難民支援協会(JAR)
取材・執筆=FelixSayaka (c) Pouch