無類の「酒と食好き」ライターが集う「女子のんべえ部」がお届けする最高ウマいおつまみの作り方、第2回目の今回は南フランスの郷土料理・ラタトゥイユ。できたてアツアツでよし、ひと晩冷やしてよし、しかもワインは赤白どっちもパーフェクトマッチなのだ!

これからおいしくなる夏野菜を使って作るから美味しくてカロリーひかえめ&ビタミンいっぱい……つまりちょっとくらい食べすぎても大丈夫、むしろ健康にいいかも? 酒飲み女子には夢みたいな一品、ぜひぜひお試しあれ。

今回は、フランス南部・プロヴァンス地方の郷土料理「ラタトゥイユ」をご紹介します。簡単に言うと野菜のトマト煮込みで、どちらかというと家庭料理。お庭に生えているハーブを適当に入れて仕上げる、なんてことも多いようです。

お届けするレシピは、わたくし鷹泊がフランス人おじいちゃんから教えてもらったもの。その極意、「あせらずじっくり」です。

南フランスのエクス・アン・プロヴァンスという街をのんびり歩いていると、公園でピクニック中のシルバーご一行を発見。さすがフランス人、おいしそうなモノそろえてるなあ、って見ていたら、「あんたも飲んでいかんか」と。わたしもちゃっかり仲間に入れてもらっちゃいました。

キッシュにイワシの酢漬けにニース風サラダと、いろいろ美味しいものがそろっていましたが、中でも驚いたのが……ラタトゥイユの美味しいこと! 甘みとうまみがぎゅぎゅっと詰まった野菜が口のなかで次々とゆるやかにほどけていく!

あまりに感動しすぎたので、作ったおじいちゃん、ムッシュ・ゴンゼに頼みこんでレシピを教えてもらったのでした。もっとも、彼は「こんなもんにレシピなんぞないが……」って言ってましたが。

それでは、ゴンゼおじいちゃん直伝の絶品プロヴァンス風ラタトゥイユ、作っていきましょう。ゆっくりじっくり解説していきますのでぜひ、真似してみてください!

【材料】

・なす……2~3本
・ズッキーニ……1本
・パプリカ(赤または黄)……1個
・たまねぎ……1/2~1個
・ニンニク……1~2カケ
・カットトマト缶詰……1缶
・白ワイン……1カップ(200cc)程度
・ローリエ……1枚
・ローズマリー、タイム……あればそれぞれ1本
・塩……小さじ半分~1杯程度
・黒こしょう……適量
・パセリ……お好みで少々

「ふたのできる底の広い鍋」を使います。ふたができるのであればフライパンでも大丈夫。

1) 材料の色とりどりの野菜たち

今回使う野菜たちです。パプリカは赤ではなく黄色を使っても色彩豊かな仕上がりになります。

缶詰のトマトは、カットされているものが便利。ホールトマトでもいいけれど、その場合は手でつぶしておきましょう。ちなみに生よりも缶詰のほうがよい仕上がりになります(日本のトマトは品種が違うので)。

白ワインは、できれば1000円前後のフランス産のもの(南フランスだとベスト)、そうでなければイタリアかスペインのものを。安すぎるもの・国産のものは避けたほうがよいです。1カップ使った残りは冷やしておき、あとで完成したラタトゥイユとあわせて飲みましょう!

2) まずは下ごしらえ、といっても切るだけ

にんにくはみじん切り、それ以外の野菜は2~3センチくらいの大きさに、ちょっと雑な感じで乱切りにします。ちなみに、ゴンゼおじいちゃんと一緒に作った時、ていねいにきっちり四角く切ったら怒られました。「日本人はとてもすぐれた人々だが、ひとつだけ悪い点がある。それは“てきとう”ができないことだよ」

3) ニンニクをいためます

オリーブオイルを鍋に入れて弱火で熱し、ニンニクを入れて軽く色づくまで炒めます。

これくらい、表面が少しかりっとする感じになったらOK。

4) たまねぎを10分いためます

たまねぎを投入、弱中火にして10分くらい炒めます。ゴンゼおじいちゃんが言うには「甘くていいにおいがするまで」。

5) なすを10分炒めます

なすを投入。油をほとんど吸ってしまうので一瞬あせりますが、炒めていくにつれてまた油が外に出てくるので大丈夫。それがだいたい10分くらいです。

6) ズッキーニ5分、パプリカ5分


ズッキーニを入れて5分、続けてパプリカを入れて5分炒めます。

7) トマトとハーブ、塩こしょうを入れます

トマト缶をあけて、野菜の上に投入。全体をよく混ぜながら、1~2分そのまま加熱します。

ローリエ、ローズマリーなどを加え、少し混ぜておきます。ここで塩こしょうをしますが、味をみながら少し控えめに(塩は小さじ半分程度でOK)。できあがりのときに調整するつもりでよいでしょう。

8) 煮込みパート1・ふたをして30分煮込みます

白ワインを1カップ分注ぎ、混ぜます。

ふたをして弱火にし、30分じっくり煮込みます。たまにかきまぜましょう。ゴンゼおじいちゃんいわく「ワインとゆっくりの時間が、野菜をやわらかくしてくれる。人間の心だってそうだろう?」

9) 煮込みパート2・ふたを外して30分煮込みます

ふたをとり、水分を蒸発させながら30分煮込んでいきます。汁気が減るにしたがって野菜が鍋底にくっつきやすくなるので、適宜かきまぜましょう。

これぐらいになったら完成です! 味をみて、足りないようなら塩をプラスしましょう。

10) できあがり!

パセリを散らしたら完成! ワインと合わせて、さあいただきましょう!

なすもズッキーニもパプリカもこんなに美味しいものだったのか! と思うくらい、風味と甘みとうまみが凝縮された仕上がり。野菜由来の原料しか使わないのに、食べごたえのある濃厚な味わいになるのもまたびっくりです。冷やしてひと晩寝かせると、これまた美味しいですよ。使ったワインと相性がいいのはもちろん、赤ワインともばっちり合います。ビールもなかなか。

最後に、ゴンゼおじいちゃんが何度も言っていた、この料理のポイント。

「この料理にはコツなんて何もないが、時間をしっかりかけることがうまさの秘密だよ。1時間はきちんと煮込むこと。あせってしまっては、料理も気分もだめになる」

「プロヴァンスという土地は豊かではないけれど、みんなのんびりすごしている。あまり高くない材料をじっくり時間をかけておいしくする、っていうのがプロヴァンス流なのだよ」

そんなわけで、ちょっと時間に余裕があるとき、のんびり作ってみてくださいね。

(写真、文=女子のんべえ部・鷹泊千里)

鷹泊千里:フランス・パリのビストロでのバイトを皮切りに、日本各地の居酒屋で軒並みバイト。いろいろな料理人を横目で見てきた経験を活かしてうまいつまみを作る。