【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、岡田准一さん×綾野剛さん共演作『最後まで行く』(2023年5月19日公開)。この作品は2014年に公開された韓国映画『最後まで行く(原題:끝까지 간다 / A HARD DAY)』のリメイクです。試写で鑑賞しましたが、これが最高! まさにノンストップサスペンス映画でしたし、個人的に岡田准一主演作でいちばん面白かったです。では、物語から。

【物語】

刑事・工藤祐司(岡田准一さん)は母親が危篤という連絡を受けて車で病院へ向かっていました。雨で視界の悪い中、工藤の車の前に青年(磯村勇斗さん)が飛び出し、彼を跳ね飛ばしてしまいます……。

青年が絶命したことを確認した工藤は狼狽し、焦って死体を車のトランクに入れて隠すのですが、その一部始終を県警本部の監査官・矢崎貴之(綾野剛さん)が見ていたのです!

【サスペンスの中にぶち込まれる笑いがたまらない!】

とにかく工藤の身に “不都合な出来事” が次々と降りかかり、七転八倒しながら災難をひとつひとつクリアしていくのが面白く、グイグイ引き込まれました!

工藤は死体をトランクに隠したまま病院へ急ぐのですが、母は亡くなってしまいます。

母の死は悲しいけれど、工藤の頭の中は「死体をどうやって処分しよう…」ということでいっぱい。そして彼は「葬儀後の火葬」に目をつけるのです。死体をどうやって運ぶのかは映画を見ていただきたいのですが、必死の形相で行動に移していく工藤が面白すぎる!

サスペンスの合間にちょこちょこコメディ要素があり、それがこの映画をより盛り上げていると思いました。

【岡田准一VS綾野剛の闘いにシビれる!】

本作は警察署内で行われた裏金がカギになっているのですが、工藤と矢崎は裏金問題に関与しており、矢崎が執拗に工藤を追いかけることに絡んでいます。

とにかく矢崎がしつこくて、どんどん狂気じみていくのが怖い。綾野剛さんの攻めた芝居は、まさに狂演!

その矢崎に立ち向かっていく工藤を演じる岡田准一さん。刑事という立場でありながら死体を隠したり、裏金に関わっていたりと、妻(広末涼子)に愛想を尽かされるのも仕方がない男です。

でも、娘を溺愛する子煩悩な一面もあり、ダメ男だけど可愛げがあるんですよ。感情のアップダウンが激しい役どころですが、緩急つけた芝居で工藤を徐々に魅力的に見せていくあたり、さすが岡田准一! アクションシーンでのキレっキレな演技、必見です。

【巧みな構成で謎を紐解いていく】

冒頭の交通事故から始まり、死体隠し、矢崎に追い詰められる工藤など、前半は工藤サイドのエピソードを中心に描かれます。そして後半は矢崎サイド。工藤サイドの裏側が明らかになっていくのです。

矢崎はなぜ、工藤が起こした交通事故を目撃できたのか、轢かれた男は何者なのか。

裏金の真相や黒幕など、謎が紐解かれていく展開はゾクゾクするほど面白く、伏線回収がお見事!

これで終わりかと思ったら、そうではなかった~という二転三転するラストもハラハラ度MAXですよ。

本作を監督したのは、Pouchでも紹介した横浜流星主演映画『ヴィレッジ』の藤井道人監督。『ヴィレッジ』はシリアスな人間ドラマでしたが、今回はザ・エンタテインメント! 藤井監督の演出力、そのバリエーションの豊かさに驚かされました!

そろそろ梅雨入りしそうですが、蒸し暑さも雨もぶっ飛ばす快作『最後まで行く』、ぜひ劇場でご覧ください!

執筆:斎藤 香(c)Pouch

『最後まで行く』
(2023年5月19日より、全国ロードショー)
監督:藤井道人
出演:岡田准一 綾野剛 広末涼子 磯村勇斗 駿河太郎 山中崇 黒羽麻璃央 駒木根隆介 山田真歩 清水くるみ 杉本哲太/柄本明