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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、お待ちかね、ピクサーの最新作『インサイド・ヘッド』(2015年7月18日公開)です。全米では試写のときから高評価! 2015年度のアカデミー賞レースに参戦間違いなしと絶賛されています。

11歳の少女の感情にスポットをあてた本作。ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカという5つの感情が彼女の脳内でせめぎあう物語は、日本映画『脳内ポイズンベリー』と同じ!と言われましたが、あちらはアラサー女子、こちらは11歳の少女。アラサー女子より単純でわかりやすくて、夢あふれる脳内ファンタジーなのです。

【物語】

11歳のライリーは、やさしい両親と友だちに囲まれ毎日ハッピーでした。でもある日、お引越しをすることになり、そこからライリーを取り巻く環境はガラリと変わってしまいます。新しい場所にライリーはまったくなじめず、心のよりどころがなく孤独な毎日……。

いつもライリーを見守ってきた彼女の頭の中の感情たち、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリたちは、ライリーの笑顔を取り戻そうと必死です。しかしライリーの明るさの源であるヨロコビは、ライリーの表情を曇らせてばかりのカナシミのことが理解できず、ある日トラブル勃発。ヨロコビとカナシミはライリーの感情をコントロールする司令塔から飛び出してしまうのです!

【頭と心で起こっていること】

映画『インサイド・ヘッド』誕生のきっかけは、ピート・ドクター監督の11歳の娘さんです。ちょっと前まで、おてんばで想像力豊かな少女だったのに、突然、おとなしく不機嫌な少女になってしまい、ドクター監督は「彼女に何が起こったのか?」と、とまどったそうです。でもそこでひらめいたのです。思春期の子供たちの感情の変化を映画にしようと。

ここからがドクター監督の発想力の素晴らしさ! 監督は感情を擬人化して、なおかつその感情たちをライリーの中で大冒険させることにしたのです。

【感情キャラの関係性が秀逸】

感情キャラはヨロコビ、カナシミ、ビビリ、ムカムカ、イカリ。なるほど~という感じです。ヨロコビは、自分がライリーの幸福の象徴だと思っています。みんなライリーに幸福でいてほしいから、感情の司令塔ではヨロコビがリーダーです。ヨロコビには、なぜライリーの心を沈ませるカナシミが存在するのかわかりません。

ヨロコビとカナシミの関係は、現実にもあるなあと思いますね。超前向きで明るい女性とネガティブで消極的な女性が相容れない感じ。ヨロコビの明るさって場合によっては「空気読めないヤツ」だし、カナシミの暗さは「いつも後ろ向きでどうして?」と思わずにいられません。

でも実は、ヨロコビとカナシミはお互いがいてこそ光り輝くのですよ。カナシミがいるから、ライリーは物事にはマイナスの一面もある、思い通りにならないこともあると知る。そしてそのことを乗り越えた先に光り輝くヨロコビがいるのです。

【テーマパークのようなライリーの脳内】

思春期のライリーが環境の変化についていけなくて混乱しているのは、ヨコロビとカナシミが失踪してしまい、感情の司令塔にビビリとムカムカとイカリしかいなかったからです。怒りモードのライリーが、思いがけない行動に走る様を見ていると「落ち着いてライリー」と声をかけたくなります。

その頃、脳内で迷子になったヨロコビとカナシミは、いろいろなキャラと出会います。このキャラクターや迷い込んだ場所も、ライリーの感情をつかさどるパーツになっていてさすが! 感情を擬人化した上に脳内までディズニーランド化しちゃうのだから、凄すぎです。

ヨロコビとカナシミはわかりあえるのか、ライリーは孤独感や反抗など思春期のモヤモヤとどう折り合いをつけるのか、後半は胸をギュっとつかまれるほどの泣けるシーンもあって、大人も子供もみんなが楽しめる『インサイド・ヘッド』。

子供のころの気持ちに戻るというより、今のあなたの様々な感情を改めて考えるきっかけをくれる映画です。

執筆=斎藤香(c)Pouch

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『インサイド・ヘッド』
2015年7月18日より、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
監督:ピート・ドクター
共同監督:ロニー・デル・カルメン
声の出演:エイミー・ポーラー、フィリス・スミス、ルイス・ブラック、ミンディ・カリング、ビル・ヘイダー、ケイトリン・ディアス
(日本語吹替え版:竹内結子、大竹しのぶ、浦山迅、小松由佳、落合弘治、伊集院茉衣ほか)
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▼映画『インサイド・ヘッド』本編映像