[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が、皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは明日10日公開の映画、生田斗真主演作『源氏物語 千年の謎』です。数えきれないほど映画化されてきた日本人が愛してやまない古典。この映画は紫式部が藤原道長の命を受けて「源氏物語」を執筆し、式部の綴る物語が劇中劇として登場するという、二重構造になっています。

意外にも「国語は大の苦手」という鶴橋監督。「溺れないために泳げ」「稲妻のような恋をしろ」と念じて、自身を奮い立たせ本作に取り組んだそう。二重構造にしたのも、自分らしく演出するためのアイデアだったのでしょう。そもそも諸説あるミステリアスな古典ゆえ、逆にアレンジもしやすく、クリエイターにとっては創作欲が沸く物語。源氏の物語を劇中劇にしたことで、ロマンチックかつファンタジー色が濃い21世紀の「源氏物語」になったのです。

義理の母・藤壺への思いを胸に秘めつつ、次々と女性たちと関係を結んでいく平安時代のプレイボーイである光源氏を演じたのは生田斗真。ジャニーズ事務所でもグループを組まず、歌手デビューもせずに、単独活動が認められてジャニーズJr.を卒業した異色の存在の生田ですが、その異色の存在感がミステリアスな源氏役で大いに活かされました。

監督は「彼以外に考えられない。目が美しく高貴な顔立ちで、僕でさえ彼になら騙されてもいいと思った(笑)」とメロメロ(!!)。女優陣とのからみでも、美しいけれど嫌らしく見えないのは、彼の清潔感あるルックスのおかげかも。

もともと女性のための時代劇の色合いが濃い「源氏物語」。本作も女性好みのアイテム満載! 生田の演じる源氏のキャラは王子様で萌え要素満載だし、衣装はキャラクターに合わせた色調でデザインされ美しい。また雅楽の舞「青海波」を舞うシーンでは日本に数着しかない衣装を天理大学の雅楽部から借用したり、総工費2億円の寝殿造りのセットなどキラキラ輝くビジュアルはしっかり酔わせてくれる豪華さで、手ぬかりなく夢の世界を構築しています。

何より、女性たちひとりひとりを真剣に愛し、でも満たされず、次々に愛を求めていく源氏の色恋は、まさにザ・レディースコミックの世界。愛して愛しても悲しいという光源氏の寂しそうな姿は母性本能をくすぐり「次はワタクシが!」「なぐさめてさしあげたい」と全国の女子の心を萌えさせるでしょう。乙女、熟女、嫉妬の塊……と、いろんなタイプの女性が出てくるので、自分を重ねやすいのも特徴。そういえば「源氏物語」は何度か少女漫画化もされていますね、納得!

この映画は「なぜ、女子は光源氏が好きなのか」という千年の謎(!?)の答えを出してくれるような気がします。源氏マニアは是非! 絢爛豪華に彩られた愛の世界にハマってくださいませ。

(映画ライター・斎藤香)


12月10日より公開
監督:鶴橋康夫
出演:生田斗真、中谷美紀、窪塚洋介、東山紀之、真木よう子、多部未華子、芦名星、連佛美沙子、室井滋、田中麗奈ほか
(C)2011 「源氏物語 千年の謎」製作委員会