「ノエル・ギャラガーのブログ内容に批判集中!?」
90年代に登場、以来イギリス、ひいては世界のミュージックシーンを牽引してきた超大物ロックバンドOASIS。現在は残念ながら中心メンバーのノエル&リアム・ギャラガーの仲たがいなどで解散状態にありますが、リアム、ノエルはそれぞれ独自に活動を展開中です。

先日、ノエル・ギャラガーがソロプロジェクトを率いて来日。なんと!  5月25日にはテレビ朝日系列の『ミュージックステーション』に出演してくれたんです! ロック好きにとってはレディー・ガガさえ超える大物がタモリと並んでしゃべってる! おーん、生きててよかった!!!

と、思っていたのに、大事件発生です。ノエルが自身のブログにこの日のことを書いたんだけど、その内容がひどい、とネット上で批判が集まっているらしい!! うーん、ギャラガー兄弟、基本的にクチ悪いし、本当ならイヤな感じだなあ。

「実際のところ、どうなの?」
でも実際に公式サイト(http://goo.gl/gNYrp)のブログコーナー(登録制)を見てみると、自分の英語力のせいか、どうも批判しているようには読めない。

いつものノエルさん的なクチの悪さはあるけど、それはキャラでしょ……? ネットでは「日本は狂ってる」だの「こんなクソ番組を見るヤツの意味がわかんない」だの書いたってことになってるけど(大手ネットメディアもそう報じてる)、そんなふうには読めないよ。

よし、じゃあ実際に外国人に聞いてみればいい。サンフランシスコ出身の現役高校ALT・ジョンさん、あと海外経験のあるPouch料理部の鷹泊さんにに手伝ってもらって、読み込んでみよう。正しい訳を作ってみよう。誤訳だったら許さん! みんなのノエルさんになんてことをっ!

●『ミュージックステーション』について述べた部分

Well that tv show was – as predicted – fucking insane.
It’s quite difficult to know what these Japanese shows are actually supposed to be about,
but I’m guessing it was like some kind of version of our very own Top Of The Pops (R.I.P.).

ジョン「日本人が『攻撃された!?』って思ったのはfucking insaneの部分だよね。でもいまの英語だと単に”really wild”、へんなの! くらいの意味でしかないから安心して」

鷹泊「fuckingは『マジで』って意味ですね。『ファッ*』の意味はもうゼロ。わたしですら酒飲んでると使う、ただの若者語です。あーあと、『なんでこんな番組を支持してんだ』って誤訳は suppose と support を読み間違えたとてもイージーなミス。そんなのが広がるなんて、ネットって怖いね」

[Pouch訳]
この番組はさ、思ってたとおりだけど、まあいかれてたね。
こういう日本の番組が何考えてんのかはマジでわかんない、
けどわれらが「トップ・オブ・ザ・ポップス」(←成仏しろ)みたいなもんだとも思ったり。

●AKBについて述べた部分

I was on with a load of Japanese acts one of which was a manufactured girl group called AKB48.
I kid you not. There was maybe 30 of them all between the ages of 13-15!!! I suddenly started to feel very old.

ジョン「manufactured groupっていう言葉を僕自身知らなかったけど、いま友だちに聞いたら『他者の意図で結成されたグループ』のことだってさ。40年前にビートルズをネタにしてつくられた『モンキーズ』なんかが代表例だって。だとすると単にグループの性質のことを言ってるね」

[Pouch訳]
おおぜいの日本人アーティストと一緒に出たけどその中のひとつが企画系※ガールグループのAKB48。
いやマジな話、そいつらのうち30人ぐらいだと思うんだけど、13~15歳ぐらいなの!!! 俺ジジイだわーとかその瞬間思っちゃったよ。

●タモリについて述べた部分

The presenter was some old dude who looked at best like a James Bond villain.
It was loud fast and chaotic. Lord only knows why I was on there.

ジョン「at bestは『よく言ったらこうだ』=おせじっぽく言うならってこと。タモリのサングラスが007の大物敵っぽかったって言ってるね。むしろよく言ってない? なんで怒るの?」

鷹泊「これをどう訳すと『スカした』になるのかはわたしではわからない(笑)。たぶん妄想ですね。いずれにしてもロックスターにしてはわりと丁寧な言葉づかいだと思います。文法もちゃんとしてるし、ロンドン下町のアホの言葉とは大違い。わたしは、それはノエルなりの日本の番組への敬意だと思うけどな」

[Pouch訳]
司会はよく言うとジェームス・ボンドの敵ボスキャラみたいなおっちゃん。
うるさくてせっかちでめちゃめちゃな番組だった。なんで俺がここにいたのか意味わかんない。

「勘違いで海外ロックスターを攻撃……お願いだからマジヤメましょ」
うー、やっぱり誤訳じゃないか! 2ちゃんねるの誰かがでたらめに訳したのを真に受けて攻撃発言した有吉さん、原文も読まずこの訳だけをベースに『Mステを痛烈批判』って記事載せた某メディアさん、謝りなされッ! ノエルさんちのコメント欄に突撃したAKBファンの子はちゃんとゴメンナサイして消してきなされッ! ノエルさんがポピュラー系の番組に出てくれるなんてあんまりないってのに、なんというご無礼をッ!

……とまあ、ちょっと私怨っぽくなってしまった……すみません。いったん落ち着きます。でも、大事なお客に対して無知&誤解からくる無礼を働くのは一番よくないよ。この一連の騒動の中ではノエルさんのシメのコメント

A good laugh all the same though.(そうは言ってもなかなか面白かったよ)

があまりコピペされませんでした。

ほかにも「こうしろこうしろって細かく時間が指定されてて軍隊みたいでスゲー」っていうようなことが書かれていたりして、「不思議な国ニッポン」のようなテイストなのですが、それがなぜか「日本は狂ってる」「クソ」という話にされてしまったあたり、悪意を感じます。それともノエル・ギャラガーにいつまでも悪童でいてほしい、という期待なのかしら……(それはわからなくもない)。

「情報の正誤、まずは自分で判断する努力を! っていうかまずは英語のお勉強から」
2ちゃんねるに誰かが間違った情報を載せて、それが確認もされないまま拡散していくというのは背筋が凍るほど恐ろしいことです。実際、こんなことから外国人の気分を害していたら、これまで先人たちが築いてきた美しい和の国・日本という評判に傷がついてしまう……。

編集・校正の用語で、事実をきちんと確認する作業のことを「ファクトチェック」と言います(そのままですが)。この仕事をしている人間としても「きちんと事実を調べて書くべし」という原則を思い知らされた事件でした。

(取材・文=纐纈タルコ/日本語訳協力=鷹泊千里)

参考元:ノエル・ギャラガー公式サイト(http://www.noelgallagher.com/

【お詫びと訂正】

※)記事アップ後、ジョン氏からmanufactured groupという語句についての訂正が届きました(記事参照)。これに伴い、当該部分に対する和訳を「企画系」と訂正させていただきます。大変失礼いたしました。

▼実際のブログコーナーの記事。
悪意がないどころかちょっと楽しそうな雰囲気だ