【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、ディズニー&ピクサーの最新作『インサイド・ヘッド2』(2024年8月1日公開)です。ライリーという少女の感情(ヨロコビ・カナシミ・イカリ・ムカムカ・ビビリ)に新たな仲間が加わる本作。
試写で観ましたが、前作『インサイド・ヘッド』超えの素晴らしさ! というわけでさっそく物語からいってみましょう。
【物語】
高校進学を控えたライリーは、アイスホッケー仲間の親友ふたりから「同じ高校には行けないの」と打ち明けられ大ショック。平気なふりをしているけど、心の中に「新しい学校でひとりぼっちになるかも」と不安になります。
そんな彼女の頭の中に新たに生まれた感情が「シンパイ・ハズカシ・イイナー・ダルイ」。シンパイは「ライリーは成長したの。ヨロコビたちは必要ないのよ」と言って、ヨロコビたちのポジションを横取りしてしまうのです。
【感情は成長とともに複雑になっていく】
前作のライリーは11歳。「ヨロコビ」「カナシミ」などのシンプルな感情しかなかったので、映画は主にライリーの頭の中のヨロコビたちが、ライリーの性格形成をうまく進めようと奮闘する姿を中心に描いていました。
でも本作のライリーは成長し、感情も複雑になり、人間関係も広がっていくので、前作で家族中心に描かれていたライリーの人間関係は外に向かいます。アイスホッケーの合宿に参加することで、ホッケーチームの先輩たちとのつながりも生まれますが、まだまだコミュニケーション能力が足りないし、新しい環境に不安もあるわけ。
そこで存在感を示してくるのが、新しいキャラの「シンパイ」です!
【シンパイが暴走して背伸びしてしまう!】
11歳くらいのときは喜怒哀楽もはっきりしていて、できるだけヨロコビの感情を増やして楽しい毎日を送りたいと思っていたでしょう。でも、10代には思春期の壁が!
意味もなくモヤモヤしたり、友人関係で悩んだり、親にも相談できないことも生まれるわけです。
ライリーは、アイスホッケーの合宿で別々の高校に行くことになった友だちよりも、憧れのホッケー選手である先輩に気に入られようと必死になります。
シンパイはライリーが高校に進学してもひとりぼっちにならないように、とさまざまな手を打ってくるのです。シンパイの役割は “まだ見えてないものからライリーを守り、未来を考えて計画を立てること”。
でも何が起こるかわからない未来をコントロールすることは難しい。相手の気持ちを考えたり、状況をみたりする必要があるのに、そういう感情はまだ育っていないから、大暴走してしまうのです!
【成長とともに心がバランスを求めてくる?】
本作は前作よりもライリーの感情の変化が刺さるなあと思いました。友だちとの関係、先輩との上下関係など、大人社会の人間関係へのプロローグのような側面もありましたから。ゆえに共感度は前作よりも高いです。
本作ではシンパイが暴走して、ライリーはアイスホッケーの試合でとんでもないことになるのですが、やっぱり心を安定させるにはさまざまな感情のバランスが必要なんだなと。
シンパイは「ヨロコビやカナシミなんていらな〜い」と追い出すけど、みんながいるからライリーは幸せでいられるんです。何か一つ欠けてもダメ。たとえその感情がネガティブなものでも、ネガティブから学ぶこともありますからね!
【シンパイ役の多部未華子さんが大熱演!】
試写は日本語吹替版で見たのですが、声の出演者の中で抜群だったのが、シンパイ役の多部未華子さん。暴走するシンパイをコミカルにハイテンションで演じ切りました。芝居が上手い俳優は声だけの芝居も上手いんですね!
前作で竹内結子さんが演じていたヨロコビは、声優の小清水亜美さんが担当。しっかり受け継いで、責任感の強い明るいヨロコビを魅力的に演じています。そしてカナシミの声は大竹しのぶさんが続投。すぐ泣いちゃうカナシミがチャーミングなのは大竹さんの声の演技あってこそ、です!
楽しくて可愛いだけでなく、共感度が高くしっかり感動させてくれる本作。大傑作と言っても過言ではないでしょう。
執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
『インサイド・ヘッド2』
(2024年8月1日より全国ロードショー)
監督:ケルシー・マン
日本語版声優:大竹しのぶ (カナシミ), 多部未華子 (シンパイ), 横溝菜帆(ライリー), 村上(マヂカルラブリー/ハズカシ),小清水亜美 (ヨロコビ),
小松由佳 (ムカムカ), 落合弘治 (ビビリ),浦山迅 (イカリ) ,花澤香菜 (イイナー), 坂本真綾 (ダリィ)
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン