【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは人気シリーズのラストを飾る『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(2021年6月4日公開)です。

『るろうに剣心 最終章 The Final』のあとに『The Beginig』。終わりのあとに始まりを描く意味とは?

では、物語からいってみましょう。

【物語】

幕末、桂小五郎(高橋一生)のもと、緋村剣心(佐藤健)は、人斬り抜刀斎として暗躍していました。ある日、剣心は、自分を襲ってきた者を一網打尽にする姿を、女性に見られてしまいます。

彼女は雪代巴(有村架純)。目撃されてしまったことに加え、彼女は帰る家のない女性だったため、剣心は側に置くことにします。

お互いに次第に心を開き、剣心を気遣う優しい巴に、彼は深い愛情を抱き始め、結婚を決意。しかし、思いがけない真実が剣心の心を揺さぶるのです。

【人斬り抜刀斎の情け容赦ない斬りっぷり!】

とにかく冒頭から剣心が血の雨を降らせます。

ずっと人を殺さずに戦うことを貫いていた剣心ですが、本作は、剣心の過去、人斬り抜刀斎時代の物語ですから、それはもうすごい斬りっぷり。

ほぼ瞬殺、自分は1ミリも斬られず……と思ったら、ある若い幕臣(窪田正孝)は斬っても斬っても立ち向かってくるのです。そして最後に剣心の左の頬を斬りつけて絶命。

「窪田正孝、もう出番終わり?」と驚きましたが、このシーンがのちに深い意味を持つことになるのです。が、しかし、これ以上はネタバレになるので映画館で観ていただきたい!

【剣心と巴のラブストーリー】

巴が現れてから、剣心は少しずつ変わっていきます。ギラギラの人斬り抜刀斎から、少し優しい眼差しを見せるように。その目線の先にあるのは巴なんです。

彼女と出会うまでの彼は、守るものなどなかったはず。倒幕のために戦う戦士だったのですが、その思いはそのままに、もうひとつ生きがいを見つけたような。

ふたりが仲睦まじく暮らす姿は微笑ましく、剣心にもこんな時代があったんだなあとしみじみ。また演じる佐藤健と有村架純が美しくて、2ショットを観ているだけで眼福……。

【剣心と巴の幸せは永遠じゃなかった】

ここで思い出されるのは、前作『るろうに剣心 最終章 The Final』で描かれた巴の末路。巴はなぜ死んだのか、何を守ろうとしたのかということの答えが後半に描かれています。

実は巴には剣心に明かしていない秘密があったのですが、それらがすべて明らかになったときに、彼女の身が引き裂かれるような思いや、巴の真実を知った剣心の苦しみが胸に迫ってきて、涙腺が緩んでしまいました。

アクションアクションで押し切った前作とは打って変わって、巴と剣心の愛情物語が切なく、前作が動ならば本作は静。まさにふたつでひとつの物語になっているのです。

【『るろうに剣心』を最初から見直したくなる!】

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』を観ると、このシリーズを最初から見直したくなります。

剣心が愛する人とこれ以上ないほどに悲しいお別れをしたあと、彼がどうやって立ち直り、生き抜いていったのかをもう一度確かめたくなるのです。

本作の悲恋は壮絶で、だからこそ、剣心のその後の物語を観ながら、剣心と一緒に気持ちをあげていきたくなるんです。

悲しみにくれる剣心が、薫(武井咲)や仲間たちに出会い、数々の戦いを仲間とともに乗り越え、生きる活力を取り戻していき、巴との悲恋が思い出に変わる。「剣心、乗り越えたんだなあ」と思いたくなるんですよ。

全5作となる『るろうに剣心』シリーズ。佐藤健さんは約10年間、ほかにもさまざまな作品に出演してきましたが、常に剣心を心のどこかに止めてきたのではないでしょうか。

本作を観た後、いつも最高の緋村剣心を見せてくれてありがとうございました&お疲れ様でした!という気持ちになりました。

みなさんもぜひ映画館で剣心と巴のラブストーリーを観て、最後の剣心を目に焼き付けてください。

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

るろうに剣心 最終章 The Beginning
(2021年6月4日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
出演:佐藤健 武井 咲 新田真剣佑 青木崇高 蒼井 優 伊勢谷友介 土屋太鳳 / 三浦涼介 音尾琢真 鶴見辰吾 中原丈雄 /北村一輝 有村架純 江口洋介
監督:大友啓史
© 和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会