[公開直前☆最新シネマ批評]
毎週金曜日は、映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。本日は明日公開の映画「アレクサンドリア」です。

今回のピックアップ作品はアレハンドロ・アメナーバル監督作『アレクサンドリア』。4世紀ローマ帝国末期のエジプトに生きた天文学者ヒュパティアの物語です。

映画を見るまでは、大昔に実在した天文学者の崇高な人生と古代における科学を壮大に描いた物語と思っていたけれど(ま、実際そうなんですが)、映画の中で起こっている出来事がいまエジプトで起こっていることと重なって驚いてしまいました! 

現在、反政府テロやムバラク大統領辞任などの問題で、世界中のトップニュースとなっているエジプト。映画の舞台となる古代アレクサンドリアでも、同じように政情が混乱を極める姿を映し出しています。この映画を製作したのは2009年。なんとタイムリーな! アメナーバル監督の目にはエジプトの今が見えていたようです。まるで預言者のよう!

アメナーバル監督は「科学的に宇宙の謎を解く人々の感情を描くこと」を目標にこの映画に着手。しかし、調べれば調べるほどヒュパティアが生きた時代は「現代に通じている!」と感じ「CNNの取材チームが4世紀に起こった出来事をドキュメンタリーにしたような映像にしたい」と歴史映画にありがちのワイドなアングルのショットや、ここぞという場面に流れる感動を煽る音楽は使用せず、ひたすらリアリティにこだわり続けました。

何でもかんでもCGに頼る昨今の映画界で、あの巨大なローマ帝国のセットをマルタ島に造った。相当お金もかかったであろうと思いきや、製作費91億円予定だったのを57億円で収めたというのだから(34億円も切り詰めた!)名匠はなかなかやりくり上手でもありますね。

ちなみに主演のレイチェル・ワイズは脚本を読んでオファーをすぐに快諾したそうですが、サシャ・バロン・コーエンは「内容が悲痛すぎる」と断ったそうです。『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』などブラックな映画に出演しているコーエン、意外と繊細だったのね……と、こちらも驚きです。(映画ライター:斎藤 香)

『アレクサンドリア』
2011年3月5日(土) 丸の内ピカデリーほか全国順次公開
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザック、マイケル・ロンズデールほか
配給会社:ギャガ
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ライタープロフィール:http://bit.ly/hlZYAr