【第36回 名前に「美」が付く人の苦悩とは!?】
派遣社員をしていた頃、隣のデスクの社員さんが、電話で自身の名前の漢字を訊ねられていた際に「雅彦のヒコは、彦左衛門のヒコです」と返しているのを聞いて、「人名の漢字を、人名で答えてどうする!」と、思わず笑ってしまったことがありました。
こういう場合は、「彦星のヒコ」「彦根市のヒコ」などと答えるのが正しいかと思うのですが、そういえば皆様は、ご自分の名前の漢字を訊ねられた際どのように返していますか?
というかその前に、最近の平成世代は平仮名の名前も増えているようですね。昨年生まれた女の子の名前で多かったのは「さくら」なのだそうです。なお、私が生まれた昭和52年は「智子」「陽子」「久美子」などが多かったとのこと。平仮名表記か漢字表記かということの他にも、「子」が付く名前が一般的だったことが表れていますね。
ですが、今回注目したいのは「子」が付く名前がどうのこうのではなく、漢字を訊ねられた際の答え方について。
昭和52年生まれに多かった「久美子」という名前に付いている「美」という漢字に着目してみましょう。私は「久美子」ではないのですが、同じように名前に「美」という漢字が付きます。ほかにも、「美」という漢字が付く女性名は数えきれないくらいあるかと思うのですが、漢字を訊ねられた際に「久美子のミは、美しいのミです」などと答えてしまってはいませんか? 実は私も、数年前まではそのように答えていました。
しかし、よくよく考えたら「ミは、美しいのミです」と答えるのは、少々おこがましいような気がしますよね。絶世の美女ならともかく、いや、絶世の美女だったとしても、自分の名前の漢字を「美しいのミ」と答えてしまうのは、いかがなものか、という気がしてきました。
そこで、数年前からは「美しいのミ」に代わって、「美術館のビです」と答えるようにしています。美術館なら、美しい絵画や彫刻だけでなく、中にはユーモアに富んだ滑稽な展示物も置かれていますから、おこがましさが出てしまうことはありません。
いかんせん「美術館のビ」という答え方が浸透していないため、「美しいのミですよね?」と聞き返されてしまうこともあります。確かに、そっちのほうがわかりやすいのでしょう。
ですが、多少わかりにくくても、ここは奥ゆかしさを優先して「美術館のビ」と答え続けていきたいものです。こういった細やかな気遣いが、男女間のやりとりにも活かせると良いですね。
(恋愛コラムニスト=菊池 美佳子)
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