2013年1月にゴールデングローブ賞の授賞式でジョディ・フォスターが同性愛者だと公言をしたことを受けて、先日「同性愛について理解を深める3つのこと」という記事を書きました。今日はその後編。今まで同性愛は自分とは無縁だと思っていた人向けの記事です。

前回の記事では、同性愛を始めとするセクシャルマイノリティの生活感覚と存在を社会的に可視化していく活動を行っているRainbowACTION(以降レインボー・アクション)代表で、映像作家の島田暁さんにお話を聞き、

• 同性愛というものが決して自然に反するものではないこと
• 「典型的な性のイメージ」がもたらす問題
• 体の作りによる性別と、自己認識の性別(自分が男だと思うか、女だと思うか)、恋愛対象は、それぞれ別の次元のことであり、性別は男女をはっきり分けるのではなくグラデーションになっていると考える

ということを説明しました。

■同性愛者だと告白されたらどうしたらいいか
では、友人から「実は同性愛者なんだ」とカミングアウトされたら、どういう反応をするのが望ましいものなのでしょうか。また同性愛者は、どういった相手に、どんな気持ちでカミングアウトをするものなのでしょうか。島田さんに聞いてみました。

○カミングアウトする相手を慎重に選んでいる
島田さんは、多くの同性愛者が、カミングアウトをする相手を慎重に選んでいるのではないかと言います。同性愛者への偏見、いじめなどの経験から「もっと仲良くなりたい」「伝えても大丈夫だ」と思える人ではないとカミングアウトはしないのだそうです。

その判断基準は、例えばテレビを話題に話す際にマツコ・デラックスさんやミッツ・マングローブさんなどのことをどう言っているかだったり、「男らしさ」や「女らしさ」について、どういった考え方を持っているかだったり、その他のマイノリティについてどういった反応をするかだったり、単純に話が合うかだったり。さまざまな要素から総合的に判断しているそうです。

クラスに1人いてもおかしくないくらいの割合で同性愛者はいるのだから、もし周りに1人もいないとしたら、それは、あなたにカミングアウトできていないだけかもしれません。

○相手を慎重に選んでカミングアウトするのだって、不安でいっぱい
慎重に相手を選んでもなお、カミングアウトする時は不安であるとも島田さんは教えてくれました。カミングアウトをしたことによって相手がよそよそしくなったり、予想しなかったような拒絶反応をされたりしたらと思うと、不安になるそうです。

でも、前編で紹介した通り、同性愛者は異性愛者に比べて割合が小さいだけで、特に不自然なことではありません。記者はこの話を聞いて、同性愛者が自分の性的指向を、不安を抱え相手を選びながらわざわざ「カミングアウト」しなくちゃいけないなんて、なんか理不尽だなあと感じました。

○カミングアウトしたときに返されてうれしかった言葉
島田さんにとって今までで一番うれしかった返事は「なんとなくそうかなって思ってた」という言葉だそう。そう言われて肩の力が抜けたそうです。

また、別の同性愛者の人は「教えてくれてありがとう。同性愛のことはよくわからないから、変なことを言っちゃったらちゃんと教えて」と言われた時が一番うれしかったそう。

相手にとっては同性愛が自然で、性というものは「体」「自己意識」「性的指向」が男女のグラデーションになっているということを考えれば、相手との関係から自然に「何て言ったら良いか」は導きだせるはず。

○カミングアウトをしてもらったら、勝手にアウティングしない
アウティングとは、カミングアウトをした人の承諾を得ずに、聞いたことを他の人に曝露してしまうこと。カミングアウトをする相手を慎重に選び、勇気を出して伝えたのに、その人が勝手に他の人に伝えてしまったら、元も子もありません。

残念ながら、まだまだ同性愛についての知識・理解は社会に徹底していないのが現状。アウティングした結果がどのような事態を引き起こすかを予想もできないのに、勝手に曝露してしまうのは絶対に避けたいものです。

○同性愛者をからかったり、バカにするような話が出た時に、本意でないなら安易に同調しない
同性愛の話題が出た時に、極端にバカにするような反応が起こることがあります。そういった反応は、その人が本当に同性愛を嫌悪しているから起こる場合ももちろんあります。でも、カミングアウトをしていない同性愛者自身が、こういった反応を見せていることもあるのだと島田さんは指摘します。同性愛者は、自分が同性愛だということを隠したいあまりに、過剰に自分を異性愛者であると見せようとして、こういった反応を見せることもあるそうなのです。

そうしながらも、同性愛者は周りの反応を確認しているもの。同性愛者である自分が、同性愛者を悪く言っていることにだって傷ついているのに、周りが空気を読んで流れで同性愛を悪く言うと、さらに傷ついてしまうのです。

○ホモ、レズという言葉を使わない
ホモ、レズという言葉は、多くの同性愛当事者にとって蔑称として認識されるようになっています。この記事を読んでくださった方は、ぜひ男性同性愛者に関してはホモではなくゲイを、女子同性愛者に関してはレズではなくレズビアンまたはビアンという言葉を使ってください。

特にレズビアンに関しては、男性用アダルトビデオに「レズもの」と呼ばれる男性の目を意識した作りの女性同士の絡みを取り上げたジャンルがあるため、レズという言葉は当事者にとっては非常に不快な言葉として感じられる可能性が高いのだそうです。

■典型的な性イメージじゃない世界を予想しながら生きる
島田さんとお話しするうちに記者が思ったのは、「自分にとっての『当たり前』が他の人にとっての『当たり前』とは違うかも、と常に考えないと人を傷つけるな」ということ。

例えば女性は20代後半をすぎると、周りから「結婚しないの?」と聞かれて、それが苦痛だったりします。結婚すれば、周りから「子どもはできないの?」と聞かれ、それが嫌だったりします。でも、たぶん聞いている方は、20代後半になったら結婚するのが当たり前、結婚したら子どもができるのが当たり前だと思っているから、何気なく聞いてしまうのではないでしょうか。

同じことが「彼氏いるの?」「彼女いるの?」という質問にも言えます。異性愛が当たり前だと思っているから悪気なく聞いてしまうのですが、それによって傷つく人がいるかもしれません。もし聞きたいのであれば「付き合っている人はいるの?」などと聞く方がいいのかも。

自分と違う「当たり前」観を持っている人を排除する必要はないはずだし、自分の「当たり前」を押し付けるのも違うはず。少しアンテナを高くもって生きていくと、いろんな人にとって生きやすい世の中になるかもしれませんね。

(文、取材=FelixSayaka
取材協力:RainbowACTION 島田暁