
[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは『ぐるりのこと』『ハッシュ!』など奥深い人間ドラマを描いてきた橋口亮輔監督の新作『恋人たち』(11月14日公開)です。
今回の作品は橋口監督のワークショップに参加していた一般的には無名の新人俳優たちを主演に配することで、物語がよりリアルに胸に迫ってきます。不幸だったり、ついていなかったり、思い通りに行かなかったりする現実、そんな毎日にもがきながらも、一筋の光を求める人々の姿が胸に迫り、彼らはどうやって生きていくのだろうと目が離せなくなるのです。
【物語】
橋梁点検の仕事に従事するアツシ(篠原篤)は妻を通り魔殺人で亡くして以来、絶望の淵にいます。パート主婦の瞳子(成嶋瞳子)は無口な夫と姑と暮らしているが、姑とソリが合わず、生きがいもなく毎日を持てあましています。エリート弁護士の四ノ宮(池田良)は、他人に対して威圧的でプライドの高い男ですが、ゲイである彼は親友の男への想いを断ち切れません。
それぞれ現実にもがきながら生きていますが、アツシには職場の人たちのやさしさがあり、瞳子には奇妙な出会いがあり、四ノ宮には恋する親友との間に亀裂が生まれます。それぞれの人生に訪れた変化により、3人の人生が不器用にあちこちぶつかりながらも進んでいくのです。
【ワークショップから生まれた映画】
橋口監督の7年ぶりの新作映画は、監督のワークショップ(実践型演技講座)から生まれました。橋口監督曰く
「ワークショップのエチュードをもとに物語を膨らませていこうと思ったのですが、うまくいかず、自分に引き寄せた物語を100パーセントオリジナルで作らなければいけないなと。ワークショップに参加したアマチュアに近い俳優たちが、それぞれの限界を超えるものにしないと、彼らの未来に繋がりませんから。結局、脚本に8カ月かかりました。初めて本物のセリフが書けた気がします。今までで一番いい脚本です」
本物のセリフ……。確かにメインの3人が無名の役者だったせいもあって、まるでドキュメンタリーを見ているような、他人の人生に踏み込んでいるような錯覚を覚えました。彼らが抱えているものは、重みは違うけれど、それぞれが切実で、どうしていいのかわからない問題ばかりです。でも彼らだけではなく、人はそれぞれ何かを背負って生きているから、彼らがもがき苦しみながら生きている姿に惹きつけられるのかも。
登場する人物はすべてが善人ではなく、エリート弁護士の四ノ宮などは鼻持ちならない男ですが、親友との壊れそうな関係を修復しようと必死です。みんな必死に生きているのです。それがよくわかるからこそ、彼らの人生にグイグイ引き寄せられてしまうのでしょう。
【希望の光が見える映画】
3人の悩みは完全に解決するわけじゃないけど、彼らは「生きているのも悪くない」と思っているのではないかと思います。「どうなっちゃうんだろう、この人たち」と不安な気持ちで見守りつつも、少しずつ人生がふっと上がっていくのです。
瞳子など手に入れた新しいものが幻だと気付いたとき、また元の日常に戻るのかと思ったら、違うのですよね。それまでの経験は無駄ではなく、失敗でもなく、彼女自身に何かをもたらしていたのです。そんな風に、人生を肯定しているからこそ、この映画は胸に響くのかもしれません。
生きていればいろいろなことがある、ときには絶望的な思いにかられることもあるけれど、生きていれば変化が訪れることがあるのです。ささいな変化かもしれないけど、それに気づくか気づかないかでは大きな違いがあります。そんな風に「もがきながらも今を生きること」を教えてくれる映画でもあります。
ちなみにメインの3名は新人俳優ですが、助演として光石研、安藤玉恵、木野花、リリー・フランキーなどの実力派が脇をしっかりと固め、物語をグッと締めているのも見どころです。
執筆=斎藤 香 (C) Pouch
『恋人たち』
2015年11月14日より、テアトル新宿ほか全国ロードショー
監督:橋口亮輔
出演:篠原篤、成嶋瞳子、池田良、安藤玉恵、黒田大輔、山中崇、内田慈、山中聡、リリー・フランキー、木野花、光石研ほか
(C)松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ
▼映画『恋人たち』予告編





心がポカポカになる感動作『アイミタガイ』 親友の死が受け入れられない主人公を演じる黒木華に注目!
信仰あらば恐れなし…? 荻上直子監督『波紋』は新興宗教にすがる主婦の行き着く先を描いた問題作です!
