独身中年男性・井之頭五郎がただ食事をする――そのシーンと心理描写を淡々とつづっていくという独特のスタイルで人気を博す漫画『孤独のグルメ』。松重豊さん主演のドラマ版もSeason4まで続くという異例の大ヒットに。
ひとりめしという孤独で自由な愛すべきひとときは、誰もが共感できるもの。でもでも、あれってやっぱりゴローちゃんが中年男性であるというのは大きな要素としてあって、女性であってもまったく同じに成り立つかというとビミョーなんじゃないかなぁ……。
というわけで、今回ご紹介するのは『孤独のグルメ』の女子版ともいうべき漫画、同じく久住昌之さん原作の『百合子のひとりめし』。もとは2004年に『漫画アクション』に連載されていたものが復刊ドットコムによって今月、満を持して出版されたという作品なんですが、ココには思わずうなずいてしまう女子ならではの“ひとりめしあるある”が満載!
主人公は離婚して間もないバツイチ独身女子・象百合子(すがたゆりこ)、30歳。ではここで、『孤独のグルメ』とはちょっと違う、「オンナひとりめしならではの共感ポイント」をいくつかピックアップしてみましょう。
【オトコ度満点な定食屋ではヘンに気負ってしまう】
初めてのひとり旅で大阪の新世界でごはんを食べることになった百合子。結婚して以来、ひとりで喫茶店にも入ったことがないという百合子にはかなりのハードモード……案の定、女ひとりでも入りやすそうな店がなくてガク然! やさしそうなお店のおばさんに惹かれて入った定食屋さんも、むさくるしそうなおっさんばかり。ジロジロとおじさんたちの視線を浴び、注文の声も力が入り過ぎに! 男性度の高い食堂や居酒屋に入ったときのこういう緊張感、あるあるですよねー。
【新しいワンピースにカレーうどんの汁を飛ばす】
なんでですかね、注文してから「あ、今日って新しい服じゃん!」って気づくの。百合子もやはりやっちまいました。おいしそうなカレーうどんを食べようとしたら、はねてキレイ色ワンピースにシミができ、「ひいいいいいいっ」とものすごい形相に。このショック、男性より女性のほうが絶対大きいと思います。
【ひとりなのについつい彼氏と来ている風をよそおう】
動物園のフードコートらしきところのカウンターで、「ビールください」と注文した百合子。「おひとつで?」と聞き返され、ついつい「ふ……ふたつ……」と返答。似たような事案で、自宅でピザを頼んで、ひとりなのに部屋の奥に彼氏がいるという架空設定を装ってしまうとかありませんかね? 私、やったことあるよ……テレビつけて奥のほうチラチラ見ながら「誰かいる感」醸し出すの。
【下ネタを大声で繰り広げるおっさん連中にキレる】
ひとりでゆっくりごはんを味わう至福のひととき。なのに、そばのテーブルでは大声で猥談をしてガハガハ笑うおっさん連中。ゴローちゃんならアームロックのひとつやふたつかましてるよっ! 百合子も黙っちゃいません。気づいたときには、「もはや味がわかんないじゃないのよっ!!」とおじさんたちに怒鳴りつけているのでした。
こんなひとりめしエピソード、皆さんにも経験あるのでは? どんなお店にも気後れせずに入っていけるオトコ前な女子もいるけれど、私はひとりめしに葛藤する百合子の姿に共感するところも多々あり。たぶん私のように、美容院や洋服屋さんで店員に話しかけられるのがすごく苦手・食事をするお店でも初回からオープンマインドにくつろいだりお客さんと親しくなったりってとてもできない……という人には、百合子の気持ちもよーくわかるかも。
というわけで、『孤独のグルメ』が好きな30代女性には特に読んでみてほしい『百合子のひとりめし』。でも本当は、そういう葛藤もふくめて、ひとりめしって楽しいんですよね、やっぱり。
参照元:百合子のひとりめし(原作・久住昌之、作画・ナカタニD./復刊ドットコム)
執筆=鷺ノ宮やよい (c) Pouch