沈没船から引き上げたワインやシャンパンは、風味がまろやかになって美味しくなるんですって。いったいどんな味がするんでしょうねえ。
そんなロマンチックな願いを再現しようと2年に及ぶ実験の末、本当に海底に沈めて熟成させたワインが存在するんですよ! しかも海外じゃなく日本に!!
【海底で眠らせたワイン「SUBRINA」】
その幻のワインの名前は「SUBRINA」といいます。伊豆の加茂郡南伊豆中木沖の海底20メートルの位置にあるワインセラーにて約7カ月間熟成。国際評価の高い南アフリカ「クルーフ社シラーズ種」を使用した、ワインとしても大変貴重なものだそうです。
【ボトルの状態によって3タイプあり】
今回海底に沈められたのは6000本。ボトルの状態によって3種類のタイプにわけられています。
海底貯蔵柵の最上段に貯蔵され石灰藻やフジツボが多く付着した最も高価なAタイプ(1万2千円)、中間部に貯蔵されてたため付着物がほとんどないBタイプ(1万円)、最下段で貯蔵され金属柵のサビなどが付着したCタイプ(1万円)。AとCは全体の10分の1だけの希少部位なんだそうですよ。
2000円前後でも十分美味しいワインが飲めるということを考えますと、いくら貴重なぶどうを使用しているとはいえ、このワインに付けられた1万円というお値段がいかに高いかがわかりますよね。
というわけで購入するのをかなり思い悩みましたが、「海のロマンを買うんだぜベイベー」とムリに意気込んでみたりして、思い切って希少なCタイプを購入してみました。ちなみに一番欲しかったAタイプは記者(私)が購入した時点では売り切れでした。
【ボトルの付着物がカッコイイ!!】
届いたワインボトルの表面には、たしかに金属柵のサビや海中の漂流物やフジツボなんかがくっついていました。ビンテージっぽくなっててカッコイイ。飲んだら飾っておこう。ボトルを手で触ると、うっすらとオレンジ色のサビが付くのでお洋服には絶対に触れないよう気をつけて。
【コルクが開かない!】
さっそくワインを開けようと、いつも通りワインオープナーで外側のゴムカバーを切り開こうとしましたが……まったく太刀打ちできず! 海底に沈めるため頑丈にするために、分厚くコーティングしたようです。なんとか周囲に切り込みを入れ、最後はほぼ力任せに引きちぎりました。
【風味は酸味強めの頑固じいさん】
コルクを開けるとツンとした香りが漂います。一口目は強い酸味が感じられ、少し遅れて苦味が充満。華やかだけど、ややコクに欠けるような気もします。正直、ワイン初心者には不向きかもしれないなぁ。
しかしながら7カ月間海底に沈んでいたと思うと、なんだかとても愛おしくなってくるのです。何度となく口にふくんでいるうちに、とても気難しかった爺さんが徐々に心を開いてくるかのような親しみを感じる。気づくと、どんどんワインは減っていき、数十分で1滴残らず飲んでしまいました。飲んべえって罪ですねえ!
これが海底の、時に荒々しく、時に優しい海流にもまれながら熟成されたワインなのだなと、なんだか妙に納得。この一筋縄にはいかない海底のロマンを、大切な日のために買ってみるのもいいかもしれないですよ。
参考:SUBRINA
(写真・文=メル凛子)
▼動画あるよー!
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