「おおきに」、「まいど」、「えげつない」などの“大阪弁”をせんべいに刻印した『浪花ことばせんべい』。実は、もっとも大阪らしい土産としてひそかな人気を集めています。

インターネットなどの通信販売を行っていないため、東京などの首都圏をはじめ、遠方からも買いに来る人が絶えないというこのせんべい。大阪市にある販売店『はやし製菓本舗』に足を運んでみました。

大阪市南部にあるターミナルの1つ、天王寺駅から路面を走る阪堺電車で2駅目の「松虫駅」で降ります。あべの筋を東に横切った商店街にひっそりとそのお店はありました。商業ビルが立ち並ぶ天王寺駅周辺と違い、下町の雰囲気たっぷりです。

訪ねると「まぁ、1枚食べてみ」と、できたてのせんべいをポンと渡してくれたのが2代目店主の林数行さん。このできたてのせんべいは生地がまだ温かくてフワフワで、口に入れると卵の風味がいっぱいに広がりました。

このお店の歴史は古く、1933年(昭和8年)に創業。『浪花ことばせんべい』は1963年(昭和38年)から販売しているとのこと。林さんは店を継いでからずっと手作りを続け、現在でもせんべいに1枚1枚ていねいに、いろいろな浪花ことばの焼き印をポンポンと手際よくつけていきます。1日に1000枚ほど作るそうで、この作業から1週間置いて生地がすっかり固くなったのちに店頭に並べられます。

固くなったせんべいはパリパリとした歯ごたえで美味しいですが、暑い季節や暖房器具の近くに置いておくとまたやわらかくなるそうでこれもまた美味しい。しかももう一度冷蔵庫に入れると再び固く戻って「2種類のせんべいが味わえる」のも魅力です。

もちろん1枚1枚どんな浪花ことばが押してあるかを見てその意味を考えてみるのも楽しみの一つ。せんべいの包装紙には26種類の浪花ことばが載っています。お客様とのふれあいを大事にし、対面での販売にこだわり続けるため、地元の人々はもちろん遠方から買い求めに来るリピーターのファンも多いのだとか。

『浪花ことばせんべい』は6包1,050円から。ほかにも懐かしいお菓子がたくさん並んでいます。林さんといろいろと話すうち、ついつい長居してしまいました。居心地もよくてまた訪れようと思わせてくれる、大阪の人情あふれるお店の1つです。

【お店のデータ】
店名: はやし製菓本舗
住所: 大阪市阿倍野区王子町1-7-11
TEL: 06-6622-5372
営業時間: (平日)9:30~17:30/(土日)9:30~16:30
定休日: 木曜日
交通アクセス: 阪堺線「松虫駅」徒歩約3分、地下鉄御堂筋線「昭和町」徒歩約10分

Written by Aki Shikama