[公開直前☆最新シネマ批評・インタビュー編]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品の主演俳優を直撃インタビューします。
今回直撃インタビューしたのは、ハリウッドの超大物トム・ハンクスとアーロン・エッカートです。
2009年のアメリカ・ニューヨークで起きた航空機事故の機長が書いた手記「機長、究極の決断 『ハドソン川』の奇跡」をもとにした、全米ナンバーワンヒットばく進中の映画『ハドソン川の奇跡』(2016年9月24日公開)。
そのプロモーションで来日した二人。トムが神田まつや(蕎麦屋)でサラリーマンのお客さんと撮影した写真をツイッターにアップし、話題を振りまきましたが、生でお会いしたトムは、あの写真のまんま。本当に気さくで常にハッピーな名優です。
トムは『キャプテン・フィリップス』以来3年ぶり、アーロンはトゥーフェイスを熱演した『ダークナイト』以来で8年ぶりの来日です! まずは映画『ハドソン川の奇跡』のご紹介から。
【物語】
2009年1月15日、N.Yのラガーディア空港を飛び立った飛行機。機長はチェスリー・サレンバーガー(通称:サリー/トム・ハンクス)、副操縦士のジェフ・スカイルズ(アーロン・エッカート)。
しかし、飛び立った飛行機に鳥が激突し、エンジンが停止してしまいます。ラガーディア空港に戻るか、別な空港に不時着するかの選択を迫られるサリー機長は、管制塔へ「ハドソン川に着水する」と連絡。それは事故発生から208秒のことでした。
【まわりをハッピーにする賢く明るい名優にカンゲキ!】
クリント・イーストウッド監督の新作『ハドソン川の奇跡』に出演したトム・ハンクス&アーロン・エッカート。ハリウッドの演技派二人を緊張MAXで待っていたら、トムが「Nice to see you」とマイカップを手にして登場。
席に着くなり、記者のボールペンを手にしてフムフムと言いながら眺め「フォロワーいっぱいいる?」と聞いてきたりして、トムさん、おもしろすぎます。アーロンはトムより落ち着いていたけど終始笑顔。「Hello」と入って来て、席について、さあ、始めようという感じ。よかった、二人ともいい人そうです。
――映画『ハドソン川の奇跡』、とても素晴らしかったです! サリー機長とジェフ副操縦士が、見事な判断と技術で全員生還させたのに、正しい判断か否かと問題になることに驚きましたが、逆に真の英雄をこの映画で見た気がしました。そして何よりサリーとジェフのコンビネーションが抜群でした。あの信頼関係を表現するためにしたことを教えてください。
トム「何もしませんでした、自然にできたんですよ。実はサリーとジェフはあの仕事が初めてで、事故の3日前に会ったばかりなんです。そして僕とアーロンも初共演。でも我々はプロだから、特別なことはせずに、サリーとジェフとしてコミュニケーションが取れましたね」
アーロン「サリーとジェフはコックピットの中で、それぞれ自分のやるべき仕事を当たり前のようにしていたんです。そんな二人を演じることを何かに例えるとデュオ。彼らはデュオとしてダンスをしていたんですよ。お互いに信頼しながらね」
――お二人は、あのハドソン川に不時着して155名の命が助かったという事故のことを、当時どういう形で知りましたか?
アーロン「事故を知ったとき、もしかしたらテロじゃないかと思いました。飛行機が降りてきて、マンハッタンを低空飛行しているんですよ。もしも東京でそういう景色を見たら、どう思います? 恐ろしいでしょう。でも飛行機が着水して、人々が救助されているのを見たとき、これは攻撃されたのではないということがわかりました。素晴らしい英雄のニュースだったんですよ! だからみんな共感し、感動したのでしょう」
トム「僕もテレビで見たときは、何かよくないことが起こったのか! と思いました。でも、大勢が救助されている映像を見て、これはいいニュースだと言うことに気付きましたね」
【ふたりが語る奇跡の裏側にある驚愕の真実】
――この映画では、大勢の命を救ったサリーとジェフが公聴会で「なぜ着水したのか」「近くの空港に不時着しなかったのか」と問題になりますが、それを知ったとき、どう思いましたか?
