東日本大震災で就学が困難になってしまった学生の夢を応援する奨学金制度「夢を応援基金」(株式会社ローソン)が、7月1日から31日までの間、応募受付をスタートしました。(奨学金の申し込みについては、ローソンホームページより詳細をご確認ください)
この基金のCMがTV放送されたのは、これまでたったの2回だけ。もう放送予定はないとのことで、いわば幻のCMと話題を呼んでいるほど。
CM「夢みる力」で特に印象深いのは冒頭部分。一見普通の授業風景ですが、震災で学生の「心」「時」が止まっている様子を表現した、静止シーンが続きます。学校の音楽室で録音したというピアノの伴奏が、優しくも、どこか儚げ。
そこに、どこからともなく吹いてきた風に吹かれて机から落ちそうになる1本の鉛筆。何か衝動に突き動かされたように、それまで止まっていた男子学生が鉛筆をキャッチすると、学生たちの心や活動が一気に動き始め、震災で諦めていた夢を実現させるというストーリーです。
このCMを掲載しているローソン公式YouTubeページには、視聴者らから「2回しか流れないなんて、もったいない」「CMなのに感動した」「もっとたくさんの人に見てもらいたい」など、惜しまれる声があがっています。こんなにも人々の心に残るCMを制作したのは、いったいどんな方なのでしょう。
本日は、このCMを企画・監督した、後藤匠平さん(株式会社 葵プロモーション)に直撃取材しました!
実は、まだ20代という若さみなぎる監督、後藤さん。第一印象はとても爽やかな好青年ですが、CMをご覧の通り、かなりの実力派です。実はこのCM、かなり急ピッチで制作しなければならず、本来企画するのに1週間かかるところを、たった1日で仕上げるという偉業を成し遂げたそうです。
いったい、どんな状況で、どんな思いでこの作品を制作したのかを聞いてみました。進学を悩んでいる皆さん、将来監督を志望するみなさん、必見です!
●被災学生への奨学金制度のCM制作の話がきたとき、重荷ではなかったですか?
重荷よりも、とにかく協力したいという気持ちが先行しました。学校は、色々な人の夢がつなげられる場所。自分も専門学校時代の大事な思い出が残っているので、諦めずに進学して欲しいという気持ちが強くあります。
●この作品を企画するにあたり、どのような思いをお持ちでしたか?
震災後、毎日ACのCMが流れて……変な気分でした。頑張れというメッセージはあれど、これで、震災後の日本が元気になるのかなと、違和感だけがあったんです。今回のCMは長期的に奨学金で支援するなど若い人の未来につながるので、ぜひ力になりたいと思いました。
●かなり急ピッチの制作だったそうですが、企画はどのように決定されましたか?
企画30案から10案に絞り込まれ、最終的に自分の作品に決定しました。ローソンに候補作品を提案するときも、この「夢みる力」の説明に力が入っていたようで、満場一致で決定しました。
●制作で大変だったことは?
企画案の作成です。企画発表の前日、本来1週間かかるところを、たったの1日、徹夜で作り上げました。ところが制作した場所は周囲が暗くて手元が良く見えず、手書きの絵コンテを書くのに苦労しました。それに、徹夜といっても時間が過ぎるのはあっという間。CMに起用された音楽「Honey L Days」の『がんばれ』をひたすら聞きながら、どの部分を使用するかを決定しなければならないのですが、曲が一番盛り上がる部分で「時」が動き始めるようにしたかったので、そのふたつのタイミングを合わせるのに何度も試行錯誤しました。
●作品の中の一番のこだわりは?
前半部の止まる(静止している)部分、これを悪い印象ではなく、どうやって良い印象で伝えられるか、そこが重要でした。そのためにも、ムービーではなく、どうしてもグラフィックで表現したかった。止まっているけど、今にも動き出しそうな最高の絵をあげたいと思ったんです。そのために、普段はポスターなどを撮影している腕利きのカメラマンを起用したのですが、それが良かった。彼は撮影中、機転を利かせてくれて、本来シーンには入っていなかった何気ないシーンを37カットほど撮影してくれ、実際に効果的に使うことができました。おかげで透明感がある、リアリティのある作品に仕上がりました。
●制作してみてどうでしたか?
良かったです。若い監督は、本来の持ち味を生かせないことが多々あるのですが、今回は自分がやりたいようにやらせて頂きました。
●将来、監督になることを夢見ている学生たちへ、ひとことお願いします!
「人々を感動させたい」など、揺ぎない目標を持って監督やディレクターになった人でも、社会にもまれるうちに意外と駆け出しの頃の感覚を忘れてしまいます。現実は、監督の理想よりも、CM、つまり商品をみせるのが仕事です。CMは監督のものではなく、お客様のものですから。ところがそのうち、感覚がフワフワしてくる。「何を伝えたいんだっけ?」と。しかし、ここで感覚を忘れなければ、どういうものが人を感動させるのか、その感覚をしっかり持ち続けることができます。監督を目指す皆さんには、この辺を大切にしながら活躍して欲しいです。
日々葛藤の中でお仕事を続ける監督ですが、取材者の前では苦労を微塵も見せない爽やかにハニカム笑顔が印象的でした。後藤監督の今後の作品、気になりますね!
進学することで得る、知識や経験、感動の数々。実は学生の皆さんが感じているよりも、ずっと深い意味があります。震災のために進学を迷っている学生のみなさん、確実に地元を復興させるなら、進学は必ず皆さんの力になってくれるはずです。ローソン奨学金の応募締め切り間近! 夢見る力は、絶対日本の力になる! 多くの被災学生にチャレンジして欲しいものです。
(ライター=池田廉)
参考:ローソン「夢を応援基金」(http://p.tl/K2zE)
チャリティ・プラットフォームHP(http://p.tl/wVSw)
ローソン「夢を応援基金」PV 公式YouTube(http://p.tl/Ksna)
▼CM「夢を応援基金」の貴重な絵コンテも見せて頂きました
▼こちらが幻のCM。終始優しい描写が印象的です
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