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2011年に起きた福島原発事故から、早2年半。テレビやインターネット、週刊誌など多くのメディアが伝える原発事故の様相はそれはそれは様々で、一体なにが真実なのか測りかねる、という方も多いのではないでしょうか。

真実というものは、自分の目で見て触れることでしか掴むことはできません。本日ご紹介するのは、それを実際にやってのけてしまった方による渾身のルポ漫画、いちえふ 福島第一原子力発電所案内記です。

週刊『モーニング』の新人賞『第34回MANGA OPEN』大賞に選ばれた同作品が掲載されているのは、去る11月3日に発売された44号。そこにあったのは、事故後自ら志願して福島第一原発の作業員となった同漫画の作者、竜田一人さんの目を通して描かれた、リアルな「いちえふ(福島第一原発、通称1Fを指す言葉)」の姿でした。

早朝の集合風景から、防護服の詳細やそれらを身につける手順、福島第一原発周辺の現在の状況など、のっけから読者を強烈に惹きつける同作。しかしそこには決して、メディアで報じられるような仰々しさはありません。

作業員である竜田さんそして同僚たちは、ただ淡々と日々の業務をこなし、お弁当を食べ昼寝をし、再び我が家へと帰っていきます。

もちろん、年間20ミリシーベルトという被ばく線量を常に気にしなければいけない点など、普通の仕事現場とは全く異なる状況であることに変わりはありません。けれど、それでも彼らは、一部メディアが報じるような、いわゆる「地獄」にいるわけではないのだ。そのことを『いちえふ』は教えてくれたような気がします。

「センセーショナルにとらえられがちなあの場所ですが、実際の現場の空気感みたいなものを伝えられればと、こんな作品を描きました(原文ママ)」と、竜田さん。

たしかに記者個人が作品を読んで抱いた感想も、まったくこの言葉どおり。嘘も誇大表現もない、現場で起こっているすべて、それが『いちえふ』なのだろう。自然とそう、感じられました。

福島原発事故と改めて向きあうきっかけにもなりそうな、同漫画。老若男女問わず、ぜひ手にとって読んでほしい、注目の1作です。

参考:モーニング
(文=田端あんじ)

▼そして今日も粛々と、終わりの見えない戦いへと向かう

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