2011年3月、福島第一原発事故が起こったあの日。東京で暮らしていた福島県出身の私は、祈るようにテレビ画面を見つめるしかありませんでした。
湧き立つ白い煙が立ち上がる原子炉、そして水素爆発ーーー。誰もが息を飲んで見つめる画面の裏では、事態を収束しようと懸命にもがく人々の姿がありました。
毎週金曜は各配信サイトで観られるオススメ作品を紹介する日。
今週もよく頑張った……週末はおうちでゴロゴロしながら、Netflixドラマ『THE DAYS』を観て、カウチポテトになっちゃお〜!
※本編およびYouTube本予告動画では、地震および津波の描写があります。熟慮したうえでご観賞ください。
【あらすじ】
2011年3月11日、未曽有の大地震が起きたあの日に福島第一原発を襲ったのは、高さ15mの津波。波に飲まれた4つの原子炉は冷却機能を失い、暴走をはじめます。
時間が経つにつれて状況は明らかになり、次々に起こるトラブル。ライフラインが断たれた孤島のような場所で、どんどん悪化していく原子炉と対峙する現場の職員たち。
やがて福島第一原発所長・吉田(役所広司さん)、そして1・2号機当直長・前島(竹野内豊さん)は、苦渋の選択を迫られることになるのです。
【ココが見どころ!】
<その1:ドラマだけど「ドキュメンタリー」のよう>
本作は、あの日あの場に居合わせることになった人々の葛藤、恐怖、重責を、できるかぎり忠実に描くことを命題にしたドラマでありながら、ドキュメンタリーのような作品。
原発事故に現場で対応した吉田所長による『吉田調書』、東電がまとめた『福島原子力事故調査報告書』、ジャーナリスト・門田隆将氏が事故対応に当たった関係者90人のインタビューをもとに執筆した書籍『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫)をもとに制作されています。
事実に基づく話ということもあり、深刻な事態が次々起こるいっぽうで、どこか淡々としている。しかしだからこそ、じわじわと、着実に近づいている「死」を意識せずにはいられない。
ただただ目が離せない、目をそらしてはいけないと感じながら観ました。
<その2:現実を感じさせてくれるリアルな描写>
本作には色んな立場の人間が登場するのですが、年配者は往々にして若い命を守ろうとするのです。
危険な現場に若いやつを行かせるわけにはいかない。彼らには未来がある。だから自分が行くんだ、と話す描写が、とてもリアルに感じられました。
また本作の第4話には、1999年に茨城県で起こった東海村JCO臨界事故にまつわるシーンが出てきます。
被ばくによる事故がいかに悲惨で恐ろしいものなのか。静かに知らしめるあのシーンは、今も脳裏に焼きついて離れません。
<その3:事故はまだ収束していない>
1話あたり46〜66分&全8話で構成された本作。終始重く、苦しく、辛い側面の多いストーリー展開なので、ひょっとしたら途中離脱してしまう人もいるかもしれません。
けれど、本作最大の見どころは「最終話」。あの危機を乗り越えた先に待っていたこと、事故はまだ収束していないことを、まざまざと感じさせる内容となっています。
私は18歳まで福島県に住んでいました。現在は東京在住ですが、家族は福島に住んでいるし、なにより故郷を愛しています。
だから、このような事故が起きてしまったことが悲しくて悔しくてたまらないし、今なお福島原発事故が続いていることを忘れてほしくありません。忘れてはいけないのだと思います。
【できるだけ、多くの人に観てほしい】
福島第一原発で水素爆発が起きた日、私は家族を避難させることに必死でした。様々な憶測が飛び交う中、最悪の事態が起きないことを願いながら。
あの日現場にいた原発職員たちは、福島そして日本中の人々の思いを背負いながら、壊れそうな体をどうにか動かしていたのでしょう。本当は家族といたいだろうに、逃げたくなるほど怖かっただろうにーーー。
そんなふうに想像してしまうから、私は本作を鑑賞するたび、たくさん涙をこぼしてしまうのです。できるだけ多くの人に、この作品が届くことを願います。
■今回紹介した作品
Netflixドラマ『THE DAYS』
2023年6月1日から独占配信中
※カウチポテトとは:ソファや寝椅子でくつろいでポテトチップをかじりながらテレビやビデオを見て過ごすようなライフスタイルのこと。
執筆:田端あんじ (c)Pouch