【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは阿部寛主演の時代劇『のみとり侍』です。第1週の興行成績が第3位という良いスタートを切った本作。”江戸時代の『娼年』”という噂もあるので、色っぽいシーンが多そう。阿部寛のセクシーな映画って珍しくて「松坂桃李を超えるのか?」と期待を胸に劇場で見てきました!

【あらすじ】

越後長岡藩のエリート藩士・小林寛之進(阿部寛)は堅物男。彼は失言により藩主を怒らせてしまい、「蚤(のみ)取りでもやればいい!」と左遷されてしまいます。

「なんで俺が猫の蚤取りなんか」と思いつつ「蚤取り」屋で働くことになった寛之進。実は蚤取り業とは表向きの姿。本当の仕事は女性に愛を与える添い寝業だったのでした……。

そんなことも知らなかった寛之進。最初のお客は亡き妻にそっくりのおみね(寺島しのぶ)でしたが、彼女に「ヘタクソ!」と怒られ意気消沈してしまいます。「なんとかせねば」と、寛之進はプレイボーイの清兵衛(豊川悦司)に「女性の悦ばせ方を教えてほしい」と頼み込むのです。

【阿部寛が豊川悦司から愛の手練手管を学ぶ!】

時代劇というと歴史活劇のイメージが強いのですが、本作は江戸時代が舞台のお色気コメディという、あまりお目にかかったことのないジャンル。時代劇で色事といえば、花魁(おいらん)を思い出しますが、本作が描く「蚤取り業」は、女が男にお金を払って寝てもらうという実際にあった稼業だそうで、ビックリです。

というわけで、色っぽいシーンも満載の本作。体を張ってセクシーシーンを披露するのは主演の阿部寛さんと豊川悦司さん。

特に豊川さん演じる清兵衛は、寛之進の「添い寝先生」ですから、大胆濃厚なラブシーンをガンガン展開していきます。寛之進は、それをのぞきながら学ぶのですが、メモでも取りそうな勢いで懸命にのぞきをするという、どこかマヌケな様子がおかしい。彼の生真面目さがこの映画の笑いのキモですね。

【濃厚なラブシーンも明るく楽しく描いて好感度大】

この映画の良さは、男女の情事をあっけらかんと描いていること。けっこうハードなラブシーンも、息を殺して見るということは全然なく、「わ~、大胆~」とか「阿部さん、攻めてる~」とか笑って明るく見られるのがいいです。同じく松坂桃李が主演を勤めた『娼年』は女性から男性を求める秘め事でしたが、本作は全然秘めてないというか、実にオープン! だから楽しめるし、笑えるのです。

【あっちゃんゴメン!妻じゃなくて娘にしか見えない】

ただ気にならない点が全然ないわけではありません。清兵衛を束縛する恐妻を演じる前田敦子嬢。本当に申し訳ないけど、豊川さんの娘にしか見えないのです。だから豊川さんと前田さんの夫婦喧嘩シーンは、本来、大いに笑えるシーンだと思うのですが、なんだか違和感。見た目は父娘なのに、言い合いの内容は下半身ネタなので、なんとなく居心地悪い感じがするのです……残念。

【ローマ人から江戸の藩士まで阿部寛の万能感】

それにしても、『テルマエ・ロマエ』の古代ローマ人から今作の江戸時代の藩士まで、阿部寛さんの濃い顔はもはや万能ですね。どんな役でも来い! みたいな。

そして、豊川さんのコミカルなセクシープレイボーイっぷりもたまりません。いまなら、テレビでNHKの連続ドラマ小説『半分、青い』の秋風羽織先生、映画館で本作のセクシー清兵衛、Wでトヨエツの魅力を堪能できます!

観客の平均年齢は高めでしたが、ご夫婦でいらっしゃる方も多かったです。ビールとポップコーンを召し上がりながら夫婦でセクシー時代劇を見るなんて、なんだかいいな~と思っちゃいました。

『のみとり侍』は歴史が苦手だから時代劇はちょっと……という方でもOK。コメディだし、相関図が必要な難しいことも全然ないので、女子同士でも気楽に楽しめると思いますよ。

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

のみとり侍
(2018年5月18日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:鶴橋康夫
出演:阿部寛、寺島しのぶ、豊川悦司、斎藤工、風間杜夫、大竹しのぶ、前田敦子、松重豊、伊武雅刀、六平直政、三浦貴大、笑福亭鶴光、ジミー大西、オール阪神、飛鳥凛、雛形あきこ、樋井明日香、福本莉子、山村紅葉、桂文枝

(C)2018「のみとり侍」製作委員会