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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ご紹介するのは本日13日公開の映画サンドラ・ブロック主演作『ゼロ・グラビティ』。宇宙空間を圧倒的な映像で描き、美しくも恐ろしい世界を構築したSF映画です。

メインキャストは宇宙飛行士役のサンドラとジョージ・クルーニーで、エド・ハリスは声の出演のみ。しかし、ジョージの出演シーンはわずかで、ほぼサンドラのひとり芝居です。共演は宇宙って感じ。誰も知らない世界、宇宙空間に放り出された時、人はどうするのか……。究極の孤独と恐怖、そして勇気を描いた作品です。

宇宙空間に浮かぶスペースシャトルで、宇宙飛行士マット(ジョージ・クルーニー)とエンジニアのライアン(サンドラ・ブロック)は任務を遂行中。ライアンはマットのサポートを受けながら作業をしていたけれど、破壊された人口衛星の大量の破片がスペースシャトルの軌道に散乱。猛スピードで破片がスペースシャトルの方へと飛んできます。トラブル発生! マットとライアンはスペースシャトルに戻ろうとしますが、破片に邪魔をされて離れてしまい、ライアンの体をシャトルとつないでいたアームも切り離され、彼女は一瞬にして宇宙空間に放り出されてしまうのです……。

すでに全米では大ヒットをしており、今年のアカデミー賞候補確実と言われる『ゼロ・グラビティ』。とにかくあの浮遊感は凄いです。サンドラとともにこっちもフワフワ浮いているような感覚があり、この映画が体感映画と言われるのも納得です。

物語はシンプル。宇宙でのミッション中に起こった事故により、宇宙へ放り出された宇宙飛行士が必死に地球に戻る道を探るというものです。見知らぬ道で迷っても、地上にいる限り、人は何かしら助かる方法を探すことができるけれど、宇宙で迷子になったら、どうしたらいいのか見当もつきません。どれくらい暗いのか、息はどれくらい持つのか、宇宙を漂うってどんなこと? と、何も想像できない世界ですから、そこには見えない恐怖が横たわっているわけで……。

彼女は焦り、とまどい、慌てます。ベテラン宇宙飛行士の助言だけが頼り。そして「何が何でも生きて地球に戻る」という強い気持ちで、小さな可能性から生を手繰り寄せるのです。

宇宙空間を演出する撮影はかなり過酷だったようです。見る人に宇宙体験させる映像を撮影するため、監督とスタッフが作りだしたのは高さ6m、幅3mのLEDのライトボックス。サンドラは、このボックスの中、たったひとりで撮影に臨んだそうです。そのときの孤独感が映画には大いに活かされているとサンドラは語ります。

「イライラしたり、寂しくなったりしたとき、必ず思ったわ。この気持ちを演技に活かすのよってね」
また彼女は宇宙服のことを「着心地は悪かったわね」と。

「とても精巧にできている芸術品のような宇宙服なんだけど、中で体を一切動かすことができないのよ。体に頼らず目だけで演技するために、全神経を集中して自分の周囲のすべてを感じていないといけなかったの。フラストレーションはたまりましたね」

確かに宇宙服は服というより、ずっと狭い箱の中に閉じ込められているような状態に見えました。閉所恐怖症の人は、この映画を見るときは要注意。苦しくなるかもしれません!

またロボット工学を撮影に取り込んだり、無重力を映し出すためのワイヤー遊泳を行ったり、キュアロン監督はあらゆる手段で宇宙でさまよう人間の姿を撮影しています。背景などCGも大活躍していますが「CGで何でもできちゃうんだな」と思ってはいけません。映画の核は宇宙空間での人間の姿ですから、宇宙に取り残された恐怖、絶望、そして一縷の望み、すべてキュアロン監督の演出とサンドラの芝居あっての宇宙なのです。

3D映画はいまや珍しくありませんが、この宇宙体験はぜひ3Dで。ちょっと酔うかもしれないけど、見たこともない映画体験ができますよ。
(映画ライター= 斎藤 香)

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『ゼロ・グラビティ』
2013年12月13日公開
監督: アルフォンソ・キュアロン
出演: サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー、エド・ハリス(声の出演)
(C)2013 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.