Pouchで何度も取り上げられてきたNYのオシャレなおばあちゃんたちが登場する人気ブログ「アドバンスト・スタイル」。現在、映画化したドキュメンタリー『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』が絶賛公開中です。
2008年に始まったブログは、NYの街を堂々と歩く60歳以上のオシャレなおばあちゃんたちをクローズアップ。瞬く間に人気ブログになり、2012年には写真集を発売(2013年翻訳本が日本発売)、2015年3月には東京・西武渋谷店でスナップ写真展を開催と、おしゃれおばあちゃんたちの人気は日本でも急上昇。満を持しての映画公開となったわけです。
【写真家と監督が4年かけて作り上げたドキュメンタリー】
「アドバンスト・スタイル」のブログの発信者は米・サンディエゴ出身のアリ・セス・コーエン。彼が60歳以上の高齢女性に興味を持ち、カメラを向けたのには理由があります。
「僕は幼いときから祖母と大の仲良しで、彼女にはいつも“創造的なことをするならNYへ行くべきだ”と言われていました。祖母が他界したあと、NYへ行くと、信じられないほど着飾り、生命力に溢れたシニアの女性に刺激を受けました。それまで写真を撮ったことなかったのですが、ルームメイトのカメラを借りて、彼女たちを撮影し、インタビューを始めたのです」
そして、ブルックリンで映画『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』の監督であるリナ・プリオプリテと出会ったのです。
当時、彼女はアリ行きつけのコーヒーショップで働いていました。リナはオシャレでエネルギッシュ。アリは「友だちになりたくて声をかけたんだ」と。これが二人の共同作業の始まりです。
「アドバンスト・スタイル」のブログの相談をしたりして、友情を育んできた二人。やがてリナはビデオ撮影家としてファッションの仕事をするようになり、アリのブログに登場する被写体の女性たちを撮影したいと言ってきたそうです。これが映画『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』のスタートだったのです。
【60歳以上のマダムたちの経験から生まれる物語】
60歳以上でも若作りに躍起になることをせず、ありのままの自分でオシャレを楽しむ姿を映しだした『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』の女性たち。でもそこには長い時間に育まれた感性、経験、生きざまが結集していることが、映画を見ているとわかります。アドバンスト = 上級、ただのオシャレ好きではないのです。
出版社に勤務していたジョイス・カルバティ、帽子デザイナーのデブラ・ラポポート、オフ・ブロードウェイのダンサーだったジャッキー・ダジャー・ムルドッグなど自立した女性たちが多く、自分で人生を切り開いてきた自信がファッションに強さを与えています。いずれも創造力が豊かな女性ばかり。流行には乗らず、我が道をゆく生き方が、彼女たちのファッションの源泉となっているのです。
【ファッションを自分で創りだす力を持とう!】
若い女性はどうしても流行に振り回されがち。「知らないの?」「持ってないの?」と言われると「後れを取っている」と焦ってしまう……。しかし『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』に登場している女性たちを見てください。流行ものなんて「フン!」てな感じですよ。なぜなら彼女たちは自分たちの服、アクセサリー、小物が一番素敵だと思っているからです。なんせトイレットペーパーの芯でブレスレット作ったり、自分の髪の毛でつけまつげ作ったりする強者ばかりですからね。
また、彼女たちの背景には数々のドラマがあり、それは決して楽しいことばかりじゃありません。年老いてからの苦しみなど本音も垣間見られ、そのエピソードに胸をギュっと掴まれることも……。
60歳以上のおばあちゃんたちの経験とセンスに裏打ちされたエネルギーが熱い『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』。
ちなみにブログには次々と新たなオシャレおばあちゃんが登場していますから、映画とブログ、ぜひ一緒にお楽しみください。
執筆=斎藤 香 (C) Pouch
『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』
2015年5月29日より、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ新宿ほか全国順次ロードショー
監督:リナ・プリオプリテ
製作:アリ・セス・コーエン
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