時は現代、余は歴女。とおい昔にこの世を去られた歴代のスターたちを、蘇らせてくれる銅像たちよ! その表情、その立ち姿、威厳さはもちろん、雨に濡れた時の悲哀さにもまたグっときてしまう記者なのですが、最近の銅像はいろいろととんでもないことになっているということを今回みなさまにお伝えしたく!
歴史上の人物の銅像は、功績や伝説などの個性をギュギュッと詰め込んだ作品。その詰め込み加減の影響で、斬新過ぎるモノが生まれてきてしまうことがあるのです!
今回は、特にレベルの高い銅像を5つ、日本全国からよりすぐってご紹介したいと思います。いま、ニッポンの銅像がアツい!(※日に焼けて、という意味ではなく)
■ 見るもの全員を確実に気まずくさせる「織田信長」(岐阜県岐阜市)
誰もが知っている、戦国時代のカリスマODA☆NOBUNAGA! 彼の迫力・スケール・強さ・物好きぶり、すべてがあまりに有名です。「人並み外れて凄い人だった」「とんでもないお方だった」……そう、伝えたい気持ちはわかります! わかりますが! なぜこれをやってしまったのかと本気で問い詰めたい!!
全身! 全身が金!!!! お顔も甲冑もマントも、ぜんぶ黄金の像なのです。信長さまのご威光、尊厳、迫力がキラーんと光って……いないよ全然! これ、罰ゲームで全身金粉になったリアクション芸人だよね!! もう、どこからどう見ても、威光とか尊厳じゃなく「ユニーク」「ギャグ」のイメージ! お顔もなんだかうすぼんやりしていらっしゃるし、あのー恐れながら、あなた本当に織田信長様ですか……はっ!! まさか影武者か!!!!! ちなみに岐阜駅前のターミナルに燦然と輝いたまま棒立ちしておられます。
■ 歴女すべてを堕とすウルトラハイパーイケメン「ジョン万次郎」(高知県土佐清水市)
苦渋な表情を浮かべ崩れ落ちている人々の先頭で、唯一希望へと走り出そうしている少年の銅像……なのですが、そのお顔立ち、その表情、その肉体!! 細マッチョ美男子すぎてなんともたまらんのですグハァー! 設定的には14歳のぼうや……のはずなのですが、あふれかえる大人の色気ときたら! なので、彼(銅像)と目があってしまうと大変危険。身体の奥で枯れていた恋心がじゅわっと潤いはじめてきます。あぁこれが青春なのね、と禁断の恋の予感。
「日本で初めてアメリカに渡った人物」であるジョン万次郎さんですが、そのきっかけは遭難でした。14歳だった万次郎と仲間たちは、漁をしている最中に無人島に漂着。143日もの間、悪天候や飢えに耐え続けたといいます。そしてついに彼らはアメリカ船に発見・救助され、万次郎はアメリカへと渡ることに。絶望の淵から運命が大きく変わったその瞬間を、力強くそしてドラマチックに切り取った、そんな銅像なのでした。土佐清水市の「海の駅あしずり」で、歴女みんなを待っているぜ。
■ 悪意さえ感じるカッコワルさ! 歴女を裏切る「明智光秀」(滋賀県大津市)
上司たる織田信長を討ったことで「裏切り者」のイメージがある、明智光秀。智将の誉れ高く、義憤にかられての謀叛だったという説もあることからファンが多い……の、ですが! この像の裏切りっぷりといったらハンパありません! 武将銅像の三拍子である「威厳・品格・剛健さ」が、どれもこれもスッポリ抜け落ちちゃってるのですから。明智さまに会いに来たと思ったのにうわーなんじゃこらー! なんという脱力、なんという裏切り!
その最大の原因は……なんといっても、そのスタイルでしょう。ザ・昭和人間なうちのおとうちゃんも裸足で逃げ出す、手足の短さ!! お顔のでっかさ!! 「これからちょっと真面目な顔しますね、ドヤッ!」と聞こえてきそうなくらい、そのへんのまじめなおじさんが無理に演じているような表情もツライ。そして極めつけ、武将の魂である甲冑にいたっては、サイズもおかしいし、段々がついているだけ。もうなんかそのへんの川にいるザリガニみたい。
明智さまに会いに訪れた歴女たちが、次々と肩を落として帰ってゆきます。信長・光秀がそろって銅像がなんだかすごい残念なのは、豊臣家の呪いでしょうか。よりによって明智光秀が築いた坂本城の跡・坂本城址公園に存在します……。
■ 斬新なデザインの裏にある悲しい伝説に涙「安徳天皇&二位尼」(山口県下関市)
巨大な丸い物体から、顔が2つ飛び出している銅像。柔らかげな茶色い球体は、巨大なまゆのようにも見えます。しかし、この像が描いているのは、とてもとても悲しいシーンなのです。
まゆから飛び出ているふたりは、幼き安徳天皇と二位尼(にいのあま=平時子)です。時は平安時代末期。源平最後の合戦、壇ノ浦の戦いで平家方は壊滅、平家は滅亡の時を迎えます。二位尼は安徳天皇を連れて海に身を投げるのですが、怖がる幼い安徳帝をやさしく抱き「波の底にも都の候ぞ(海の底にも都があるんですよ)」と告げたと言われています。その瞬間を描き出したのが、この銅像。入水という悲しすぎる運命から逃れられないという瞬間に、安徳天皇を包み込む二位尼のあたたかな着物。それは激動の人生を歩んだ彼女の、最後の優しさにほかならないのです。壇ノ浦の戦いがあった下関市、そこで安徳天皇を祀る赤間神宮にて、このふたりと会うことができます。
■ 夜になると動き出すまさに忍者の「松尾芭蕉」(東京都江東区)
イカした銅像に対して「あーあ、突然動き出してくれないかな~」という思いを抱くのは歴女として当然のこと。そんなみなさんを応援したい記者は、探しだしました! この松尾芭蕉像、動くんです。
松尾芭蕉といえば、日本中を忍者レベルの速度で旅し「奥の細道」を完成させたお方。留まることを知らない男・松尾芭蕉のイメージを裏切らない画期的なこの銅像は、昼間は通行人を眺め、夜は川を眺めているのです。毎日正午、そして17:00になると、じわじわと向きを変えていきます。そのスピードはまさにアハ体験レベル。もともと川側を向いてたのではと思えるくらい、いつの間にか向きを変えています。お時間のある方はぜひ一度目の前で見てほしい、動き出す銅像です。東京・江東区にある芭蕉記念館で朝な夕なに動いておられます。
■まとめ
全国各地に、何気なく存在している銅像たち。そのなかには、思わず二度見三度見してしまうインパクトをもつ銅像も数多くあるのです! Pouchでは、今後も銅像を追いかけてまいります(※彼らは動かないけれど)。また、みなさんの周りにある銅像で、これは! と思うものがありましたら、ぜひぜひPouch編集部までご一報を!
協力:日本の銅像探偵団
執筆=百村モモ (c) Pouch