【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアップするのは映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』(2023年10月13日公開)です。2016年に放送されたドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ)が映画化。
岡田将生さん、松坂桃李さん、柳楽優弥さんなどドラマのレギュラーメンバーが勢ぞろいし、人生の岐路に立たされたゆとり世代の人生を描いて再び大爆笑させてくれます。では、物語から。
【物語】
“野心がない” “競争意識がない” “協調性がない” と言われたゆとり世代の坂間正和(岡田将生さん)、山路一豊(松坂桃李さん)、道上まりぶ(柳楽優弥さん)。正和は実家の酒蔵が大ピンチ。
いっぽうの山路は相変わらず恋愛に縁遠く童貞のまま、まりぶは中国での事業に失敗して帰国。
冴えない毎日を送っていた彼らが、こんどはZ世代の若者に困惑。
日本酒をおろしていた居酒屋が韓国居酒屋になったり、世の中のグローバル化が進んだり、時代の変化についていけない3人はなんとか乗り越えようとするのですが……。
【 “ゆとり世代” の崖っぷち】
ドラマ『ゆとりですがなにか』が大好きだった私は映画ってどうなの、と心配だったのですが、期待を大きく上回る面白さでした!
何より、ドラマが放映されていた2016年からから時代が大きく変化していることを物語に落とし込んでいるのが良かったです。
正和は実家の酒蔵を継ぎ、以前勤めていた会社の店に酒を卸していましたが、本社が韓国企業に買収され「マッコリ作るか、ノンアルの酒を作るか?」という選択を迫られます。
中国から帰国したまりぶは正和の酒作りを手伝うことになるけれど、裏でこっそり暴露系Youtuberに!
山路だけが相変わらず小学校の先生で女性経験ゼロのまま。婚活はするけど前途多難!
と、あれから登場人物たちが年を重ねているのがちゃんとわかるんですよ。
時代のスピードや変化に必死に食らいつこうとするものの、ジタバタしっぱなしの3人がとてもいいんです。
【安藤サクラが働くお母さんのストレスを体現!】
女性陣もいい味を出していて、特筆すべきはに正和の妻の茜を演じた安藤サクラさん!
子どもの世話をしながら酒屋の経理担当として働いているのですが、とにかく毎日忙しすぎてかなりお疲れ気味。
子どもを預けたくて市役所に相談いったものの、うまく話が進まないと、なぜか「夫とセックスレスなんです!」と叫んでしまうくらいストレスMAX!
『BAD LANDS バッド・ランズ』の詐欺師のネリとは180度違うキャラクターですが、さすが安藤サクラ! 彼女のコメディエンヌぶりを堪能できますよ。
【なんでインターナショナル?】
元は松坂桃李さんが脚本の宮藤官九郎さんに、
「映画『ハング・オーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』みたいな作品をゆとりの3人でできないですかね?」
と提案したのが、本作の発端。
正和の不倫疑惑につながるエピソードが『ハングオーバー!』的なエピソードで、これをきっかけに茜との夫婦関係に変化が訪れるのです。
タイトルに「インターナショナル」とついているのは、正和がいた会社が韓国企業に買収されたり、後半に出てくる外国人シェアハウスのエピソードなど、日本のフツーの生活にグローバルな波が来ているよね〜というメッセージも含まれているからかなと思いました。
3人の大騒動の中に社会問題などを含んでいる本作ですが、説教くささはゼロ。誰も傷つかないし、不幸にならない。
やっぱりクドカン作品はおもしろいし温かいし上手いなあと思いました。
執筆:斎藤 香(c)pouch
『ゆとりですがなにか インターナショナル』
(2023年10月13日より全国ロードショー)
脚本:宮藤官九郎
監督:水田伸生
出演:岡田将生 松坂桃李 柳楽優弥 安藤サクラ 仲野太賀 吉岡里帆 島崎遥香 / 木南晴夏 上白石萌歌 吉原光夫 / 中田喜子 吉田鋼太郎
(C)2023「ゆとりですがなにか」製作委員会