【映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します】

今回ご紹介するのは、映画マニアの間ではすでに話題の映画『アイアン・スカイ』。月からナチスが攻めてくるという奇想天外なSFアクションコメディです。これまで宇宙からいろいろな生物が地球にやって来る映画が作られてきましたが、たいていは宇宙人がアレコレとカタチを変えて攻めてくるというパターン。

しかし、本作は大ひねりを加えて、なんとナチスが月から地球にやってくるのです!

ちなみに本作はハリウッド映画ではありません。フィンランド・ドイツ・オーストラリアの合作映画で、監督はじめ製作陣はフィランド人が多いです。フィンランドというと北欧家具、サンタクロース、ムーミン、映画『かもめ食堂』(フィンランドが舞台)など、シンプルな美しさ、幻想的な世界のイメージがありますが、こんなアクの強い珍映画が生まれるとは驚きです。

物語は、アメリカから月にやってきた黒人宇宙飛行士がナチスに捕らわれるところから始まります。彼らは第二次世界大戦から月に逃れたナチスの残党。地球に戻るために軍事力を強化しているところだったのです。ナチスは彼からスマートフォンを奪い、その技術に驚嘆! 「これがあれば我々の宇宙戦艦が完成する!」と、新総統は将校を地球に派遣します。その案内人は科学者に白人化された(!!)黒人宇宙飛行士。そしてこっそりと将校の婚約者も。しかし、将校はこの機会にアメリカと手を組んで、総統の座を奪おうとしていたのです。

本作のアイデアは、ティモ・ヴオレンソラ監督の友人であり脚本家のヤルモ・プスカラが「昨日、ナチが月から地球に攻めてくる夢を見ちゃってさ、これって映画になるんじゃね?」と言ったことがきっかけだそうです。この一言に監督はひらめき、創造力を結集して作り上げたのがこの映画なのです。

また、この映画が完成するまでの道のりも映画さながらの面白さです。製作費のうち約1億円は、世界中の映画マニアの出資によるもの。資金調達のために立ち上げたHPでサポーター募集を募り、出資金額に応じた特典(エンドクレジットに名前が出るなど)をつけて集めたのです。さらに登場人物の名前を募集したり、宇宙船のモデルを組み立てるスタッフを募集したり……。本作はまさに製作スタッフと映画ファンがコラボした作品!この映画に参加したファンにとっては製作過程もドラマチック! 夢のような時間だったでしょう。

そんな製作陣とファンが情熱を傾けた映画だけあって面白いです。けど、毒々しさもハンパない! アメリカ大統領は「え?これサラ・ペイリン?」みたいな女性だし、大統領選がショービジネス化していることや、戦争で名をあげるような発言を笑いの要素にしているからです。そもそもナチスをこれだけいじりまくるのも勇気がいること! ヴオレンソラ監督は「この映画は政治的な意味で微妙な境界線を踏んでいるけど、こういう映画を作るときに大切なのは、自分のしていることに意志を持ち、リスクを恐れないことだ。これはダークコメディだからね、見終わった後、火花を散らす討論が起こることを期待しているよ」と、男らしくかつ器の大きいところを見せています、かっこいいな!

過激な設定の中に、毒を含んだ笑いをいっぱいつめこんだ刺激的な『アイアン・スカイ』。北欧のイメージがガラリと変わる(!?)最高に楽しい珍作です!


『アイアン・スカイ』
9月28日公開
監督:ティモ・ヴオレンソラ
出演:ユリア・ディーツェ、ゲッツ・オットー、クリストファー・カービイ、ペータ・サージェント、ステファニー・ポール、ティロ・プリュックナー、マイケル・カレン、ウド・キア
(C)2012 Blind Spot Pictures, 27 Film Productions, New Holland Pictures. ALL RIGHTS RESERVED.

お詫び:編集者の不手際によりタイトルに誤りがありましたこと深くお詫び致します。今後は重々気をつけ読みやすい記事掲載に努めて参ります。(Pouch編集部)