「イケメン弁護士」さんに男女間についての問題を聞いてみるシリーズの第2回目。
取材に応じて下さるのは、東京都渋谷区円山町に「法律事務所エムグレン」を構える武蔵元(むさし はじめ)先生!
今回は、TwitterやFacebookなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で「名誉棄損」で訴えられる場合について聞いてみました!
男女間だけでなく、同性同士にも通用する内容です。知って損はないですよー!
■ SNS上で悪口を書くことには、ほとんどデメリットしかない!
Q: 前回は「口頭でのケンカで『名誉棄損』として訴えられるかどうか」についてお伺いしましたが、TwitterやFacebookでのケンカの場合はどうなんでしょう? 例えば、一方的に彼氏のことを悪く書いたりとか。「あいつ浮気した!」みたいな。
それも基本的に、前回の名誉棄損が成立する場合(*1)と一緒なんだけど、Twitter上で「私の彼氏、じつはハゲでヅラ被ってる」などの事実を摘示しちゃえば、Twitterだと拡散する可能性が高いでしょ。不特定の誰かに知らされてしまうわけだから、確実に名誉棄損に当たる。
Facebookなどで、自分のニュースフィードに恋人の悪口を書いた場合、名誉棄損が成立するかどうかは「友達」の人数による。公然性を考えた場合、Facebookってみんなだいたい友達にしか見られないように設定しているよね。で、友達が10人しかいなかった場合……公然性の要件を満たすかといえば、たぶん満たすんだよ。
Q: 10人だけでも?
「公然」は、「不特定、または多数人」だからね。10人は多数人ではないけど不特定には当たる。SNS上だと、たとえ「友達」であっても「不特定」になる場合があるんだよ。だから、名誉棄損が成立する可能性は高い。
(*1)民事(法で相手を裁き、お金を請求する)で「名誉棄損」が成立する条件は
1. 公然(不特定、または多数人が知り得る状態)に
2. 事実(*2)を摘示して
3. 相手方の社会的評価を下げること。
これらがそろって初めて、「名誉毀損」というものにあてはまることになる。
(*2)この場合の事実とは、「真実であること」ではなく、「評価が含まれない表現」のことをさす。例えば、「あの人は浮気性だ」と言った場合、「浮気性」は人によってそう思う基準が違う(=評価が含まれる)から事実にはならない。しかし「あの人は浮気をした」は評価が含まれないことなので事実となる。実際に浮気をしておらず虚偽であっても、事実という。
→まとめ1: ネットは「不特定」の人がいっぱい! 個人の悪口を書くメリットなし!
■ 匿名掲示板に書くのもダメ!
あと、特にやっちゃいけないのは掲示板ね。書き込めば一発アウト。
Q:Twitterの場合もFacebookの場合も掲示板の場合も、実名で悪口を書かれたら、ということですか?
そうそう。あ、でもね、どの場合も「その人物」を特定できないとダメ。要は、ネットを見ている誰かが書き込みを読んで、誹謗中傷されている人がドコの誰々で実在する人物だ、というのがちゃんと一致しないとダメってこと。
Q:ハンドルネームだけの存在で、「その人」を特定できない場合は?
誹謗中傷された相手が実在の誰々だと特定できなければ名誉棄損は成立しない。これは、「特定可能性」っていうんだけど、要は実在する誰かとハンドルネームの人が一致しなければ名誉棄損は成立しないんだよ。
ただ、「××(ハンドルネーム)の本名は××で住所は△△でハゲでヅラ被ってて……」とか書くと名誉棄損は成立しちゃうよ。
→まとめ2: ネットでの誹謗中傷は相手が特定できないと名誉棄損は成立しない! あと、この人ハゲとヅラにこだわりすぎ!
■ 偽名でも名誉棄損が成立する場合もある!
例外だけど、ハンドルネームやペンネーム自体に価値がある場合は名誉棄損が成立する。例えば、「シマヅ(記者のこと)」は「シマヅ」というペンネームで仕事をしているわけだから、「シマヅ」自体に価値が生まれる。芸能人が芸名を使っていても名誉棄損が成立しているのと同じ。要は、偽名であっても、それ自体に価値があれば名誉棄損は成立する。
でも、偽名で「仕事」をしているわけではなくて、単に「ネット上ではこの名前を使っていますよ」程度だと名誉棄損は成立しない。
男女間も同じで、基本的には実名を出さないと名誉棄損の成立は不可能。もしくは「相手がドコの誰か」が分かるように書かないと名誉棄損にはならない。
→まとめ3: ハンドルネームで仕事すればネットで悪口書かれても訴えることができる!
■ 名誉棄損にはならないけど、別の案件で訴えられる場合も…!
あと、彼氏の写真を勝手にアップしたりすると肖像権の侵害に当たる場合もある。投稿主がその写真につけたコメントで「この男は、この日、私と会う前に他の女とセ××スしてた。ハゲでヅラ被ってるくせに」とか書くとプライバシーの侵害にもなるし、肖像権の侵害にもなる。だから、勝手に人の写真をアップするのはダメですよ。
→まとめ4: 他人の画像を許可なくネットにアップするのもダメ! あと、やっぱりこの人ハゲとヅラにこだわりすぎ!! あ、この人もしかして(以下名誉毀損になるので省略)
―――本日はありがとうございました。えーと、お金の方は……
気にしなくていいよ。もともと、初回の相談は基本1時間以内で無料だから。2回目以降は、30分税込みで5400円になるけどね(笑)。そんなことより飲みに行こうぜ!!
(……飲みに行こうぜ!? し、仕事はもういいの!?)
えー、とてもためになるお話をしてくださった武蔵元先生。気さくで話しやすい雰囲気をお持ちの方です。このシリーズへの質問はこちら(@Shimazqe)にて募集中です。次回もお楽しみに!
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余談。取材が終わった後、実際に先生と飲みに行ったのですが、詳細を書くと名誉棄損で私が訴えられる可能性が極めて高いので自粛いたします。
企画協力・事後のお酒:武藏 元 – 弁護士ドットコム
取材・執筆・撮影=シマヅ (c) Pouch