2022年3月21日に最終話を迎えたNHK総合よるドラ『恋せぬふたり』。
最終話では「家族(仮)」として共に暮らすことになった高橋(高橋一生さん)と咲子(岸井ゆきのさん)が、自分たちにとってベターではなく「ベスト」な家族のカタチを見つけるまでが描かれました。
世の中にはびこる「こうあるべき」という価値観や、「普通とはなにか」という課題に向き合ってきた本作の中で、存在感を輝かせていたのは “カズくん” というキャラクター。
異なる価値観を持つ者同士の「相互理解」を深めるうえで、欠かせない存在でもあったんです。
【最終話あらすじ】
幼い頃から夢見てきた「野菜を育てる仕事」に就くチャンスに恵まれた高橋。けれど、転職するには住み慣れた家を離れ、「家族(仮)」の咲子と別々に暮らさねばなりません。
高橋は「今の生活を手放したくない」と仕事を諦める決意をしますが、咲子はやりたい仕事を諦めてほしくない……。
ふたりにとってベストな選択をしたかった咲子は「家族(仮)として別々に暮らすこと」を提案!
「私たちは別々に暮らしてたって、ひとりじゃないし、家族じゃなくなったりしません」
「なんにも決めつけなくて良くないですか。私たちも、家族も、ぜんぶ “カッコ仮” で」
「言葉にするとそれに縛られちゃうんですよ。周りに決められた普通に縛られたくない、私たちでさえも」
と語りかけ、誰よりも「家」や「家族」に縛られてきたのは高橋を、その呪縛から解き放ったのでした。
【私の幸せを決めるのは私だけ】
言葉が持つ固定概念を軽やかに取っ払い、自分たちにとって最高の家族のカタチへと着地したふたり。
ラストシーンで咲子が口にするセリフ、
「私の人生に、何か言っていいのは私だけ。私の幸せを決めるのは私だけ」
はSNSでも話題になりました。またツイッターハッシュタグ「#恋せぬふたり」には、
「最初は指南役だった高橋が最後は咲子に導かれて外に一歩踏み出す。なんて素敵な家族の形」
「『恋愛抜きで家族になれますよ』というテーマから最終話では更にもう一段踏み込んで『一緒に暮らさなくても家族ですよ』という結論に着地するの素直にすげーな!と思った」
などという意見が続々。最終話が放送されて数日経った今でも、たくさんの感想が寄せられています。
【カズくんという存在が遺した功績】
そして本作を語る上で欠かせないのが、咲子の元カレ “カズくん” の存在。
初登場時には、
・恋愛はするもの=なんでも男女の恋愛に結びつけたがる
・そのためアロマンティック・アセクシュアル(※他者に恋愛感情や性的興味を抱かない指向)の高橋&咲子を全く理解できない
といった自分の価値観を隠そうともせず、見てるこちらイライラさせました(笑)。
しかし、
・底抜けに明るくて優しい
・大好きな咲子を理解したいがゆえに学び、でも学びだけでは埋められない溝を知り、それでも恋をしないふたりのことをわかろうとする
・素直でまっすぐな性格ゆえに「学び」の吸収力がハンパない
・最終的にふたりの1番の理解者になる
といった側面が見えてきたことで、カズくんのことが大好きになりました……!
カズくんというキャラクターは、マジョリティにとっては自分自身を投影しやすく、マイノリティにとっては心強い味方であり希望で、「相互理解」を生む上でとても大切な存在のように思えました。
自分の中にない価値観に出会うと、戸惑うし、拒絶してしまうこともしばしば。だからこそ、カズくんのような人がいてくれるだけで、救われる思いがします。
カズくんは間違いなく本作のキーパーソン! 高橋と咲子にとっても “もうひとりの「家族(仮)」” のような存在なのではないでしょうか。
彼らの結末を見届けられる最終話はNHKプラスで見逃し配信中。3月28日23時14分まで視聴可能です!
参照元:NHK、NHKプラス、Twitterハッシュタグ #恋せぬふたり
執筆:田端あんじ (c)Pouch
イラスト:稲葉翔子