Pouch[ポーチ]

A24新作『僕らの世界が交わるまで』を観て思い出したこと💭親子という関係について

2024年1月18日


距離が近いようで遠く、遠いようで近い、親子という関係。ときには距離感を間違えて、エゴの押し付け合いをしてしまうこともあります。

2024年1月19日公開の新作映画『僕らの世界が交わるまで』にも、そんな親子が出てきます。

私は彼らを見ているうちに、「このふたりは、いつかの私と母に似ている」と既視感を覚えたんです……。

【あらすじ】

母子向けDVシェルターを経営しながら、社会奉仕に身を捧げている母・エヴリン。

その息子・ジギーの頭の中は、フォロワーのことでいっぱい! 社会問題にはまるで関心がなく、自作の曲をネットで配信しては、投げ銭を稼ぐ日々を送っていました。

お互いのことが理解できず、反発を繰り返すふたり。そんなある日のこと、エヴリンとジギーはそれぞれ「自分にとっての理想の相手」と巡り会うのです。

【キャストも製作陣も豪華すぎじゃ!?】

ヒット作を続々生み出し続ける「A24」による本作。

エヴリンを演じるのは、『アリスのままで』でアカデミー主演女優賞を受賞したジュリアン・ムーアさん。ジギーを演じるのは、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のマイク役でおなじみ、フィン・ウォルフハードさんです。

監督・脚本を務めたのは、『ゾンビランド』『ソーシャルネットワーク』などで俳優として活躍しているジェシー・アイゼンバーグさん。製作陣には、『ラ・ラ・ランド』などのヒット作で知られるエマ・ストーンさんも名を連ねています。

期待の新星やベテランが顔をそろえたほかキャストにも注目してみて。

【真逆なようでそっくりな親子】

一見すると正反対にも思える、エヴリンとジギー。ですが、本当はそっくり!

アプローチは違えど、誰かの人生に関わろうしています。自我が強くて自分が見たいように世界を見ているところも、それによって相手の意図を読み違えるところもよく似てる。

遠くにいるように感じられても、実は「背中合わせに立っている」だけなのかもしれません。

【迷走するふたりがたどり着く先は?】

似たもの同士のふたりは、時を同じくして理想の相手に出会います。

エヴリンが出会ったのは、母親と一緒にDVシェルターに入所してきた高校生・カイル。心優しく勤勉なカイルに「理想の息子像」をみたエヴリンは、いつしか常軌を逸して肩入れするようになっていきます。

ジギーが出会ったのは、政治や世界情勢についてイキイキと語る聡明な同級生・ライラ。彼女の硬派な会話には全然ついていけないけれど、それと反比例するかのように憧れを募らせます。

ふたりの共通点は「ないものねだり」。

誰かを「理想の相手」と思い込み、自分勝手に理想を押しつけて、迷走して空回り……。その結末にはいったいなにが待ち受けているのか、奇跡のようにふたりの世界が交わる瞬間を見届けてください。

【あのときの記憶がよみがえるナ…】

親は子に「理想」を見て、子は親に「自分の生き方を理解して欲しい」と願うもの。エヴリンとジギーも、こうした理由からボタンを掛け違えてしまったのかもしれません。

かつては、私と母のあいだにも似たような摩擦がありました。

お互いに理解したいけど、自分の描く理想や想いが強すぎて、なかなか歩み寄れなかった。相手の発言がことごとく癇に障って、「そうじゃない!」と否定してしまう。そしてそのあと、激しい自己嫌悪に陥ったっけ……。

今ではとても仲がいいけれど、エヴリンとジギーを見て当時のなんともいえない歯がゆさを思い出しました。

デジャヴのようにほろ苦く、同時に心温まる作品です。今度は、お母さんを誘って観に行こうかな。

映画『僕らの世界が交わるまで』
監督・脚本:ジェシー・アイゼンバーグ
製作:エマ・ストーン、デイヴ・マッカリー、アリ・ハーティング
製作&北米配給:A24
出演:ジュリアン・ムーア、フィン・ウォルフハード、アリーシャ・ボー、ジェイ・O・サンダース、ビリー・ブリック、エレオノール・ヘンドリックス 他

執筆:田端あんじ (c)Pouch
Photo:© 2022 SAVING THE WORLD LLC. All Rights Reserved.

モバイルバージョンを終了