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【本音レビュー】映画『100日間生きたワニ』は新キャラのカエルがキーパーソンに / 仲間を失った喪失感からの再生にジーンときます

2021年7月14日


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのはアニメーション映画『100日間生きたワニ』(2021年7月9日公開)です。

原作はきくちゆうき著「100日後に死ぬワニ」で、SNSで連載されていた4コマ漫画。すごく話題になったので、ご存じの方は多いはず。

この原作を『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督とふくだみゆき監督が共同監督で映画化しました。声の出演は、神木隆之介、中村倫也、木村昴、新木優子、ファーストサマーウイカ、山田裕貴など、超豪華! 

では物語からいってみましょう。

【物語】

仲間たちが集まったお花見の席にワニ(声:神木隆之介)はいません。心配したネズミ(声:中村倫也)は迎えに行く途中、桜の写真を撮影して仲間に送りました。ワニの携帯にも届いていましたが、携帯は道に転がり、その画面は割れていました。

100日前。ワニはネズミと仲良しで、入院中の彼を見舞ったり、家で一緒にゲームをしたりして過ごしていました。バイト先のカフェの先輩(声:新木優子)に恋したり、仲間とつるんで遊んだり、楽しい日々を過ごしていましたが、ある日、彼は突然いなくなってしまったのです。その後、彼らの町にカエル(声:山田裕貴)が引っ越してきたのですが……。

【生きることを教えてくれるアニメ作品】

あまり見たことのないタイプのアニメーション作品で、とても切ない気持ちにさせられますがや「生きる」ということについて、改めて振り返るきっかけをくれる作品でした。

ワニがいなくなるまでの100日間を描いた本作は、大きな事件がなく、前半は、ワニと仲間たちの日常を映し出しています。

そこにはネズミという親友がいて、一緒に遊んで、他愛もないことで笑って、本当に平凡そのものなのですが、そんな平凡な毎日が、ワニがいなくなることで、突然終わってしまいます。

【ズンズン仲間入りしようとする新キャラ・カエルの気持ち】

いつも一緒にいたワニがいなくなり、仲間たちの心にポッカリ穴が開いてしまうのですが、そこにやってきたのはカエルです!

町に知り合いがいないカエルは、ネズミやカフェの仲間たちに積極的にアプローチしてきます。ネズミには「ラーメン食べに行こう」「ツーリングしよう」と誘い、カフェのバイトちゃんに好意をぶつけてみたり。

正直、空気が読めないおしゃべりなカエルに、最初はかなりうっとおしさを感じました。「カエルが仲間たちの関係性を壊していくんじゃないか」と危機すら感じてしまって……。でも全然違ったんです。

カエルにも失ったものがありました。でもカエルは、ネズミたちのように喪失感の中で生きるのではなく、失ったものに変わる何かを必死に求めていたのです。それはカエルが、ちゃんと生きなくちゃと思っていたからではないかと。

やり方が強引過ぎたとはいえ、カエルの気持ちを知ったとき、がむしゃらに生きようとしているカエルがけなげで感動してしまいました。

【声のキャストの中では山田裕貴が抜群!】

豪華な声のキャストの中でも秀逸だったのは、カエルの声を担当した山田裕貴さん。

正直、カエルが出てくるまで、物語はそれほど盛り上がるわけではないのですが、後半登場するアグレッシブなカエルが、思い切り観客の心をザワザワさせる役割を担っており、山田さんは見事に素晴らしい演技で全うしました!

山田さんは映画『東京リベンジャーズ』もすごく良かったので、2021年、大注目ですね!

本作は、紙芝居みたいなシンプルな作風で、描写がどんどん細かく精巧になっていく最近のアニメの逆を行っていますが、個人的にはギラギラしていない分、目に優しくて観やすかったですし、上映時間も63分と短いので、サクっと鑑賞できて良いですよ。

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

100日間生きたワニ
(2021年7月9日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
原作:きくちゆうき「100日後に死ぬワニ」
監督・脚本:上田慎一郎、ふくだみゆき
声の出演:神木隆之介 中村倫也 木村昴 新木優子 / ファーストサマーウイカ 清水くるみ Kaito 池谷のぶえ 杉田智和 / 山田裕貴
(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会

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