THE PERKS OF BEING A WALLFLOWER
[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは青春映画の秀作『ウォールフラワー』(11月22日公開)です。原作者のスティーヴン・チョボスキー氏が、自らメガホンを取って監督した作品。登場人物を誰よりも理解している監督だけに、主要人物たちの心理描写が秀逸な映画に仕上がっています。そのスティーヴン・チョボスキー監督のインタビューをする機会を得た記者。お話しをうかがってきました。

【あらすじ】

高校入学以来、チャーリー(ローガン・ラーマン)は誰とも口を聞いていません。誰とも友達になれず、自分に投げかけられる言葉は悪口ばかり。家族にも姉にも相談できず、暗い毎日を過ごしていたチャーリーは、アメフトの試合観戦に行ったとき、上級生のパトリック(エズラ・ミラー)に思い切って声をかけてみます。すると彼は義理の妹のサム(エマ・ワトソン)を紹介してくれて、チャーリーは彼らの仲間に受け入れられるようになるのです。楽しい学園生活!でもチャーリーは、彼らとの付き合いの中で、交友関係の難しさを学び、同時に残酷な過去と向き合うことになるのです……。

【気さくなスティーヴン・チョボスキー監督】

壊れやすいハートを持った登場人物たちの物語を執筆し、自ら監督した人ですから、繊細な人なのだろう……と思ったら、インタビュールームに入るなり「ハロー」と明るく登場し、記者に向かって「日本人ってオシャレだよねえ。君の靴いいねえ、メガネも素敵だなあ」とお褒めの言葉を。そのあと宣伝担当者をつかまえて「お、君の靴もかっこいい!」と、何やら興奮気味。

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監督曰く「僕は今まで洋服とかまったく気を使わなかったんだ。でも日本に来てファッションに目覚めたよ。だってみんなオシャレだからさ!」と、根っから陽気なアメリカンといった感じのチョボスキー監督。でもその明るさは作品にも垣間見られます。この映画は決して暗い青年がドン底に落ちる物語ではなく、ちょっとしたきっかけで、不器用ながらも前へ前へと突き進もうとする物語だからです。

【一歩踏み出せば、世界は変わる】

「チャーリーはいつもウォールフラワー(壁の花)で、誰にも相手にされない青年だった。でも彼は勇気をだしてアメフトの試合でパトリックに声をかける。そこが重要なんだ。世の中にシャイな人はたくさんいる。このままでいいや……と思っている人もいるだろう。でもそうじゃない。ウォールフラワーでも声をかけていいんだよ」

チョボスキー監督は世界中のシャイな人々に向けて「一歩踏み出そう。世界は変わる」と、この映画を通して伝えています。それは監督自身、同じような経験があるからです。

「16歳のとき、ミュージカルに興味を持ってね。それまで体育会系だったから無縁の世界だったけど、思い切ってミュージカル部の門を叩いたんだ。すごく勇気がいったよ。そんなアーティスティックな連中と付き合ったことないから受け入れてもらえるかなと。でもおかげで世界が広がった。すべてが変わり、すべていい方向に動いたんだ」

【エマ・ワトソンら抜擢には、役との共通点を重視】

この映画はキャスティングの良さも際立っています。ローガン・ラーマン、エマ・ワトソン、エズラ・ミラー、この3人を抜擢した理由についてチョボスキー監督は

「僕にとって演技力は二の次さ。まずは人柄! 主要キャストがスピリチュアルな部分で理解しあえるかどうかがポイントだね。この3人が演じる登場人物は、はみだし者だけど、実際に3人ともちょっとはみ出し感があったんだよね」

つまり役との共通点があったのです。

「まずエマは『ハリー・ポッター』シリーズでおなじみのセレブ女優だ。でも彼女はセレブらしく振舞わない、人に気を遣ってばかりいる子なんだよ。ローガンはハンサムだけどぎこちなさがあるし、エズラは演じたパトリック同様にファニーで優しいヤツだ。3人とも人間の脆さをポロリと出せる人達で、そこがポイントだったね」

また、この映画のもうひとつの魅力はファッション。エマ・ワトソンのシンプルだけど品のいい衣装やインテリアなどの美術がキュート。チョボスキー監督は、お洒落に興味なしの人生を送ってきたのに「エマにピッタリの衣装じゃないですか、凄いですね!」と言ったら、

「映画作りで一番恐怖だったのが衣装を決めることだったよ(笑)。まったく興味ない世界だったからね。でも特にエマの衣装を選ぶときに思ったね。洋服はアート。これも表現方法のひとつなんだよね」

人と上手に関わることができない主人公が、素敵な友だちを得て変化を見せていく。でも不器用な彼は恋愛も友情もアチコチぶつかり、傷つけたり傷つけられたり……。「こんなことあったなあ~」とちょっとノスタルジーに浸り、彼らの青春から目が離せなくなる『ウォールフラワー』。愛すべき青春映画がまたひとつ誕生しました。
(映画ライター=斎藤香)

THE PERKS OF BEING A WALLFLOWER

THE PERKS OF BEING A WALLFLOWER

『ウォールフラワー』
2013年11月22日公開
監督: スティーヴン・チョボスキー
出演: ローガン・ラーマン、エマ・ワトソン、エズラ・ミラー、メイ・ホイットマン、 ジョニー・シモンズほか
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