[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今週のピックアップは三谷幸喜監督の新作『ステキな金縛り』。もう監督がプロモーションのための番組ジャック(?)をしているのでご存じの方も多いでしょう。三流弁護士(深津絵里)が、容疑者のアリバイを証明するために、落ち武者の幽霊を連れてきたことから起こる大騒動を描いた法廷ヒューマンコメディです。
さて、三谷映画といえば、オールセットのような独特なビジュアルが特徴だけれど、今回はロケ撮影も積極的に敢行。そしてワンシーンワンカットを封印して、カット割りにこだわりを見せるなど、新しい世界を見せています。
しかし、やはりビジュアルのキモはセットにあり! この映画の法廷セットは、美術界の第一人者・種田陽平が担当。三谷監督のリクエストは「どこかにありそうだけど誰も見たことのない微妙なさじ加減の法廷セットを作ってほしい」だったそうです。
そして出来上がったのが本作の法廷セット。特徴はすり鉢状であることで、傍聴席のいちばん後ろが最も高い位置にあり、競技場のような作り。傍聴席は客席、アリーナはステージという、舞台監督でもある三谷監督に合わせたようなデザインに仕上がりました。これはもう本当に見事な空間です!
ちなみに外観は名古屋市役所。1933年に建設された登録有形文化財でもあるここは、ドラマ「華麗なる一族」映画『SP 革命篇』そして三谷監督が脚本を担当した映画『笑の大学』でもロケ地として使用されている名古屋でも美しい建築物として有名なのです。
スタッフは一流の実力派、加えてキャストもオールスターが結集しました。佐藤浩市は前作『ザ・マジックアワー』で演じた売れない役者の役で、篠原涼子は『THE有頂天ホテル』で演じたコールガール役でそれぞれカメオ出演。大泉洋にいたっては、なんとエンドロール出演という珍しいパターン!
三谷監督の舞台「ベッジ・パートン」に出演した大泉氏と三谷監督が名古屋ロケで偶然再会し、急きょ参加することになったそうです。飛び込み出演のわりには、ちゃんとヒロインにフラれた同僚弁護士・羽柴大輔という名前と衣装が用意されており……。なんとも芸が細かい三谷監督!
キャストもスタッフもすべてが本当に贅沢で遊び心に満ちた映画『ステキな金縛り』。本編も笑いありドキドキ感あり、そして最後にちょっとホロリとさせるしかけあり……と、まさにお楽しみが山盛りになったテーマパークのような映画に仕上がっています。
(映画ライター・斎藤 香)
10月29日公開
監督:三谷幸喜
出演:深津絵里、西田敏行、阿部寛、竹内結子、浅野忠信、草彅剛、中井喜一、市村正親、小日向文世、小林隆、KAN、木下隆行(TKO)山本亘、山本耕史、戸田恵子、浅野和之、生瀬勝久、梶原善、阿南健治、近藤芳正、佐藤浩市、深田恭子、篠原涼子、唐沢寿明
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