[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは、英国映画『パディントン』(2016年1月15日公開)です。クマのぬいぐるみは「プーさん」だけではありません。パディントンは英国のアイドルで、世界40カ国以上で翻訳されている児童文学作品。絵本、アニメ、キャラクターグッズもいろいろ。日本にもマニアはたくさんいるのです。
そんなパディントンが大活躍する実写映画が『パディントン』。小さなぬいぐるみかと思ったら、意外に大きくてビックリしましたが、その言動は紳士的でけなげなパディントン! ではご紹介しましょう。
【物語】
南米ペルーからロンドンへ、英国の探検家の家を訪ねるためにやってきたクマ(声・ベン・ウィショー)。駅で所在なさげにしているところを、親切なブラウン夫人(サリー・ホーキンス)に声をかけられ、ブラウン一家に居候することになります。ブラウン夫人は、このクマがパディントン駅にいたからと「パディントン」と名付けました。
しかし、しゃべるクマとはいえ、慣れない都会暮らし。バスルームの歯ブラシで耳掃除して汚したり、トイレやお風呂の使い方がわからず水浸しにして、ブラウン氏(ヒュー・ボネヴィル)を怒らせてしまいます。しかし、本当は良い子のパディントン。次第にブラウン一家に溶け込んでいきます。でも、ロンドンに来た目的は探検家の家を探すこと!
動き出したパディントンを謎の女ミリセント(ニコール・キッドマン)が誘拐しようと企み、魔の手がパディントンに~!
【紳士で謙虚なパディントンのキャラクター】
最初スクリーンにパディントンが登場したとき「リアルにクマ!」と驚いたものの、しゃべると紳士的で謙虚でかわいいんですよ。ペルーから来たけど英国紳士のようなパディントンは失敗を繰り返しながらも、英国が似合うクマになっていくのです。見た目ぬいぐるみでも、エロ親父のように下品なテッドとは対極にあるパディントン。
演出したポール・キング監督は、この映画についてこう語っています。
「生きていく中で、誰もが自分はよそ者だと感じることがある。大げさなことじゃなく、新しい学校の最初の1日、家から離れた場所での一夜とかね。そんな経験があれば、この迷ったクマの気持ちがわかるはずだよ。それこそが何世代もの読者をとらえた理由だろう」
なるほど。確かにパディントンが駅で所在なさげにしている様子は、ひとりで新しい場所に降り立ったときの「どうなっちゃうんだろう」という不安感と一緒。だからこそ「誰か声かけてあげて~」と思ってしまうのかも。パディントン誕生は1958年ですからね。これまでどれだけ愛されていたかわかります。
【パディントンの声はコリン・ファースからベン・ウィショーへ】
パディントンの声を担当しているのは、最近日本でも人気上昇中のベン・ウィショー。でも実は、最初に声の出演をしていたのはコリン・ファース(『英国王のスピーチ』『キングスマン』)。撮影前からコリンが俳優たちとリハしたり、撮影後もいくつかの場面で声をあてていたりしたのだけれど、キング監督は苦渋の決断をしたのです。
「何カ月もかけてパディントンのキャラクターを作り上げていく中で、コリンの声が合っていないと考えるようになったんだ。それは本人も感じていた。パディントンの声は明るく若い声が合っていると。シブくてハンサムな声ではなくてね」
キング監督とコリンは、映画にも登場するマーマレードサンドウィッチでお茶をして、コリンはこのプロジェクトから身を引いたそうですが……ええええ! アカデミー賞俳優に、撮影入ってから「君じゃない」と告げるなんて、もうビックリです。でも快く身を引いたコリン・ファースはやはり紳士ですね。ちょっと感動。その後、白羽の矢が上がったのがベン・ウィショー。
「ベンの声は異質なんだ。パディントンは古い蓄音機で英語を勉強したから、古風できちんとした発音をする。そこをベンは表現してくれた」
と監督。ちなみに日本語吹替え版のパディントンの声は松坂桃李が担当していますので、字幕と吹替え版、両方見るのも楽しいですよ。
映画に登場するロンドンの街並みや、ブラウンさんの家もとっても素敵で、ヴィジュアルも見応えあります。特にブラウンさんの家は階段、リビング、寝室、子供部屋などインテリアがすべてカラフルで可愛い! 全体的に映像が明るくポップで「こんなロンドン見たことないって思いますよ。
英国好きは必見だし、インテリア好き、キャラ好きなど、女子好き要素満載の映画『パディントン』です。
執筆=斎藤 香(c)Pouch
『パディントン』
(2016年1月15日より、TOHOシネマズみゆき座ほか全国ロードショー)
監督:ポール・キング
出演:ヒュー・ボネヴィル、サリー・ホーキンス、ジュリー・ウォルターズ、ジム・ブロードベント、ピーター・キャパルディ、ニコール・キッドマンほか
(C) 2014 STUDIOCANAL S.A. TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S Paddington Bear TM, Paddington TM AND PB TM are trademarks of Paddington and Company Limited
▼映画『パディントン』予告編
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