日本でも折に触れて話題になる、DV(ドメスティック・バイオレンス)。配偶者や恋人などの親密なパートナーから受ける暴力のことですが、これは重度なものである場合、命に関わるものになります。
本日ご紹介するのは、南米・ペルーで発刊された、DVを続ける男性から被害女性にあてて綴られたラブレター集「No te mueras por mi(僕のせいで死なないで)」。ペルーでは、DVの被害に遭う女性の数が年々増加しており、その被害は凄まじいものとなっているとのこと。
現在ネットを中心として世界的に話題になっているこの本、直視すらためらわれるような凄惨な内容を、より衝撃的なかたちで見せてくれる斬新な構成が特徴的。DVという問題の根深さ、そして悲惨さ極まりない現状について深く深く考えさせられる1冊となっています。
【前半は甘い甘いラブレター】
まず、前半の白いページには、熱くて甘い愛の言葉が並んでいます。それは、DVを繰り返してパートナーの女性が離れていった25名の男性から、女性たちへの後悔と愛情を綴った熱烈なラブレター。
「心の底から許しを乞いたい」
「同じ過ちは繰り返さない。僕には君が必要なんだ」
「みんなの言うことに耳を傾けないでくれ。みんなは僕たちの愛の歴史を知らない。みんなは僕がどれだけ君を想っているか、分かっていないんだ」
「世界中で誰よりも君を愛してる」
「悪いことをしたと思ってる。でもあれは間違いなんだ。もう二度と酒は飲まない。君を大切にする。だから僕のそばにいてほしい。心から愛してる」
【後半には被害女性たちの悲惨な結末が】
そして、後半の黒いページ。ここに収められているのは、そのラブレターを受け取った被害女性たちの実際の結末です。
手紙を受け取って5週間後に殴られて死亡した女性。
工具箱で頭を殴られて脳に障害を負った女性。
他の男性と一緒になれないよう唇を噛み切られた女性。
沸騰した鍋を顔に投げられて重度のやけどを負った女性。
中には家族の協力を得て田舎に逃げることができた、女性保護シェルターに入り平和に暮らしている、といった女性はいても、DV男性が気持ちを入れ替えてふたりが平穏な生活を手に入れたという例は、少なくともこの本の中にはありません。
【同様の体験をした女性からのコメント】
この本を紹介する動画に寄せられたコメントにも、同様の体験をした女性からのものがありました。
「私も全く同じ経験があります。よりを戻そうとラブレターも受け取りました。でも暴力は繰り返されました。幸い私はこの状況を抜け出すことができたので、今は3人の息子と静かに暮らしています」
【もしDVに遭遇したら/DVの境遇にいるのなら】
同書の最後には「もしあなたがこのような境遇にいるのであれば、彼女たちと同じ運命をたどらないよう、行動を起こして下さい」との言葉があります。そう、この本は、DV被害に悩む女性に脱出の手がかりを教え、同時に未経験の女性に予備知識を伝えるものでもあるのです。
暴力を振るうパートナーを「その人にもいいところがある」と思ってしまうのは、被害女性が自分の心を壊さないように自分を守る防衛本能のひとつなのだとか。専門家によると、この状況から抜け出すことは簡単ではなく、弁護士やカウンセラーなど第三者の介在が必要なようです。
【まずは第三者に話をしよう】
幸い日本には、DV被害の女性を助けるための仕組みが多く存在しています。地元の役所に問い合わせれば、地域の女性センターを紹介してもらえるし、インターネットで「DV被害」と検索をすれば、助けてくれる機関が多数ヒットします。緊急を要する場合は、警察がいいでしょう。この場合は交番ではなく、最寄りの警察署の「生活安全課」に相談するのがいいようです。
きっといつか分かってくれる。改心してくれるはず。暴力を振るわれるのは自分が悪いから。愛されているのだから大丈夫…… そんな気持ちに埋没していて取り返しのつかない事態が起こらないよう、「DVかな」と感じたら、まず誰かに相談をすることが解決への第一歩です。
参照元=No te mueras por mi
執筆=南野バンビ (c)Pouch
▼許してくれ。君を失いたくない……そんな甘い言葉の先にあるものは