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猫写真家・岩合さんの監督デビュー作『ねことじいちゃん』は全シーンに猫が出てくる! 猫好き必見の癒し映画です!

2019年2月22日

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは世界的な動物写真家・岩合光昭さんが初監督した映画『ねことじいちゃん』(2019年2月22日公開)です。

原作はねこまきさんの同名漫画。本作はおじいちゃんとおばあちゃんたちの悲喜こもごもの日々を四季を通して描いた映画ですが同時に、全シーンに猫が登場する猫好き大興奮の猫映画でもあるのです。では物語からいってみましょう。

【物語】

海と緑に囲まれた島で暮らす70歳の大吉(立川志の輔)は2年前に妻(田中裕子)に先立たれてから、愛猫のタマと暮らしています。

親友の巌(小林薫)と語り合い、島にできたカフェの若き女主人・美智子(柴咲コウ)に料理を習ったり、日々の暮らしを楽しんでいました。けれど、過疎化が進む島は若い人が減っていき、高齢化問題も抱えていたのです。「老人たちで助け合って生きていきましょう!」そんなことを言っていた矢先、大吉は胸に痛みを感じ……。

【動物写真家・岩合光昭にしか撮れない映画】

岩合光昭監督は、動物写真家として世界的に有名。岩合さんが手掛けているドキュメンタリー番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK-BSプレミアム)も猫好きに大人気です。

その岩合さんがついに映画監督デビュー! 岩合さんは監督依頼があったとき「人の物語とともに猫の物語も軸になった僕にしか撮れない映画を作ろう」と思い、挑戦することにしたそうです。たしかに本作は人間と猫が同等に共存している作品です。

【美しい島で描かれる猫との生活】

『ねことじいちゃん』は主人公・大吉さんの島の生活を描いた作品ですが、彼の側にはいつも猫のタマが寄り添っています。でも岩合監督はタマと大吉さんの泣けるエピソードなど感動を誘うような演出はしていません。

タマは大吉さんの側にいて、気ままに行動しているだけ。そのお互い気を使わない関係が「猫との生活っていいなあ」と思わせてくれるのです。また島のゆったりした時間の流れも素敵なんですよねえ。ロケ地は愛知県三河湾の佐久島というところなのですが、おとぎ話に出てくる島のような雰囲気があるのです。かわいい猫たちの姿、のどかで美しい景色、岩合監督のセンスが光ります。

【おじいちゃんとおばあちゃんの青春】

島で生活するおじいちゃん、おばあちゃんたちの友人関係も楽しいです。特に世話好きのトメさん(小林トシ江)と意地っ張りのたみこさん(田根楽子)のユニークな友情エピソードは印象深いです。顔を合わせるとケンカばかりしているんだけど、それが生活にハリを与えているのですよねえ。

たみこさんが引きこもりになったとき「アンタがいなくなったら私は誰とケンカすればいいのよ!」というトメさんの言葉に胸がジーン……。また、お互い好きなくせいに距離を縮めることができない巌さんとサチ(銀紛蝶)さんの純情も可愛い!

「みんなが楽しめるイベントをやろう」と小学校の体育館でダンスパーティを開催するなど、人生を楽しもうとしているおじいちゃんとおばあちゃんたちを見ていると「もう一度青春!」みたいなさわやかさを感じ、年を取るのもいいもんだなと思いましたね。

【飯島奈美さんのお料理も登場します!】

若くてイケイケなうちは「過去は振り返らないわ!」と突き進む生き方ができるけど、70歳くらいになったら、過去を振り返るのも悪くない。この映画はそんな風に思わせてくれます。

大吉さんは亡くなった奥さんの遺したレシピで料理をしたり、奥さんがタマを連れ帰った日を思い出したりしながら、ちょっと寂しくなったりしますが、そこには確実に奥さんとの幸福な日々が横たわっており、思い出って宝物だなあと思いつつ、タマの中に奥さんが生きているのかも~とも思ったりして……。

ちなみに大吉さんの手料理など、本作のごちそうはすべて「かもめ食堂」などでおなじみのフードスタイリスト飯島奈美さんが担当。豆ごはん、卵焼き、タイのカルパッチョ……美味しそう~! お料理にも注目ですよ。

執筆=斎藤 香 (C)Pouch

ねことじいちゃん
(2019年2月22日(金) 猫の日 全国ロードショー)
監督:岩合光昭
出演:出演:立川志の輔、柴咲コウ、柄本佑、銀粉蝶、山中崇、葉山奨之、田根楽子、小林トシ江、片山友希、立石ケン、中村鴈治郎、田中裕子、小林薫
©️クロックワークス

▼予告編はこちら

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