
【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、元日向坂46のメンバー齊藤京子さんの主演作『恋愛裁判』(2026年1月23日公開)。恋愛禁止ルールを破ったアイドルが裁判にかけられるという衝撃的な内容。第78回カンヌ国際映画祭カンヌプレミア部門正式出品作で、試写で鑑賞しましたが、とてもよかった!
それでは、物語から。
【物語】
アイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」でセンターを務める山岡真衣(齊藤京子さん)。
ある日、大道芸人として活動をする中学時代の同級生・間山敬(倉悠貴さん)と再会して恋に落ちます。それが事務所にバレてしまい、グループを抜けることに。加えて、契約時の恋愛禁止の条項に違反すると裁判を起こされてしまうのです。
【最強のアイドルに必要なこと】
華やかなアイドル業の裏側を見せた作品はこれまでもありましたが、アイドルが恋愛をして事務所に訴えられる映画はなかったかもしれません。
ことの発端は「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバー、菜々香(仲村悠菜さん)のデート写真が流出してスキャンダルに発展したことでした。その後、彼女の熱狂的なファンがストーカー化し菜々香を恐怖に陥れるのです。握手会に毎回足を運び、彼女のためにCDを50枚以上購入するほど菜々香に情熱を注いでいたからこそ、男がいるとわかった途端「裏切りやがって!」と、憎しみを爆発させたのでしょう。
しかしこの一件で、菜々香はアイドルでいることの不自由さよりも、アイドル人生を全うすることを選ぶのです。
筆者はかつてアイドル雑誌の仕事をしていたのですが、菜々香のようにメンタル最強な子は確実に地位を固めていたような気がします。菜々香は自己顕示欲が誰よりも強く、芸能人になるために生まれてきたような子なのです。
【迷走するヒロインの真衣】
真衣はスキャンダルの渦中にいた菜々香を支えていましたが、同時にアイドルとして少し立ち止まっていた時期でした。そんなときに間山に出会ったのです。大道芸人の彼は基本セルフプロデュース。自分の力でエンタテインメントを作り上げています。
そのいっぽうでアイドルである真衣は何もかもお膳立てをされた中で活動しています。もしかしたらそんな間山が彼女の目には眩しく映ったのかも。
自分の売りが何かわからなくなっているし、菜々香の件でグループの人気も厳しくなっていたころ。後先考えず、衝動的に間山のもとに走ったように見えました。
その後、彼女は「恋愛禁止の契約を破った、契約違反である」と事務所に訴えられますが、この裁判で彼女は大きく変化します。賠償金のことで間山ともめたり、貧しい暮らしを乗り越えなくてはならなかったり、活動を継続しているメンバーが華やかなステージで輝く姿を見て泣いたり……。もしかしたら後悔しているのかな、とも思いましたよ。
【裁判が彼女を目覚めさせた】
真衣は裁判を通して「恋愛禁止が契約に入っていること」に違和感を覚えはじめます。恋愛は感情が動いてはじまること、「人の心まで契約で縛るのか」と。彼女はそこを争点として捉えるようになるのです。
全てがセッティングされた世界で歌って踊ってきたアイドルの山岡真衣は自分の人生と向き合い、プライドと向き合い、逆境であることを理解した上である大きな決断をします。
選んだ道は茨の道。でも困難な道を選ぶほど、真衣は強い女性になったんだと驚きました。
【アイドルの事務所から断られた!?】
ちなみに深田晃司監督はこの映画のヒロインを選ぶときにオーディションの案内を送ったそうですが、アイドルが所属する事務所の多くに断られたそうです。
アイドル業界に問題提起をする内容だからかな……もうそこからして「闇が深いな〜」と思いましたね。
そんな中、齊藤京子さんは脚本を一読してオーディションを受けたいと積極的だったそう。その裏話を知ったとき、齊藤さんの覚悟と真衣のキャラクターが重なりました。まさにはハマり役!
タイトルは『恋愛裁判』ですが、本作は裁判映画ではなく、アイドルビジネスの裏側とそこで生きるアイドルたちの物語であり、ひとりのアイドルの成長物語でもあります。本当に見応え大ありでしたよ。裁判の行方、ぜひ劇場でたしかめてください。
執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:©2025「恋愛裁判」製作委員会
『恋愛裁判』
2026年1月23日(金)より全国ロードショー
企画・脚本・監督:深田晃司
共同脚本:三谷伸太朗
出演:齊藤京子 倉悠貴
仲村悠菜 小川未祐 今村美月 桜ひなの
唐田えりか 津田健次郎