トム「僕もアーロンもあの公聴会の詳細は知らなかった。まさか18ケ月も調査されていたとは。アメリカでは、あのような事故の後は必ず安全委員会があらゆることを細かく調査し、なぜ起こったのか検証するのは当然なのです。ただ、二人は自分たちがどんな運命をたどるかわからないまま、安全委員会のインタビューを受け続けなければならない。もしもサリーの判断が間違いだと決定したら、彼らはその後、仕事、年金、パイロットとしての評価、すべて失うことになる。人生を変えてしまう重大なことですから、それは辛い日々だったと思います」
アーロン「二人とも体重も減って、不眠症になり、最悪の決断が下されたら……と悲観したようです。エンジンが両方とも動かなくなったときどうしたらいいかなんて、パイロットのガイドブックにも書いていないことですよ。それでも、飛行機が急降下し、胸の鼓動が激しくなる中で、瞬時に判断しなくてはいけない。実は事故のとき、ジェフはあのエアバス320という旅客機のトレーニングを終えたばかりで初めて操縦したのです。それなのにあのトラブルに遭遇して、頭は真っ白だったと思いますよ。なぜなら離陸を担当したのは彼ですから、何か間違ったのだろうかと、凄い葛藤があったでしょう。でもだからこそ、役者としてはジェフを演じたいと強く思ったのです」
トム「僕は、役作りのため、サリーにじっくり話を聞く機会を得たのですが “なぜエアバス320の離陸をジェフに任せたのか” と聞いたんですよ。そしたら “彼が離陸を経験しないとエアバスの免許が認められないから” と言っていました。それは機長として正しい判断だと納得しましたね」
【演技派二人から熱いメッセージ】
――この映画は、二人のパイロットがプロとしての仕事を全うしたことを描いていると思います。お二人のプロとしての哲学があったら教えてください。
トム「自分のベストをつくすことですね。あと実在の人を演じるときは、僕は徹底的に調べ上げます。なぜなら真実に近づくことが大事だからです。今回もサリーには、脚本に書かれていないことも全て教えてほしいとお願いしました。起こった出来事にかかわった人が、そのときどうしていたのか、それを忠実に演じるのが私の哲学であり、演じる者の責任ですね」
アーロン「できる技術を実現すること。私は主役でも小さな役でも、みなさんに見てもらえるに値する、価値に見合う演技をすることを心がけています。若い人には、その日にやるべきことをしっかりやりなさいと伝えたいですね」
トム「この映画を見れば感じると思うけど、旅客機のスタッフ、乗客、救助の人々、すべての人が信頼し合い、やるべきことをやっていた。だから助かったんですよ。全員がヒーローなのです。この世界は恐れや怒りや信じられないことがあるけど、正しいことを信じてください。みんなで力を合わせれば良いことができる!というわけで、みなさん私に投票してね(笑)」
トムは陽気で楽しい反面、映画の話になると超マジメ! そのマジメさでひとつの役に真摯に取り組んでいるからこそ、人々を感動させられるのですね。そしてアーロンは、実に具体的にジェフがたどった運命を語ってくれました。
全米を揺るがせたこの飛行機事故を、時間軸を上手に使いながら描き、最後にジワっと感動させるイーストウッドの技ありの演出も見事な映画『ハドソン川の奇跡』。トムとアーロンの熱演、必見ですよ。
トム・ハンクス、アーロン・エッカート特写・取材・文=斎藤 香(c)Pouch
『ハドソン川の奇跡』
(2016年9月24日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー)
監督:クリント・イーストウッド
出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー、アンナ・ガン、オータム・リーサーほか
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▼ジャパンプレミアには市川海老蔵さんが登場しました。
▼記者会見の様子
▼事故にあった飛行機に乗っていた日本人2名も登場。乗客はスタッフの指示に従い、パニックもなかったのだそう。
▼映画「ハドソン川の奇跡」予告編も合わせてどうぞ
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