【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
ピックアップするのは、安藤サクラさんと山田涼介さん共演作『BAD LANDS バッド・ランズ』(2023年9月29日公開)です。直木賞作家・黒川博行原作小説『勁草』の映画化作品で、『燃えよ剣』(2021年)の原田眞人監督が演出を手がけています。試写で見せていただきましたが、サスペンスと強烈バイオレンスにドキドキし、姉弟の愛にグッとくる映画でしたよ。
では、物語から。
【物語】
特殊詐欺のグループでお金を稼いでいるネリ(安藤サクラさん)。彼女はオレオレ詐欺の”受け子”(金を受け取る役目)を手配する “三塁コーチ” と呼ばれる役割を果たしています。
いっぽう、ネリの弟・ジョー(山田涼介)は刑務所から出所してすぐに姉を頼って来ます。
そんなふたりは協力して生きていこうとした矢先、思いがけず億を超える大金を手に入れるチャンスを得ますが、逆にその金をめぐり巨悪と闘うことになるのです。
【冒頭から安藤サクラの魅力が炸裂】
本作は、関西を舞台に繰り広げられるノワールサスペンス。冒頭、オレオレ詐欺の仕組みが描かれるのですが、そこからもうハラハラさせられます!
ネリの役目はオレオレ詐欺に引っかかり、お金を準備した老女から “受け子” がうまくお金を預かれるようにすること。
というのも、警察は詐欺グループの想定を見越して現場で取り押さえようと張っています。
そこで、ネリは “受け子” を現金の受け取り現場に誘導しつつ、同じ服の人間を何度か見かけたら、警察関係者の可能性があるため受け取り中止するなど周囲に目を配るのです。
この一連の行動の描き方がスマートで、安藤さんはこのシーンだけでネリの観察眼の鋭さ、判断の速さを魅せてくれます。
自分が暮らすアパートの老人・曼荼羅(宇崎竜童さん)の面倒見もよく、情の深さも彼女の魅力。始まって数分でネリという女性のキャラクターを観客に理解させ、心も掴んじゃうんだから、さすがとしか言いようがありません!
【山田涼介が最高の輝きを放つ】
ジョーを演じる山田涼介さんは、人殺しも厭わない凶暴な性格。でもルックスの美しさが、凶暴さを怪しい魅力に変えているのです。
荒っぽいわりにネリには従順で可愛い弟。履歴書に犯罪歴を記してしまうおバカちゃんなんだけど、動きは俊敏なんですよね。このギャップがたまりません!
アイドルのキラキラ感を失わないまま、サイコパスな弟を演じ切った山田さん。ジョーは山田さんが演じたからこそ輝いたキャラクターだし、最高のパフォーマンスを見たとおもいます。この作品、「山田涼介の代表作」になるのではないでしょうか!
【後半はネリとジョーの姉弟の絆の物語に】
ネリとジョーがどうやって特殊詐欺グループと決別して、自分たちの人生を歩んでいくか……というか歩めるのか?というのが後半の物語。
そこに大きく横たわっているのがネリとジョーの姉弟愛です。ジョーは本当にネリのことが大好き、ネリの幸せだけを願っているのが良くわかる展開で、ちょっと泣けちゃいます。
ネリ、ジョーのキャスティングがハマった映画『BAD LANDS バッド・ランズ』。安藤サクラさんと山田涼介さんの熱演&ヒリヒリするスリルをぜひ映画館で堪能してください!
執筆:斎藤香(c)Pouch
Photo:©2023「BAD LANDS」製作委員会
『BAD LANDS バッド・ランズ』
(2023年9月29日全国ロードショー)
監督・脚本・プロデュース:原田眞人
原作:黒川博行『勁草』(徳間文庫刊)
出演:安藤サクラ 山田涼介
生瀬勝久 吉原光夫 大場泰正 淵上泰史 縄田カノン 前田航基
鴨鈴女 山村憲之介 田原靖子 山田蟲男 伊藤公一 福重友 齋賀正和 杉林健生 永島知洋
サリngROCK 天童よしみ / 江口のりこ / 宇崎竜童