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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアッピするのは、伝説の女優マリリン・モンローの内面にスポットをあてたドキュメンタリー映画『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』(10月5日公開)です。

マリリン・モンローを描いた映画はこれまでもありましたが、本作はマリリンの手紙と周辺の人々へのインタビューによってマリリンの心理を探っていく映画になっています。手紙が様々な女優の朗読によって感情をこめて描かれているのは新しい試みかもしれません。

ユマ・サーマンやマリサ・トメイなどの演技派女優たちが、マリリンの言葉を彼女になりきって語る姿は、やはり女優だけあって、ただの朗読ではなく大芝居で見せていきます。最初は少々面食らいましたが、見ているうちに慣れてくるというか……。それよりもマリリン・モンローが実に寂しい人であり、常に愛を求めていたことが手紙や周囲の人々のコメントからひしと伝わってきます。

また当時のマリリンの映像も多く使われているのですが、ビックリしたのは、彼女が『ナイアガラ』などに出演して脚光をあびた時代から、パパラッチがスターを追いかけまわしていたこと。マリリンが記者やファンにもみくちゃにされている映像は危なっかしくてヒヤヒヤしましたよ。

しかし、そのパパラッチ映像を見て、マリリンは好んで人前に出ているような気も……。嫌な顔ひとつせず、追っかけ記者の質問にも答えるし、何より驚いたのは『七年目の浮気』の撮影エピソード。地下鉄の通気口からの風でスカートがフワリと舞い上がる有名なシーンはロケで、群集が見守る中、何度も撮影していたのです。それを見て、当時の夫だった野球選手ジョー・ディマジオが激怒したというエピソードが劇中ありますが、そりゃそうでしょう。街中で妻が大勢の男たちの前でパンチラしているのですから! でもマリリンは平気な顔で何度も繰り返しており、その姿はプロフェッショナルとも言えますが、ちょっとどこか微妙に危なっかしい雰囲気もあったりして……。

女優として認められたいと願いながらも、撮影に遅刻したり、すっぽかしたりするマリリン。この映画はマリリンが少しずつ心を病んでいく姿を何気なく見せていくのです。美しく、色っぽく、魅力的なマリリン・モンローが、天真爛漫な明るさと、混乱を極めた闇の世界を行ったり来たりしている。女優たちの朗読と、当時の映像と、周辺の人々のエピソードで、マリリン・モンローの真実は浮かび上がってくるのです。

ドキュメンタリー映画界の実力派リズ・ガーバス監督は、マリリンの直筆の手紙を見るまで、マリリン・モンローに興味がなかったけれど、手紙を見たら俄然創作意欲が沸いたそうです。

「その手紙やメモに彼女の歴史が隠されていたし、繊細で心を動かす文章が綴られていたわ。マリリンは一般的に思われているような恋多き気まぐれな女性ではないの。仕事と家庭の両立に悩んでいたり、キャリアをつかむためにセックスアピールを使ったり、演技を磨くために学び続ける役者でもあった。この映画のマリリン・モンローはファンタジーではなく、一人の人間として見てほしいわ」

21世紀になっても語り継がれるスター女優マリリン・モンロー。そのガラスのハートを丁寧に救い上げたのが、このドキュメンタリー『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』と言えるでしょう。
(映画ライター=斉藤香)

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『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』
2013年10月5日公開
監督: リズ・ガーバス
出演: ユマ・サーマン、マリサ・トメイ、リンジー・ローハン、エイドリアン・ブロディ、エレン・バースティン 、グレン・クローズ、ベン・フォスター、ポール・ジアマッティ 、エヴァン・レイチェル・ウッド 、F・マーレイ・エイブラハム、エリザベス・バンクスほか
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