カザフスタン国歌がへんなパロディソングに!!

選手たちといっしょになって、深夜まで。ハラハラドキドキしながらテレビにかじりついて、自分も一緒に戦った気でいる毎日です。みなさんも、ロンドン五輪を楽しんでいるでしょうか?

柔道を見ては足技が痛そうだと思い、水泳を見ては息つぎがシビアそうだと思う。そんなふうに、選手たちの大変さに思いを馳せながら観戦しているものだから、彼らがメダルを勝ち取って表彰台に立ったあかつきにはもう、君が代を聴きながらこっちまで涙ですよ!

だけど、もし。そこで流れるのが、君が代じゃなくてヘンなパロディーソングだったら。祖国を称えるはずの場で、国歌が取り違えられたうえにお下劣極まりない曲が流れてしまったら……?

そんな、悪夢のようなひどい冗談のような事件があったのは、今年3月のこと。中東・クウェートで開催された「第10回アラブ射撃選手権」で、カザフスタンのマリア・ドミトリエンコ選手が見事に優勝、金メダルを獲得したときでした。

表彰式では当然のように、国家の演奏があります。カザフスタンの国家が流れ出した、と思ったらそれは……

シモネタ満載の、とんでもないパロディーソング!

そのときの映像が残っているのですが、ドミトリエンコ選手はかなり戸惑いながらも、場の雰囲気を壊さないように最後まで胸に手をあて、正しい姿勢を貫き通していました。

どうしてこんな、志村けんのコントみたいなことになったのかというと、クウェート側の手抜きと、ある映画の存在が原因でした。

「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」という映画が、それ。イギリス人コメディ俳優・サシャ=バロン=コーエン演じるニセのカザフスタン人が、(カザフスタンを知ってる人がいないことを武器に)アメリカ各地で騒動を巻き起こしつつ、アメリカ文化にはびこる差別や偏見、うわっつらだけの上品ぶった人々の浅はかさを徹底的に暴き、バカにしていくというモキュメンタリー(半分リアル、半分演出の擬ドキュメンタリー方式の映画)。

本物のフェミニスト団体の前で「女の脳は小さいから教育は無駄」「女性の知能は小動物程度」って言ってみたり、議員にチーズを食べさせたあとで「わたしの妻の母乳で作りました」って言ってみたりと、異国の異文化ですからという言い訳のもとでノーアポ&リアルでやらかされるハードすぎる騒動の数々は本当に必見なのです。ご存知なかった方は、レンタルなどでぜひどうぞ。

で、映画の中では「Kazakhstan National Anthem(カザフスタン国歌)」なる曲が流れるのですが、基本コメディー映画なのでそれは思いっきりパロディ、というかジョークソング。テイストこそ中央アジアっぽいものの、本当のカザフスタン国歌とは似ても似つかない、お下品なアホソングなのでありました。

内容は、こんな感じ。

『カザフスタン・ナショナル・アンセム』
カザフスタン、世界で最も偉大なる国。
カザフ以外の国は幼女が治めるなり。
カザフスタン、世界で最も偉大なるカリウム輸出国!
カザフ以外の国のカリウムは劣等品なるべし。
カザフスタン、ティンシェン・スイミングプールのふるさと。
長さ30メートル×幅6メートルのプールなり。
そのろ過装置は驚愕せらるるべし、
プール内の人的固形廃棄物※う●ち)の80%を取り除くものなり。
カザフスタン、カザフスタン、とってもいいところなのよ、
タラシェンク平原から北部のユダヤ人街隔離フェンスまで広がる国。
カザフスタン、住む者はすべての人間の友人なり。
ただしウズベキスタンだけは無理、奴らはどんなことにでも鼻をつっこんで嗅ぎまわる。
カザフスタン、その工業や世界一、
お菓子のトフィーとズボンのベルトを作り出したり。
カザフスタン、地域でもっとも清潔な病気なき売春婦の国なり、
ただし無論トルクメニスタンの売春婦にはかなわぬ。
カザフスタン、カザフスタン、とってもいいところなのよ、
我等が指導者たちの堅牢なるXXXをしごきに来るべし、
XXのXXからXXXXXのあたりまで。(※具体的なシモの部位、伏せときますね!)

英語がわからなかったとおぼしきクウェートの担当者がこの歌をネットで見つけ、「カザフスタンの国歌ってこれなんじゃね?」とダウンロードして使ったのが、この騒動の原因なのでした。たしかにパロディゆえにそれっぽい歌とそれっぽい演奏なのだけども……ちゃんと調べなさいよ! というかネットから落とすなよ!

カザフスタンのドミトリエンコ選手が、この歌の内容を理解しなかったことを祈るばかり。もちろん後日、カザフスタンからがっつりと抗議が入り、表彰式がやりなおしになったことは言うまでもありません。

(文=纐纈タルコ、対訳協力=鷹泊千里)

▼実際のもようを、英語の歌詞つきでどうぞ。ドミトリエンコ選手、金メダルなのに……