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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは映画『ジャッジ 裁かれる判事』(2015年1月17日公開)です。『アイアンマン』のロバート・ダウニー・Jr.が主演する法廷サスペンス……と思いきや、父と息子の濃厚な家族ドラマでもあったのです。男家族の葛藤を垣間見られる内容は、ある意味女子必見。特に父と息子の関係は学ぶことが多いのです。

【物語】

やり手の弁護士ハンク(ロバート・ダウニー・Jr.)は、父親のジョセフ(ロバート・デュバル)とは絶縁状態。加えて妻とも離婚協議中で娘の親権争いの真っ最中です。その彼が実家と自分を繋ぐ唯一の存在であった母が亡くなり、故郷へ帰ります。しかし、彼にとって故郷は居心地が悪く、やっと仕事に戻れると思ったら、父のジョセフが殺人容疑で逮捕されてしまうのです。ジョセフは長年、数々の事件の裁判を担当してきた判事。そんな父の弁護を頼まれたハンクですが……。

【男だけの家族って難しい?】

ハンクの家族は、父、兄、弟の完全な男ファミリー。その中で唯一の癒しが母親でした。それなのに母が亡くなり、男家族は思い切りギクシャク。居心地悪そうな雰囲気で「男だけの家族ってみんなこうなの?」と思ってしまいましたよ。でも映画を見ていくうちに、父とハンクの確執がこの家族の心を堅く閉ざしている事に気づきます。父とハンクはどこか似ている。意地っ張り、頑固、プライドが高い俺様気質。兄と弟が気を使っているようでは、そりゃ家庭内に隙間風が吹きますよ。母親はそんな男ファミリーの中で潤滑油のような働きをしていたのでしょう。だから亡くなったあと、ハンクの実家は寒々しい空気になってしまったのです。

製作&監督のデイビッド・ドブキンは、

「人というのは何歳になっても、育った家に足を踏み入れると、5分もたたないうちに、そこを去った頃の自分に戻ってしまうんだ。育ったときと同じ行動、同じコミュニケーション様式の中に囲まれ、口には出さないわだかまりを抱え、結局生涯、それが自分たちに付きまとうんだ」

と語っています。なんとなくわかる……。様々な経験をして、自立して実家に戻っても「ただいま」と帰った途端にただの子供になってしまう。そんな経験ありますよね。居心地のいい実家で甘えられる子供でいられるならいいけど、ハンクのような家庭だと苦痛かもしれません。

【父親の事件が親子の関係を変化させる】

そんな親子関係をガラリと変えるのが、父ジョセフの殺人容疑です。きっぱり否定する父ですが、年老いた父は記憶があやふやなのです。裁判の弁護をすることになったハンクは、あんなに嫌っていた父を守ろうとするように。判事の父と弁護士の息子は裁判を通して乗り越えるきっかけを得るのです。なんかもう濃密な父と息子の関係は、裁判シーンだけでなく、実家のシーンでも緊張感漂います。また演じるのがロバート・ダウニー・Jr.と名優のロバート・デュバルですからね! 頑固な父と息子のガチなにらみあいは説得力も迫力もあるのです。

そして、ロバート・デュバルはこの映画の熱演で、2014年度アカデミー賞助演男優賞候補に。そうでしょう、そうでしょうと納得!

『ジャッジ 裁かれる判事』は、女性が、父親と息子という男親子の関係性を知るのに勉強になるかもしれません。この映画の親子は極端ですが、でも男同士の親子でこの感じ、けっこうあるあるな気がするんですよね。父は娘には甘いけど、息子には厳しいものですから。
果たしてジョセフはシロかクロか……という法廷サスペンスを楽しみつつ、男家族の生々しい一面を見られる作品とも言えるでしょう。

執筆=斎藤香(c)Pouch
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『ジャッジ 裁かれる判事』
2015年1月17日より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:デイビッド・ドブキン
出演:ロバート・ダウニー・Jr.ロバート・デュバル、ベラ・ファーミガ、ビンセント・ドノフリオほか
(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC