【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

ピックアップするのは、香取慎吾さん、岸井ゆきのさん共演作『犬も食わねどチャーリーは笑う』(2022年9月23日公開)です。香取さんにとって主演映画は、『凪待ち』(2019)以来なので、ファンにとっては待ちに待った映画です。しかも今回はコメディ映画……スクリーンで弾ける香取さんを観られるなんて、幸福の極み! というわけで、試写を観せていただきました。

では物語から行ってみましょう!

【物語】

裕次郎(香取慎吾さん)と日和(岸井ゆきのさん)は、結婚4年目の仲良し夫婦! ……と思っていたのは裕次郎だけでした。

日和は夫・裕次郎に対する不満を溜めており、「旦那デスノート」というSNSに書き込みで日頃のうっぷんを晴らしていたのです。

しかし、ある出来事がきっかけで裕次郎は「旦那デスノート」を発見。ペンネームはふたりが飼っているフクロウの名前 “チャーリー” だし、身の覚えのある書き込みの内容を見て「これって俺のことじゃん!」と。

【ホノボノからいきなり毒気炸裂?】

可愛いラブコメかと思ったら、なかなかブラックなコメディでした!

映画冒頭では、裕次郎と日和の出会いが描かれます。

裕次郎はホームセンターに勤務していて、そこにお客さんとしてやってきたのが日和。ホノボノとした空気に包まれ、恋の予感がヒシヒシ……そして、ふたりはめでたく結婚します。

穏やかな日常、仲のいい夫婦の話から一転、「旦那デスノート」が登場し、日和の不満が雪崩のように押し寄せてきます。

「笑顔と優しい言葉の裏にこんなドス黒い感情が渦巻いていたなんて」と映画を観ているこちらもビックリですよ。

【旦那デスノートに共感しちゃう?】

日和が怒り心頭なのは、「共働きなのに裕次郎が家事を全くやらないこと」なのです。

脱いだ靴下がソファーの隅から出てきたり、妻の職業(テレホンオペレーター)を「誰にでもできる仕事」と無神経な発言をしたり、休日には遅い朝ごはんを食べたばかりなのに「昼はキーマカレーがいい」なんてリクエストしてきたり……。

浮気やDV、モラハラのハードなケースはなく、「早く死んでくれないかな」と言いつつも、本気じゃないのがわかる感じ。

日和が「旦那デスノート」に書き込む不満の数々は、既婚者ほど共感度が高く「うちも〜!」と思うだろう内容です。働きながら主婦をするのは大変なんだから、愚痴くらい書かせてあげてよ! と私は思っちゃいましたね。

【不器用なふたりのぎこちない愛情表現】

夫婦って、言いたいことあっても我慢しちゃうことあるんですよね。なぜなら、喧嘩して家の中がどんよりした空気になるくらいなら……と思ってしまうから。日和もそうだと思います。

でも結局、我慢していたら一生わかり合えないままになってしまうのです。

「旦那デスノート」をきっかけに、裕次郎と日和が自分の本当の気持ちや思いをぶつけ合い、それでも一生夫婦として歩んでいけるかどうかを描くこの映画。

正直、ふたりはめちゃくちゃ不器用で、その思いを伝えるまでかなり遠回りをして、周りの人も巻き込んでしまいます。

でも、不器用同士のぶつかり合いだからこそ、夫婦あるあるの作品になったのかもしれません。

【ブラックコメディとしての切れ味】

ただ、個人的には「ちょっと残念」に思ったところも。

キャストは豪華だし設定も面白いのですが、「旦那デスノート」への書き込みの言葉がストレートすぎて、ただの旦那の悪口になってしまっているような……。

もうちょっとハッとするひねりが欲しかった!

あと裕次郎も、ホームセンターの仕事にやりがいを感じているのはいいのですが、誰彼構わず商品に関するウンチクを語り出すんです。そのウンチクにユーモアがあったら、ウザイけど面白い人物になったのではないかと。

映画の設定やアイデアが面白いからこそ、生意気にも「惜しい!」って思っちゃいました。

でもそんな中、裕次郎の同僚の蓑山さん(余貴美子さん)は最高でした! 彼女のシーンは笑えるし、ジーンとさせてくれるし。私の推し、蓑山さんにも注目して観てください。

執筆:斎藤香 (C)Pouch
Photo:(C)2022“犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

『犬も食わねばチャーリーは笑う』
(2022年9月23日より全国ロードショー)
監督・脚本:市井昌秀
出演:香取慎吾 岸井ゆきの 井之脇 海 中田青渚 小篠恵奈 松岡依都美 田村健太郎 森下能幸 的場浩司 眞島秀和 徳永えり 峯村リエ 菊地亜美 有田あん 瑛蓮 きたろう 浅田美代子 余 貴美子