4年を経た今もなお、深刻な状況が続いているシリア危機。その矢面に立たされているのは、ほかでもない、一般市民です。
大人はもちろん、幼い子供たちまでもが、日々命の危険にさらされ、飲み水すら満足に得ることができないでいる。劣悪な環境、そこへ追い打ちをかけるかのような夏の到来により、懸念される感染症。
「日本ユニセフ協会」によれば、早急に人道支援を必要としているシリア国内外にいるシリアの子どもたちの数は、延べ650万人。わずか1年前と比べて200万人以上も増加しており、この数字が子供たちに与えている計り知れない影響を、如実に物語っています。
「子どもたちは戦闘で攻撃され、破壊された自宅や学校、保健センター、地域社会を毎日、目にしています。何百万もの夢や希望は、砕け散りました。世界はこの惨状から目をそむけてはいけません」
そう語るのは、ユニセフ・中東・北アフリカ地域事務所代表のマリア・カリヴィスさん。暴力や爆撃から逃れるために数時間も歩いて山を越え、検問所ではおびただしい数の銃を前にし、さらに恐怖心を煽られる。そんな生活を送る子供たちが、シリアには現実として数多(あまた)存在するのです。
また近年問題になっているのは、安全な水へのアクセス妨害。ここ1年で飲み水や生活水はおろか、トイレまで壊滅的な被害を受けており、主な給水ネットワークは崩壊。シリア北部と東部の主な水源となっているユーフラテス川を含め、水の汚染も広がっています。しかも今年2014年は最小降雨量を記録、水不足にさらなる追い打ちをかけました。
そのような状況下でも、ユニセフおよびパートナー団体は今年、シリア国内でおよそ1700万人に人々に安全な水を提供。また子どもたち290万人にポリオの予防接種を行ってきました。一方で、シリア国内で紛争の影響を直接受けている子どもたち114000人に対しては、学習用品を提供、3000人もの子どもたちに心のケアを行ってきたのだそうです。
しかしながら現在、シリアの状況の悪化により、ユニセフの活動資金は不足しています。2014年末までにシリアと周辺国での子どもたちの緊急支援活動の必要な支援額に対し、4億8000万ドル、日本円にしておよそ486億円不足している状態です。
このまま新たな活動資金が確保できない場合は、支援活動の規模縮小、あるいは最悪の場合完全停止をせざるを得ない状況である、とユニセフ。何の罪もない市民、そして未来ある子供たちを1人でも多く救うべく、私たちになにができるのか。みなさんもこの機会に今一度、考えてみてはいかがでしょうか。
参考元:日本ユニセフ協会
執筆=田端あんじ (c)Pouch