【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは井ノ原快彦と道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)が出演している『461個のおべんとう』(2020年11月6日公開)です。本作は、音楽ユニット「TOKYO No.1 SOUL SET」の渡辺俊美さんのエッセイ本「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」をモチーフにした作品です。

渡辺さんをモデルにしたお父さん役にV6のメンバーとしても活躍する井ノ原快彦さん。息子役は、なにわ男子(関西ジャニーズJr.)の道枝駿佑さん。ジャニーズの先輩後輩で親子を演じるというのも興味深い家族映画です!

【物語】

長年連れ添った妻と離婚することになった鈴木一樹(井ノ原快彦)は、離婚の際、父親である自分を選んでくれた息子の虹輝(道枝駿佑)と二人暮らしをすることに。虹輝は、高校受験に失敗してしまいますが、1年浪人したのち、第一希望の高校に合格!

晴れて高校生になりました。一樹は「お昼ごはんは父さんのお弁当がいい」という虹輝の言葉に奮起! そして二人は「お父さんは3年間、お弁当を作る」「息子は休まず学校へ行く」という男の約束をします。

ところが、念願の高校の入学したものの、虹輝は1つ年下のクラスメイトになじめなかったり、初恋の女の子とうまくいかなかったり、悩み事をかかえてしまうのです。

【父と息子をつないだお弁当】

試写で観させていただきましたが「2020年ほっこりホノボノ映画No.1」ではないかと思いました。

本作は「TOKYO No.1 SOUL SET」の渡辺俊美さんの原作本をベースに、『キセキ-あの日のソビト-』の兼重淳監督が演出と脚本(清水匡さんと共同脚本)を手掛けています。きっと渡辺さんと息子さんの間も、一樹と虹輝みたいに、お弁当でつながったり、お弁当で喧嘩したりしていたんだろうなと。この映画の中で、お弁当は家族の一員みたいです。

一樹は「わりと凝り性なお父さん」というのがお弁当作りによく表れていておもしろいです。まず各種お弁当アイテムなど道具から入るところとか、色どりを重要視し、メニューに凝るところ。特に卵焼き愛はハンパないですね!

まあ、ときには独特な臭いを発生する食材を夏のお弁当に入れてしまい、虹輝から猛抗議されるなど失敗もありますが、お父さんと息子のお弁当を介した愛情のキャッチボールは楽しいです。

【本作は息子の成長物語】

映画を観て「おや?」と思ったのは、意外と虹輝のエピソードがこの映画にとって重要なポイントとなっていることです。一樹と虹輝の親子エピソードや一樹自身の新たな恋愛と同じくらいかそれ以上に、虹輝の高校生活がけっこうクローズアップされていると感じました。

クラスメイトとうまくいかずに悩んだり、片思いの女子に気持ちを伝えられなかったり、また別れた母親ともたびたび会っているのでうまくいっていると思ったら……。彼が母ではなくお父さんを選んだ理由がちょっと切ないんですよ~。

高校生活で何度か壁にぶつかりながらも、虹輝が成長していく姿もしっかり描かれています。はい、道枝くんのファンは必見ですよ!

【キャスティングがばっちり決まった!】

主演の井ノ原快彦さんはハマリ役でしたね。

一樹は自由人で、自分の気持ちに正直なのですが、別れた妻、息子などに対して、その時の自分の気持ちを優先させすぎてしまい、結果傷つけてしまうこともあるんです。

そんな短所がありながらも、何事にも全力でぶつかる情熱や愛嬌たっぷりなところは、井ノ原さんのキャラクターに助けられているなあと思いました。

道枝駿佑くんは現役高校生なので、まさに等身大。虹輝の成長をしっかり演じきりました。その友達役をいま注目の女優・森七菜さん&さまざまな映画に出演している若手の名バイプレイヤー若林時英さんが演じています。

もうひとつ大注目なのが、一樹が所属するバンド「Ten 4 The Suns」のメンバー。HIP HOPアーティストのKREVAさんとミュージシャン&俳優のやついいちろうさんが演じており、ライブシーンがめちゃくちゃかっこいいです!

ちなみにお弁当監修は、フードスタイリストの飯島奈美さんと岡本柚紀さんのコンビ。すごく美味しそうなお弁当が次々登場するので、空腹で観ると危険。お腹がグーと鳴るかもしれませんよ!

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

461個のおべんとう
(2020年11月6日(金)より、丸の内TOEIほか、全国ロードショー)
監督:兼重 淳(『キセキ -あの日のソビト-』)
出演:井ノ原快彦、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、森 七菜、若林時英、工藤遥、阿部純子、野間口徹 映美くらら、KREVA、やついいちろう、坂井真紀、倍賞千恵子
脚本:清水 匡 兼重 淳
原作: 渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」(マガジンハウス刊)
配給:東映
(C) 2020「461個のおべんとう」製作委員会