【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは『銀魂2 掟は破るためにこそある』(2018年8月17日公開)です。こちら公開初日に映画館で鑑賞して来ました!

本作は、空知英秋の同名原作の中から「真選組動乱篇」と「将軍接待篇」を合体させたもの。原作は未読で、前作の『銀魂』は見ているというハンパな私ですが「原作を知らない人でも楽しめるかどうか」の視点で本音レビューしたいと思います。では物語から。

【物語】

舞台は幕末。かぶき町で暮らす、万事屋の銀時(小栗旬)、新八(菅田将暉)、神楽(橋本環奈)は、家賃が払えないためキャバクラでバイトすることに。そこに客として現れたのは、警察組織の頂点・松平片栗虎(堤真一)と将軍・徳川茂茂(勝地涼)。絶対に失敗できない環境で、キャバ嬢として奮闘する銀さんと新八の行方はいかに。

一方真選組では、局長の近藤勲(中村勘九郎)の暗殺計画が水面下で進んでいました。そんな真選組の大ピンチにもかかわらず、いつも厳しい鬼の副長こと土方十四郎(柳楽優弥)は、ヘタレのアニオタな性格になり、大暴走の結果、真選組をクビになってしまうのです。

【冒頭から畳み掛けるギャグ攻撃!】

前作がヒットしたのに、日本アカデミー賞にスルーされた小栗旬の愚痴から物語は始まります。そんなプロローグで笑いのツボを押さえられ「貧乏過ぎてバイトせにゃ生きていけん!」というわりに能天気な銀時、新八、神楽のやりとりにクスクス。

キャバクラバイトでは、銀時と新八となぜか桂小太郎(岡田将生)も参戦し、女装感満載のキャバ嬢姿で接待する展開にゲラゲラ。前半、万事屋メンバーのシーンは、ほぼコント。畳み掛けるギャグ攻撃にやられっぱなしでした。

【後半はギャグ封印! イケメン役者の演技にグッとくる】

真選組の近藤勲の暗殺計画が本格化するあたりから、ドラマが加速していきます。伊東鴨太郎(三浦春馬)の企みに気付き、命懸けの闘いを挑む沖田総悟(吉沢亮)。

そして後半、銀時とタイマンで闘う河上万斉(窪田正孝)。この三浦、吉沢、窪田の3大イケメンは、ギャグを封印して終始クールに演じ切り、女子たちをキャーキャー言わせています! そして役者の衣装でもある真選組の制服姿や、万斉のレザースーツ姿は似合う上にかっこいい。女性ファンのための眼福タイムともいえましょう。

【柳楽優弥の大熱演に感服!】

土方十四郎も本来はクール枠の人なのですが、本作では伊東の罠にはまり、マイクロチップを体内に仕込まれて、アニメオタク「トッシー」という人格に支配されます。トッシーになっているときの土方は、アニオタ魂を炸裂させて、エヴァンゲリオン、ワンピース、カメラ小僧、同人誌などのアニメ話が止まらず、別人のように饒舌。

けっこう笑わせてくれるんですが、ときどき土方の本来の人格が顔を出し、「真選組を守ってくれ」と銀時たちに懇願するんです。トッシーに乗っ取られていく土方の苦しみを思うと……泣ける。演じる柳楽優弥さんは、二つの人格を行ったり来たりする大熱演で、役者魂を見せていただきました!

【NGギリギリのパロディも!】

パロディも満載で、某映画のネコバスにそっくりな「アライグマバス」が登場したり、近藤が監禁された列車を銀時たちが追いかける展開では『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の砂漠チェイスをパクったり。でも、アニメ版『銀魂』もけっこうパロディやっているようなので、これが『銀魂』の世界なのかと。「ヤバ~イ」と言いながら笑ってました。

総じて、前作よりもパワーアップして楽しかったのですが、残念だったのは、前半の軽快なテンポが、後半の感動ドラマになると失速してしまうことです。個人的には、伊東の悲しい過去、銀時と万斉の対峙シーンなど、説明セリフが多く、足踏みしていると感じました。前半のテンポのまま、後半も一気に見せきっていれば、傑作になったのに~。あと盛りだくさん過ぎて、銀時の見せ場が少なかったようにも感じましたね。

とはいえ、オモチャ箱をひっくり返したような映画ですから、原作未読でもOK! 福田雄一監督の描く『銀魂』ワールドに気持ちよく乗っちゃってください。

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

銀魂2 掟は破るためにこそある
(2018年8月17日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:福田雄一
出演:小栗旬、菅田将暉、橋本環奈、柳楽優弥、三浦春馬、窪田正孝、吉沢亮、勝地涼、長澤まさみ、岡田将生、夏菜、戸塚純貴、ムロツヨシ、キムラ緑子、佐藤二朗、中村勘九郎、堂本剛、堤真一
©空知英秋/集英社 ©2018映画「銀魂2」製作委員会