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【エア・ジョーダン誕生物語】映画『AIR/エア』は仕事において大切なことが詰まっているので新社会人におすすめ! 一瞬たりとも見逃せません

2023年4月11日


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、ベン・アフレック監督作&マット・デイモン主演映画『AIR /エア』(2023年4月7日公開)です。

本作は、スポーツブランド「ナイキ(NIKE)」の低迷期を救った「エア・ジョーダン」誕生の物語。マイケル・ジョーダンとの契約で一発逆転したナイキ。その裏にはバスケットボール部門担当者の並々ならぬ情熱が……!

本作を劇場で観てきたので、まずは物語から。

【物語】

1984年、ナイキ本社は経営難に陥っていました。特にバスケットボール部門はアディダスやコンバースなどほかのブランドに大きく差をつけられ、CEOのフィル(ベン・アフレックさん)は、ソニー(マット・デイモンさん)にバスケットボール部門の立て直しを命じます。

そこで彼が目をつけたのは、当時まだNBAデビュー前&新人選手のマイケル・ジョーダン。しかし「無名の新人に大金を注ぎ込みたくない」と周囲から大反対されてしまうのです。

【ナイキの逆転劇に大興奮!】

今や大人気ブランドのナイキですが、スポーツ選手との契約に苦戦していた時期があったことや、エア・ジョーダンが起死回生のバッシュだったことを知らなかったので、この映画の全てが新鮮で面白かったです!

何より本作は、ナイキがマイケル・ジョーダンとの契約に成功するという結末がわかっていてもめちゃくちゃ面白い。とにかく契約に至るまでのプロセスに興奮させられるのです。

【成功したければ険しい道を選べ!】

エア・ジョーダンが生まれる前のナイキがイマイチだったのは、現状維持を望み、守りの経営に入っていたから。

経営陣はナイキを世界1のブランドにしようと思っていないですし、バスケットボール部門も中堅選手数名と契約取れればいいぐらいの気持ち。だから当時ド新人だったマイケル・ジョーダンにさえ「ナイキだけは嫌だ!」と避けられていたんです。

そこに風穴を開けたのがソニー。彼は無名時代のジョーダンの試合をビデオで何度も見ているうちに、あることに気づいたのです。

それは、ひとつの何気ないプレーから “ジョーダンがチームの要” であり、監督やチームメイトに期待されている重要な選手であること

「スカウトマンの目はすごい!」と思いましたね。ソニーはこれをきっかけに、中堅選手数名と契約するための資金全てをマイケル・ジョーダン獲得に使おうとします。

そして、彼がもっとすごいのは “あえて険しい道を選ぶ” ところです。会社は大反対しますがソニーは絶対に諦めないんです。

【筋を通して行動に移すことが大事】

ソニーはマイケル・ジョーダンと交渉するために、ジョーダンの代理人(クリス・メッシーナさん)に黙って、直接彼の母親(ヴィオラ・デイヴィスさん)に会いに行きます。この行為は本来はNGですが、ソニーは何も考えずに行動したわけではないんです。

ジョーダン獲得のためにCEOのフィルを何度も説得しましたし、代理人にも何度も電話をかけて交渉を繰り返しました。それでも突っぱねられたので強硬手段に出た、というわけです。

もちろんフィルも代理人も怒りまくります。しかしソニーは、ジョーダンが必ずスーパースターになる選手であると確信を持っているし、ナイキが生まれ変わるためには、ある程度のリスクを背負わないといけない。彼も自分のキャリアを賭けて臨んでいたのです。

だからこそ、選手と契約できるか否かの物語で結末がわかっていても「そこまでやっちゃって大丈夫?」とハラハラし、手に汗握っちゃうんですよ!

【俳優たちの演技と脚本の凄み】

映画『AIR/エア』は、エア・ジョーダンのデザインやネーミングなど、制作過程も映し出しており「あの有名シューズはこうやって出来上がっていったのか」と感動!

そしてスポーツ選手とブランドの契約の裏側にフォーカスした会話劇ゆえにセリフが最重要。これが最高なんです!

ソニーと代理人の電話のやり取りは、以前から友人関係だったことも幸いして、激辛ジョークも交えた男子たちの喧嘩みたい。ああ言えばこう言うの応戦に思わずニヤニヤしちゃいました。

またジョーダンの母の交渉シーンはバッチバチの闘い。後半に登場する電話交渉のシーンは超スリリングで痺れる〜!

そんな母を演じるヴィオラ・デイヴィスさんの圧が凄かった。名演です

【マット・デイモンとベン・アフレックの共演が胸アツ!】

ベン・アフレック監督はCEO役で出演しており、マット・デイモンさんとのシーンは胸アツ。だって、彼らは『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)の脚本を共同で執筆し、アカデミー賞脚本賞を受賞した盟友ですからね。

素晴らしい脚本を生かしたテンポのいい演出はお見事です。俳優陣の演技も含めて、全てが最上級で一瞬たりとも飽きさせません!

春から社会人として人生の新たなスタートを切った人も多いと思いますが、そんな人にこそぜひぜひ見てほしい。仕事をする上で大切なことがたくさん詰まった作品。大いに刺激を受けると思います!

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

『AIR/エア』(2023年4月7日全国公開)
監督:ベン・アフレック
脚本:アレックス・コンベリー
製作:ピーター・グーバー、ジェイソン・マイケル・バーマン、デビッド・エリソン、ジェフ・ロビノフ、マディソン・エインリー、マット・デイモン、ベン・アフレック
出演:マット・デイモン、ベン・アフレック、ジェイソン・ベイトマン、クリス・メッシーナ、マーロン・ウェイアンズ、クリス・タッカー、ヴィオラ・デイヴィス

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