ここは、恵比寿の外れに佇む雑居ビルの2階、スナックマリアンヌ。ダメそうでダメじゃないちょっとだけダメな男に悩む乙女が夜な夜な集う、憩いの場です。今宵も、マリアンヌママに話を聞いてもらおうと、お客さまがやってきたようです。

――カランカラン。

乙女「ひとりなんですけど、いいですか!?」

ママ「いらっしゃい。ここに来る子はだいたい最初は暗い顔なんだけど、あなた明るいわね。まあ、そこにかけて？」

【今日のダメ男さん：音信不通になって別れたのに、半年後に連絡してくる未練タラ男】

相談者：マナミ（24歳）
職業：雑貨店勤務

ダメ男さん：元彼 （24歳）
職業：広告制作会社勤務

交際期間：1年（別れてから6か月）
出会いのきっかけ：高校の同級生

マナミ「半年前に一方的に連絡が来なくなって、自然消滅した元彼がいて。でも、その彼から連絡が来たんです！」

ママ「あら、内容は“久しぶり。元気？”ってとこかしら？」

マナミ「はい。まさにそんな感じで。私、別れた時は本当に苦しくて苦しくて……彼に振り向いてもらうために、いろいろ頑張ってきました。お料理教室に通ったり、習い事を始めたり。それで、一昨日ついにLINEが来たんですけど、何て言えばいいか迷ってて、今日になっちゃいました！」

ママ「えっ、まだ返信してないわけ？」

マナミ「まだ、既読にもしてません！　だって最初の返信って、肝心でしょ？　だからママに相談しに来たんです」

ママ「別れた後に連絡してくる男なんて……」

マナミ「わかってます。ただ単に寂しくて、自分にぞっこんだった元カノに会って自信を取り戻したいとか、そういうことなんですよね。男の人は、元カノは全員自分のものだと思い込むって、いろんなサイトに書いてありました！」

ママ「わかってるのね」

マナミ「本当に復縁したいから連絡してくる場合もあるみたいだけど……」

ママ「連絡が来るのなら、復縁の確率はゼロじゃないわね。はい、あなたにはこれ。乾きものの定番、チーたらよ」

マナミ「やっぱり、スナックといえばこれですよね。安いし、おいしいもん」

ママ「安いは余計だけどね。それで、あなたはその彼と復縁したいのかしら？」

マナミ「全然。だって私、もう彼氏いるもん。習い事の教室で、元彼より全然タイプで大人な彼氏ができたんです！」

ママ「だったらあなた、どうしたいのよ？」

マナミ「元彼をギャフンと言わせたいんです。彼が私にした過ちを、認めさせたいっていうか」

ママ「あなた、若いわね。やめときなさい」

マナミ「怒らせてストーカーになられたら大変だとか、そういう意味ですか？　大丈夫！　彼、そんなタイプじゃないですもん」

ママ「そうじゃないの。わかってるとは思うけど、若さは刻一刻と失われていくものよ。あなたの大切な時間を、そんな無駄なことに使う意味なんかこれっぽっちもないっていうことを私は言いたいの。だってあなた、少なくとも一昨日から今の今まで、元彼のことを考えていたんでしょう？」

マナミ「そうだけど……」

ママ「考えてごらんなさいよ、もしもあなたが考えに考えた返事を元彼にして、その後にやり取りするようになったら、今の彼はどう思うかしら？　あなたが元彼への仕返しに夢中になっていたら、それを見た今の彼氏に見限られるかもしれないわよ？　未練タラ男のことなんか、考えるだけ無駄だし返信不要よ。一番の復讐はあなたが幸せになること。あなたの愛を、今の彼へ全力でそそぎ込みなさい。あなたは、半年前とは違うの。殻を破った蝶なのよ？　って、ちょっと臭かったかしら……ふふ」

マナミ「ママ……」

ママ「いいのよ、お礼なんて。好きで相談に乗ってるだけなんだから」

マナミ「違うんです。未練タラ男だから、チーたらだったんだなって。いま時、親父でも言わないギャグを言う人がいるんだなあって思って」

ママ「あなた、さっきからけっこう言うわね」

マナミ「ごめんなさい（笑）。“私は、殻を破った蝶”……。古臭いけど、けっこう嬉しいかも。あーあ、あんな抜け殻男のこと考えてこの3日間損しちゃった！　ママ、ありがとう。でも、チーたらのチーはかけられなかったね」

ママ「あら、チーは小さいのチーよ。チーママっていうでしょう？あなたの元彼は、器の小さい未練タラ男だからね」

マナミ「なるほど！　やっぱりママも、チーママ時代はいろいろあったんですか？」

ママ「そりゃあね……。ああ、私も飲みたくなっちゃったわ。乾杯しましょ」

――カランカラン。

こうして、今日もダメ男に悩む乙女をまたひとり、恋愛という戦場に送り込んだマリアンヌママ。次のお客さまは、あなたかも!?　スナックマリアンヌでは、迷える乙女の悩みを聞く憩いの場として、いつでもご来店をお待ちしています。

撮影協力：コワーキングスナックCONTENTZ分室
執筆＝マリアンヌ (c)Pouch / 撮影=K.ナガハシ

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