映画『グランドフィナーレ』の人生賛歌に胸アツ…その美しさに涙でる~! 神が降臨した大傑作です【最新シネマ批評】
都会で頑張る女性に見てほしいインド映画『私たちが光と想うすべて』大都市ムンバイに住む様々な背景を持つ女性の物語です
話題作『余命10年』は小松菜奈の演技に胸を掴まれる…! 「生きる」ことの素晴らしさを描いた心に残る作品です
【夜の4コマ部屋】よいお年を2025 / サチコと神ねこ様 第2554回 / wako先生
東京&大阪で 「リカちゃんのON/OFF展」開催♪なんと人気クリエイター「現実を生きるリカちゃん」とのコラボ展示もあるらしい!
【店舗限定】サイゼリヤのモーニングは栄養も糖分もチャージできて最高!気になるメニューやお値段をご紹介しちゃいます🍽️
もう1度食べたいフレーバーはある?2025年ハーゲンダッツ総決算!1年食べてきた私が豊作すぎた限定フレーバーを振り返ります♡
罪悪感は減る?ノンフライヤー「COSORI(コソリ)」を使ってみたら手放せなくなるほど満足度が高かったので紹介させて🍤
お友だちや同僚に配りたくなるかわいいプチお年賀まとめ5選!自分用にも買っちゃおっかな〜✨
【夜の4コマ部屋】チーム作ろう!2 ⑬ / サチコと神ねこ様 第2550回 / wako先生
【夜の4コマ部屋】クリパ2025① / サチコと神ねこ様 第2551回 / wako先生
【夜の4コマ部屋】クリパ2025② / サチコと神ねこ様 第2552回 / wako先生
【2026年福袋まとめ⑥】今週は目移り必至!マクドナルドとフランフランの初コラボに紀ノ国屋やミスドの情報も解禁したよ〜!
小さなお道具箱みたい✏️InRedの付録「ムーミン ミニミニ文具セット」はムーミン好きにも文房具好きにも刺さること間違いなし♡
【夜の4コマ部屋】チーム作ろう!2 ⑦ / サチコと神ねこ様 第2544回 / wako先生
【夜の4コマ部屋】チーム作ろう!2 ② / サチコと神ねこ様 第2539回 / wako先生
お茶を作って冷蔵庫に常備している皆さん!HARIO 「むぎちゃん」をお迎えすれば小さなストレスを解消してくれるぞ!
日本に4店舗しかないフランス紅茶専門店の「ロイヤルミルクティーソフト」を全力でおすすめしたい🍦あなたも芳醇な味わいのトリコに…♡
サーティワンのよくばりフェスの楽しみ方🍨10ポップを注文する前に “あるもの” を用意しておくと幸福感がUPするぞ…♡
全国に2店舗しかないフィナンシェ専門店「BEAN to FINANCIER」が手土産にぴったりすぎる!【#舞台女優の手土産リスト】
あじさいシーズン到来💙週末にふらっと遊びにいきたい「絶景あじさいスポット」10選
香取慎吾の鬼気迫る演技に圧倒される…! 映画『凪待ち』は監督白石和彌が引き出した香取慎吾の熱意と才能を感じる名作です
ヤングケアラーを描いた映画『若き見知らぬ者たち』 磯村勇斗と福山翔大が社会の理不尽を煮詰めたような物語を演じ切る
みんな良い人なのに幸福になれない理由とは? 映画『光をくれた人』 は2017年で最も泣ける映画です【最新シネマ批評】
映画『ヴィレッジ』は横浜流星の “いま” が見れる / 運命に振り回される主人公&怒涛の展開に緊張しっぱなし
【カンヌ最高賞】映画『万引き家族』は自分の中の “正義” が揺さぶられる傑作 / 社会に見捨てられた家族の生き様に胸がエグられます【最新シネマ批評】
timelesz・寺西拓人初主演映画『天文館探偵物語』人情派の探偵、さりげない色気…見事に演じ切った作品です
今こそ観ておきたい…戦争のむごさと無意味さを塚本晋也監督が描いた『野火』は “忘れたらいけない” トラウマ映画だ【最新シネマ批評】
失恋女子必見! 映画『はじまりのうた』傷ついた心をハッピーに変えてくれる【最新シネマ批評】
映画『キネマの神様』ジュリーが志村けんと主役を二人三脚で演じきった感動作 / 菅田将暉&野田洋次郎の共演も
松山ケンイチが神演技で魅せる! 映画『聖の青春』が描く、29歳で逝った天才棋士の将棋愛【最新シネマ批評】
男女の三角関係をスピリチュアルな力が救う!映画『カフェ・ド・フロール』が映し出す輪廻とは?【最新シネマ批評】
コメントをどうぞ