2023年夏映画の話題作『バービー』(2023年8月11日公開)。
先日、プロモーションでグレタ・ガーウィグ監督とプロデューサーのデイビッド・ヘイマンさんが来日したのですが……なんとPouchでインタビューのチャンスをいただいちゃいました!
『バービー』の魅力について「どんな物語なのか、作品にどんな思いが込められているのか」と、お話を聞いて来ましたよ。
【映画『バービー』について】
世界でいちばん有名なファッション・ドール “バービー” の世界を『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のグレタ・ガーウィグ監督が実写映画化。
どこもかしこもピンクなバービーランドでケン(ライアン・ゴズリングさん)と毎日をエンジョイしていたバービー(マーゴット・ロビーさん)の体に異変が!
その原因を探るため、バービーとケンは人間の世界へ行くのです。
バービー人形に素敵なオリジナルストーリーを作り上げたグレタ・ガーウィグ監督と製作プロデューサーのデイビッド・ヘイマンさんに作品に込めた想いについてお話を聞きました!
【予想外の切り口でバービーを描く】
―バービーを映画化することが決まったときのことを教えてください。
■グレタ・ガーウィグ監督(以下、グレタ監督)
バービーは多くの人から愛されてきた人形で60年以上の歴史があリます。私は脚本家・監督として、常にチャレンジできる題材を探しているのですが、バービーは『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』と同じように誰もが知っている題材だけど、まだ伝えるべき物語があると感じました。
バービー伝説を称えながら、予想外の切り口で彼女の物語を掘り下げ、時代にあったバービーを描けると思ったのです。
■デイビッド・ヘイマン プロデューサー(以下、ヘイマンさん)
この映画は、マーゴット・ロビーから始まったんです。マーゴットは主演&プロデューサーで、彼女がグレタに声をかけて監督・脚本として迎えました。監督はグレタ、主演はマーゴットと決まってから僕は参加したので、とてもラッキーでしたね(笑)。
僕の仕事はグレタが気持ちよく仕事ができるようにサポートをすること。映画作りに情熱を注ぐ彼女と仕事ができて光栄でした。
―マーゴット・ロビーさんとライアン・ゴズリングさんについて、監督から見た魅力を教えてください。
■グレタ監督
この映画でマーゴットが演じるのは典型的なバービー。映画の中で彼女は「バービーを考えるときに思い浮かべるバービー。それが私よ」と言うけれど、陽気で親しみやすいブロンドの女性は誰かと考えたとき、マーゴットしか思いつかなかった。彼女は面白おかしい状況でも共感を呼び、感情を揺さぶる演技ができる俳優です。
ケン役のライアン・ゴズリングはドラマチックなお芝居も上手いけど、とても面白い人なのを知っていたので、脚本はライアン・ゴズリングで当て書きしました。ケンは彼以外に考えられなかったんです。
【みんなで話し合って決めた映画版バービー像】
―バービーは世界的に有名だからこそ、いろんな人が自分のバービーのイメージを抱いていると思います。それぞれの抱くバービー像をまとめるのは大変でしたか?
■グレタ監督
たしかに大変でしたね。1959年にバービーが誕生して以来、バービーも変化してきたし、それぞれにバービーへの想いがありますから。たとえば私の母はバービーのことが嫌いだったんです。でも私は大好きだったし、子どものころ「欲しいなぁ」と思っていました。そんな風に、何事にも世代の違いや好き嫌いは必ずあるものです。
なので、この映画に関わる人たちには男女問わず、子ども時代の遊びやバービー以外の人形についてもたくさん話を聞きました。脚本を書くときは1人で向き合うけれど、映画の仕事はコラボレーションだから、私はいつもみんなで話し合って作り上げていきます。そうやってみんなの心の中にいるバービーを描きました。
ちなみにバービーはロゴも時代で変化しています。この映画のバブルみたいなロゴは私がバービーで遊んでいたころのものなんですよ。
【撮影現場で監督がずっと笑顔だった理由】
―公式のメイキングを見たら、監督はずっとキャストやスタッフと楽しそうに笑いながら撮影していましたね。明るい現場だなぁと思ったのですが、撮影現場では明るく元気を意識しているのですか? 大切にしていることを教えてください。
■グレタ監督
『バービー』の撮影現場は、ずっとハッピーでした。キャストもスタッフも最高だったし、何よりあのピンクのバービーランド! とてもゴージャスで素敵だし、ダンサーの皆さんのパフォーマンスも素晴らしいし、もうずっと嬉しくて楽しかったんです。
ただ、どの作品でも賑やかなわけではなく、現場によって違います。俳優は1人でいたい人、共演者とおしゃべりしていたい人、ディスカッションが好きな人……現場での過ごし方はさまざまです。そんな俳優さんたちのタイプを理解して、彼らの中から作品に必要ものを引き出していくことが大切。私が監督をやっていていちばん好きな作業です。
【年を重ねることの素敵さをバービーは知る!?】
―バービーが人間の世界で老婦人とお話しするシーンが印象に残っています。年を取らないバービーの世界には存在しない人との出会いですが、このシーンに込めた思いはありますか?
■グレタ監督
あのシーンは私にとっても大事なシーンです。あの役を演じてくれたのは衣装デザイナーのアン・ロスさん。90歳の現役デザイナーで、私の大好きな友人です。
人間が年を重ねていくことはとても幸運なことだと思うんです。年を重ねる美しさを体現できる女性は誰かと考えたときアン・ロスさんしかいないと思ってオファーしました。何度も断られたけど、ある日「一緒にマティーニを飲んでくれたらやるわよ」と言ってくれたんです!
今の世の中、シニアの方のことを見過ごしてしまいがちじゃないですか? 特に映画界はその傾向が強いと思う。でも私の映画の中では、シニアの方のことをちゃんと表現して、その美しさに敬意を払いたかった。そんな思いから生まれたシーンです。
【自分らしく生きていこう】
―この映画では人間の世界での出会いや影響から、ケンがバービーランドを自分色に染めようとするくだりが出てきますよね。バービーの完璧な女の子ワールドから見ると、マッチョな男の世界観でビックリしましたが、どのような意図があったのですか?
■グレタ監督
バービーのボーイフレンドのケンは、家もない、仕事もない、何もない男なんです。バービーに「ケン!」と呼んでもらわないと、誰にも気にかけてもらえない。そんな風に大切にされていないからこそ、自分が夢中になれるものを見つけたとき「これだ!」と突っ走ってしまったんですね。
でも正直、難しいことは考えていなかったです。この映画はコメディなので楽しんでほしいです。
■ヘイマンさん
バービーもケンも「こうあるべき」という役割にとらわれすぎていたんだと思います。自分らしくいればいいのです。女性だからこうあるべき、男性だからこうでないといけないなんてことはない。この映画にはそういうメッセージも含まれています。
グレタ監督、ヘイマンさん、素敵なお話しありがとうございました!
皆さん、おふたり言葉を胸に映画『バービー』を見れば、感動が倍増すること必至です。全シーン素敵なのでぜひ劇場で観てほしいです!
取材・文:斎藤 香(c)pouch
Photo:(c)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
『バービー』
(2023年8月11日より全国ロードショー)
監督・脚本・製作作総指揮:グレタ・ガーウィグ
製作:デイビッド・ヘイマン、トム・アカーリー、ロビー・ブレナー
出演:マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、アメリカ・フェレーラ、ケイト・マッキノン、イッサ・レイ、マイケル・セラ、シム・リウ