【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、新型コロナ感染拡大の影響で、本当は昨年公開される予定が、なんと1年以上延期になっていた岡田准一主演の時代劇『燃えよ剣』(10月15日公開)です。

やっと公開ですよ~。司馬遼太郎の同名小説の映画化。共演は鈴木亮平、山田涼介、柴咲コウ、伊藤英明などスター俳優が勢ぞろい!

試写で見せていただきましたが、岡田さんは時代劇が本当によく似合い、剣さばきもお見事でした! では物語からいってみましょう。

【物語】

江戸時代末期、黒船が来航し、開国を要求していた頃。幕府の権力を守ろうとする佐幕派と、新政権を目指す倒幕派が対立していました。

田舎で育ち、バラガキと言われた土方歳三(岡田准一)と、同郷の近藤勇(鈴木亮平)、沖田総司(山田涼介)は、京都の市中警護の浪士募集を聞きつけ、京へ向かい、新選組を結成。

新選組は倒幕派の勢力を持ち前の剣の力で圧倒してゆき、その名は知れ渡っていきますが、彼らは命を狙われるように……。

【ジャニーズのアクションスターとして道を開く】

岡田准一のアクションへの情熱は有名で、『ザ・ファブル』シリーズでもアクション監修をしていたようですが、本作でも殺陣の構成を行っているそう。チャンバラアクションはたびたび出てくるのですが、その俊敏な動き、キレ、もう瞬殺みたいな勢いで刀を操る姿は本当にかっこよかった!

これまで時代劇への出演経験は多く、本作と同じ原田眞人監督作『関ケ原』では石田三成を演じていますが、個人的には『燃えよ剣』の土方歳三の方が、ハマっていたように思います。

これまでの時代劇出演で築き上げてきた時代劇への取り組み方、所作、殺陣などの学びが、この映画で一気に開花しているように感じました

『ザ・ファブル』シリーズのような現代劇のアクションと時代劇のアクションを本格的にこなして両立させているのが岡田准一の凄さ!

こういう俳優って、これまでジャニーズにいました?? ときどきV6として歌番組で歌ったり踊ったりしている岡田さんを見ると、ちょっとビックリすることがあるほど。アイドルでスタートした岡田准一、自分の力で勝ち取った俳優道なんだな~としみじみ。

11月1日でV6が解散するのは寂しいけど、ますます俳優として大きな存在になりそうです。

【アイドルと俳優を見事に両立させている山田涼介】

原作は未読なのですが、見どころはやはり、幕末の混乱期で新選組として戦った男たちの結束力ですね。常に命がけで剣を抜いてきた土方歳三、近藤勇、沖田総司、そして芹沢鴨(伊藤英明)。

ただ新選組の中でも異質な芹沢、女にだらしなく大酒飲みで悪行を繰り返した彼の運命は壮絶で、伊藤英明が熱演しています。

美男剣士と言われる沖田総司を演じるのはHey! Say! JUMPの山田涼介さん。

新選組のメンバーほか、骨太な男らしさをアピールする男くさい世界の中、山田さん演じる沖田総司が登場すると、その場の空気が浄化されるよう~。

キラキラの瞳で「土方さん」と言ったかと思うと鋭い眼差しで立ち回りを演じ、アイドルらしさを封印せず、逆にうまく利用して、みんなが可愛がる沖田総司として映画の中に生きていました。

【土方の恋愛を上品に描く】

佐幕 VS 倒幕の闘いだけでなく、土方の恋愛も描いており、その相手・お雪を演じるのは柴咲コウさんです。

二人の出会い、恋愛への発展などすごく自然で、土方にとって唯一心が安らぐ時間なんだな~というのが二人のシーンを見ていてよくわかり、お雪さんの好サポートは好感度大。

二人の恋愛の描き方の匙加減がちょうどよくて、血の気の多い男たちのバトルの中のホッとする時間になっていたと思います。

登場人物は多いのですが、新選組とそこに深くかかわる人物さえ覚えておけば、わかりにくい話しではないので楽しめるはず!

エンタメ時代劇として、華やかでスリリングな本作。ぜひ劇場へ、新選組に会いに行っていただきたいです!

執筆:斎藤 香(c)Pouch

燃えよ剣
(2021年10月15日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督&脚本:原田眞人
原作:司馬遼太郎「燃えよ剣」(新潮文庫)
出演:岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平、山田涼介、伊藤英明ほか
© 2021 「燃えよ剣」製作委員会