「このハゲ!」

前頭部が見事に禿げ上がったこの私に、毎度女性が浴びせる決まり文句。いったい、ハゲが何をしたというのでしょうか。ハゲであることが、いったいなんの罪があるというのでしょうか?

「デブ」と罵られるのは、まだ納得ができる。だって、自分の生活習慣に多少なりとも怠惰な部分がありデブってしまったのだから、少々罵倒されても仕方ないと思えるからです。

もちろん「ブス」と罵られるのも酷い話ですが、顔のブサイクさは心の美しさや物事の考え方で美しくなるものだと思うので、これも私の場合は我慢できます。

ですが、ハゲはそうじゃない。一番人様の目に付くところにあるので隠すこともままなりません。

育毛剤? そんなのですべてが解決したら「ハゲ」なんて悪口は、すでに死語になっていますよ。かといってカツラを付ければ、陰で女子社員たちにコソコソ噂され、社内の人間が一斉に私の頭部に神経を集中させることでしょう。実際に私の目の前で、堂々とぶふふふっと噴出すけしからん人も出没する有さま。え? スキンヘッドにすればカッコ良い? ハゲ全員がスキンヘッドが似合うと思うなよ!!

というわけで本日は、そんな記者の心をさらに憂鬱にさせてしまった悲しいお話を、辛いハゲ事情を知ってもらうべくご紹介します。それは、「ハゲに告白された」という独身女性が2ちゃんねるでお悩み相談をしているのですが……。

この女性は、ハゲ男に告白されたそうで、「マジありえない」とか「私はこんな男(ハゲ)に告白される程の低レベルな女なの?」などと、いったいハゲがアンタに何をしたのかと聞きたくなるくらい、辛らつな言葉を並べているのです。

そして彼女は「おいハゲよ!」と、荒々しく我々ハゲを呼び捨て、「どうして髪も年収も少ない奴と付き合わなければならないのか?」「身の程をわきまえて欲しい!」「ハゲのみすぼらしさは尋常じゃない」などと書き、さらには「臭いハゲ 汚いハゲ」などと、もはやハゲであることとなんの関係もない悪口が飛び出す始末。

ハゲに告白されたことが、よほど、頭にきたのでしょう。……もうそのほかは、私の心が折れるのでここで書くのは控えますが。ハゲに同情の余地あり、でしょ?

さらにコメントには、「ハゲは性欲が強い」「ハゲは絶対にいや」「医者だったけどハゲデブで断った」など、元も子もないような意見の数々。私は、込み上げてくる敗北感で目を涙で滲ませながらも、ぐっと堪え、真実を知ろうと読み続けました。

すると、な、なんと心の美しい女性を発見したのです。「私 ハゲ好きだけどなー デブよりはずっとマシじゃない?」との温かい言葉が。これだけで、私は彼女に恋しそうになりました。どん底まで落ちそうになった孤独な心を、唯一救ってくれた人。

この方は、きっと心の美しさで男性にモテるはず。万が一見た目が良いといえなくとも、彼女のような心のキレイな女性と私は一緒にいたいと思いました。人類が皆、彼女のように心が美しければきっと平和な世の中になるはず。そして私の頭も、いつかは市民権を得られるようにと願わずにいられません。

(文=つるり)